2018 Fiscal Year Research-status Report
The role of fatty acids in pain modulation.
Project/Area Number |
18K07399
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
小崎 康子 金城学院大学, 薬学部, 教授 (20126882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北森 一哉 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80387597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 痛覚過敏 / 脂肪酸受容体 / 痛み関連遺伝子 / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エネルギー源として位置づけられている脂肪酸について、痛覚系におけるシグナル分子という観点からその役割に注目したものである。 SHRSP5/Dmcrラットに高脂肪食を摂取させると、摂取開始2~3日後から痛覚過敏を生じる。遊離脂肪酸受容体は、消化器系だけでなく神経系にも発現していると報告されており、脂肪酸が痛覚系を修飾し、痛覚過敏を誘起させる可能性がある。そこで、下行性疼痛抑制系に深く関わるとされる視床下部における脂肪酸受容体と痛み関連遺伝子の発現に注目した。 高脂肪食摂取10日目に視床下部を採取し、total RNAを抽出してRT-PCR法により5種の脂肪酸受容体遺伝子と脂肪酸の細胞内輸送に関わる3種の脂肪酸結合タンパク質の発現変化を調べたところ、痛覚過敏発症時には、Ffar1遺伝子の発現が有意に増加した。しかしながら、他の肪酸受容体Ffar2~4, GPR84およびFabp3,5,7の発現 には有意な変化が認めらなかった。高脂肪食摂取による痛覚過敏には、視床下部における長鎖脂肪酸受容体Ffar1が関わると考えられる。 高脂肪食摂取10日目に血液も採取して、全遊離脂肪酸量(共役酵素反応を利用した測定キットによる)を測定するとともに、ガスクロマトグラフィにより脂肪酸種を同定したところ、全遊離脂肪酸量には有意な変化は認められなかったが、ドコサヘキサエン酸(DHA)は減少していた。 視床下部において、DHAはβ-エンドルフィンの放出を促し、下行性疼痛抑制系を駆動すると考えられている。Ffar1は長鎖脂肪酸の中でもDHAへの親和性がもっとも高いので、DHA量の有意な減少により、視床下部のFfar1に結合するDHA量が減少して、β-エンドルフィンの放出が減少し、下行性疼痛抑制系が抑制されて痛覚過敏を発症すると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食10日間摂取の視床下部と血液サンプルについて、脂肪酸受容体の発現解析と血液中脂肪酸種の同定をすることができた。 視床下部における5種の脂肪酸受容体の発現変化を調べたところ、Ffar1遺伝子の発現増加のみが観察されたことから、Ffar1の関与が示唆された。 血液中の全遊離脂肪酸量には有意な増減は認められなかったが、脂肪酸種の変化、中でもDHAの減少が認められた。 これらの結果が得られたことから、当面の計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
下行性疼痛抑制系には視床下部と延髄が強く関わる。本研究では、まず視床下部に注目して脂肪酸受容体の発現変化を調べた。次のステップとして、DNAマイクロアレイ解析法により視床下部と延髄における痛み関連遺伝子の発現変化と痛覚過敏との関連を調べる予定である。 また、高脂肪食10日間摂取におけるFfar1の発現増加やDHAの減少が、高脂肪食の摂取期間により変化するかどうかを調べるために、より長期(24日)間の高脂肪食摂取の実験を計画している。脂肪酸受容体の発現変化や遊離脂肪酸量・種の変化がどのように痛覚系の修飾に関わるかを明らかにし、痛覚修飾系における脂肪酸の役割とその作用点を明らかにする。
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