2018 Fiscal Year Research-status Report
トリプルネガティブ乳がんの腫瘍成長因子α発現亢進に関わるゲノム高次構造異常の解析
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18K07320
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
河津 正人 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20401078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トリプルネガティブ乳がん / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存のトリプルネガティブ乳がんの患者由来腫瘍異種移植系(PDX)19系統の中から、ゲノム異常を背景としてTGFAの高発現しているPDX系統を1系統同定した。同系統を用いてEGFR阻害剤(AfatinibおよびOsimertinib)の治療効果を検証した。雌NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJマウスの背部皮下にPDX乳癌組織を移植した。移植12日後に3群(各群n=8)に群分けを行った(Day 0)。群分け時の各群の腫瘍体積は約262~267 mm3であった。Afatinib 20 mg/kgおよびOsimertinib 5 mg/kgを1回/日、21日間、連日経口投与した。Vehicle投与群の腫瘍体積は経時的に増加し、Day 21には2208.61±1618.07 mm3となり、腫瘍体積の変化率は約900%であった。Afatinib投与群の腫瘍体積はDay 7からDay 21まで、Vehicle群と比較して低値であったが有意な差ではなかった。またOsimertinib投与群の腫瘍体積はVehicle投与群と比較して有意な差はなかった。以上の結果から、AfatinibまたはOsimertinibは今回使用したPDXマウスに対して、明らかな抗腫瘍作用を示さなかった。 抗腫瘍効果が見られなかった原因として、TGFAの高発現が腫瘍の増殖に寄与していない可能性、TGFAの効果抑制にEGFR阻害剤は適切でない可能性、今回用いた腫瘍細胞がTGFA以外のドライバー変異に強く依存していた可能性などが考えられる。今後はトリプルネガティブ乳がんのゲノム解析を進めることで、TGFA高発現と、その他ドライバー変異の共存関係を調べるとともに、TGFA高発現の機能的意義や作用機序について解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の大きな柱の一つである、PDXマウスを用いた薬効試験に関して、目的のゲノム異常および表現系を持つPDX系統を同定し、そのPDXモデルを用いた薬効試験を実施できたため、進捗は順調と考える。ただし、その結果、期待した薬効が得られなかったため、今後の研究の方針について、再検討する必要が生じている。 今後は、トリプルネガティブ乳がんのゲノム解析結果を再検討することで、治療標的となるがんの本質的なドライバー変異の検出方法の最適化を主眼に研究を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
がんのゲノム解析の臨床応用(ゲノム医療)が現実のものとなりつつあるが、既存のアミノ酸置換に注目した解析方法では、比較的ドライバー変異が明確な肺腺癌においても25%では明らかなドライバー変異が検出されない。ドライバー変異がほとんど検出されないがん種/症例も多い。治療標的同定が困難な症例において、たんぱく質非コード領域の異常もゲノム医療の対象とするために、タンパク質非コード領域のゲノム異常による発がんメカニズムについての系統的解析手法確立を目指した研究を展開してゆく。 トリプルネガティブ乳がんについて、すでに保有しているゲノム解析のデータの詳細な解析を進めてゆく。ロングリードシーケンサーによる配列データも取得しており、全ゲノム解析のデータとの統合解析を進める。
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Research Products
(2 results)