2018 Fiscal Year Research-status Report
アポクリン癌を含むアポクリン病変診断の分子病理学的再構築
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18K06988
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
小塚 祐司 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (50378311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 朋子 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (90362334)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳腺 / アポクリン / 非浸潤性乳管癌 / 筋上皮細胞 / 形質変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳腺病理診断におけるアポクリン病変には, 明白な「良性病変」と「悪性病変」の間に、診断コンセンサス形成に至っていない「境界領域」が存在する。病変の全体像を観察しても良悪性の判断が分かれる症例も存在し、悪性病変であるアポクリン癌に関しても判断基準が診断者によって異なっている。過去症例の検討で、浸潤性アポクリン癌あるいはアポクリン型非浸潤性乳管癌に明白な良性アポクリン病変、境界的な病変が共存、併存することが明らかになり、境界病変と癌にフロントが不明瞭で連続性を有する様な症例も見いだされた。異型度も様々で、各病変の位置関係と関連性の評価の客観性が問題となるものの、アポクリン病変が浸潤癌に至るプロセスは、“low grade-like”molecular pathwayと“high grade-like”molecular pathwayのいずれにも該当せず、その進展は限られた針生検検体では予測不能で、現状のアポクリン病変の診断基準は不十分であることが示された。アポクリン病変では良悪性に関わらず筋上皮細胞が減少・消失すると論文報告されてきていたが、免疫染色での検討では、乳頭状病変と拡張乳管内病変ではp63陽性細胞の減少・消失は観察されたが,αSMA、Calponin、CK5/6、CK14等の抗原性は概ね保持されていた。硬化性腺症を含む硬化性病変内のアポクリン病変では、p63陽性細胞の減少の程度は軽度にとどまった。アポクリン病変に付随する筋上皮細胞の変化に関しては、乳頭状構築病変、硬化性病変、拡張乳管内病変等の構築・腫瘍周囲環境によって異なることが示唆された。また、P53とMIB-1 陽性細胞の率は、良性悪性病変で異なるとされていたが、連続性を有するアポクリン病変では、各々の良性・悪性領域内においても、ヘテロな陽性細胞分布を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病理診断の再検討で、浸潤性乳管癌+アポクリン型上皮の良性/境界/DCIS隣接共存症例、浸潤性アポクリン癌+アポクリン型上皮の良性/境界/DCIS隣接共存症例、浸潤性乳管癌とは空間的無関係である嚢胞や乳管内乳頭腫内等のアポクリン型上皮の良性/境界/DCIS隣接共存症例の再分類を行ったところ、明瞭な区分が困難な症例もみられた。複雑に分布し、一部には移行像も認めたため、各病変の位置関係と関連性の評価の客観性の担保が問題となった。良性アポクリン病変と浸潤癌の関係は、不連続なものではなく、連続性を有すると考えられる。各病変の構築と構成アポクリン細胞形態、AR、筋上皮細胞の変動、MIB-1 index、p53染色結果の相関に有意性が見いだせず、代表病変の再分類・選択に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
浸潤性アポクリン癌とアポクリン型DCIS、良性アポクリン病変の共存症例に焦点を絞り、ダイセクションにより浸潤性アポクリン癌に対する遺伝子変異を検討する。変異が見いだされた遺伝子に関しては、同一症例内に隣接する非浸潤性アポクリン癌病変、形態的には良性にみえるアポクリン病変で検討し、形態と遺伝子変異との比較解析を行う。乳癌の初期病変で発現様式が変化するとの報告があり、アポクリン病変での検討が行われていないprimary ciliaの挙動も検討する。
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Causes of Carryover |
日常業務で良悪性診断補助診断のため必要となった筋上皮細胞の免疫染色による存在確認、ER、PgR、HER2、Ki-67、悪性指標となり得るp53の免疫染色標本が当該研究に援用可能であったこと、また、病変の煩雑なmapping作業に想定以上に時間を費やしたため、予定していた免疫染色費用に達しなかった。余剰分は遺伝子解析費用に充当する予定である。
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[Presentation] 原発性乳癌の性質および進行度と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の関係の検討2018
Author(s)
長野 真由子, 齋藤 佳菜子, 小塚 祐司, 木本 真緒, 澁澤 麻衣, 今井 奈央, 野呂 綾, 稲上 馨子, 石原 幹也, 水野 聡朗, 小川 朋子
Organizer
第26回日本乳癌学会総会
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