2018 Fiscal Year Research-status Report
The role for integrin in electric axon guidance
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18K06857
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山下 勝幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20183121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電場 / カルシウム / インテグリン / 軸索ガイダンス / 網膜 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
軸索の伸長方向を決定する因子は誘引タンパクの濃度勾配と考えられてきた。しかし、発生過程で最初に分化したニューロンの軸索を誘導する分子メカニズムは不明であり、本研究は神経回路形成におけるこの根源的な課題に挑戦する。研究代表者は発生初期の網膜内に正の直流電位が存在し、その振幅は網膜周辺部で大きく、視神経の出口となる腹側部ではゼロであり、神経節細胞の軸索伸長方向と一致する細胞外電位勾配が形成されることを発見した (Yamashita, 2013)。この直流電位の起源は上皮型Na+チャネルであり、これを阻害すると電位勾配が消失し、軸索走行がランダムになることを明らかにした (Yamashita, 2013:2016)。これらから、細胞外電位勾配が軸索伸長のガイダンスキューであるという着想を得た。そこで定電場培養系を開発し、設定した電場の方向に網膜神経節細胞の軸索が伸長することを報告した (Yamashita, 2015)。さらに、この定電場培養系を用いて電気的軸索誘導にインテグリン受容体が関与する証拠を得た。本研究は、電場によるインテグリン受容体の活性制御機構と細胞骨格形成機序の解明を目的とし、新規な軸索ガイダンスメカニズムを提起する。平成30年度では、上記の定電場培養系を用いて軸索伸長を定量化することに成功した。軸索伸長の足場となる細胞外基質を含むゲルに抗インテグリン抗体(TASC, W1B10)を添加すると、電場による軸索誘導が抗体の濃度に依存して促進されること、及び、Mn2+の存在下ではインテグリンのリガンド結合ドメインの"ADMIDAS"と呼ばれるCa2+配位部位にMn2+が配位し、インテグリンは高親和性の構造に固定され、電気的軸索誘導が消失することを明らかにした。これらの結果から、電気的軸索誘導は細胞外Ca2+によるインテグリンの抑制的制御がキーであることを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定電場培養系を用いて軸索伸長を定量化することに成功し、これにより、軸索伸長に対する様々な薬物の効果を定量的に評価することが可能となった。平成30年度では、抗インテグリン抗体(TASC, W1B10)の作用、及び、インテグリンとリガンドとの結合親和性を上昇させるMn2+の作用を解析し、国際学会、及び、国内学会においてこれらの成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度では、抗インテグリン抗体(TASC, W1B10)の作用、及び、Mn2+の作用について引き続き解析する。特に、両者が共存する状態での効果を解析する。また、網膜の器官培養系を用いてMn2+の作用を解析し、in vivoでもインテグリンが軸索ガイダンスに関与しているかを検討する。また、軸索表面でのCa2+の分布・動態を可視化するために超高倍率共焦点蛍光撮像システムを構築する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は研究期間の初年度にあたり、備品の購入に費消した。残額は令和元年度の交付額と合わせて、消耗品の購入費用、及び、国際学会における成果発表のための旅費として使用する。
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