2019 Fiscal Year Research-status Report
Database of effect of different radiation on cancer metastatic potential
Project/Area Number |
18K07632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 雅彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90186594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖本 智昭 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (20295067)
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
出水 祐介 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (50452496)
皆巳 和賢 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (90634593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | γ線 / 炭素イオン線 / 陽子線 / 細胞浸潤能 / Rac1 / cdc42 / 転移 / 浸潤能 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、光子線は局所制御を高め、隣接正常臓器への過照射を避けるため、強度変調放射線治療(IMRT)や低位放射線照射が急速に普及してきている。更に、炭素イオン線や陽子線といった粒子線を用いた放射線治療により、今まで治療成績が不良であった腫瘍に対しても、良好な治療成績が得られている。しかし、外科療法、化学療法を含む集学的な局所療法の進歩で、良好な局所制御がなされるようになっている現在においても、今なおがんの遠隔転移は最大の課題である。がん転移の有無は生存率に大きく影響し、がん患者の予後に関わる。よって、初期治療からの放射線治療においても転移予防を視野に入れる必要がある。 本研究課題では、放射線(光子線、陽子線、炭素イオン線)照射におけるがんの転移メカニズムを分子生物学的に解明すると同時に、機能解析、in vivo実験へと進めることにより、遠隔転移抑制を視野に入れた放射線治療成績向上のための具体的な生物学的因子を考慮した指標(1回線量、効果が高い線質、顕著に効果がみられる遺伝型、細胞コンディションなど)を各がん種各個で求め、データベース化することを目的としている。 これまでに、肺がん、乳がん、膵がん細胞株に対してγ線、陽子線、炭素イオン線を段階的に照射し、細胞浸潤能への影響を検討した結果、γ線照射に比べて、炭素イオン線は浸潤能の抑制効果が、がん種に関係なくみられることが示唆された。 本年度は、炭素イオン線に着目し、肺がん、乳がん、膵がん細胞株に対し細胞浸潤能が有意な差をもって抑制される線量を検討した。その結果、肺がん細胞は2 Gy、乳がん細胞は0.5 Gy、膵がん細胞は1 Gyで非照射細胞に比べ有意に細胞浸潤能が抑制される結果を得た。また、その分子メカニズムとして浸潤関連分子Rac1ならびにcdc42のタンパク発現抑制が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
γ線、陽子線、炭素イオン線を照射後に浸潤能を評価した。その結果、亜致死線量のγ線を照射された細胞の浸潤能は、非照射細胞に比べて亢進した。 一方、炭素イオン線照射された細胞の浸潤能は、亜致死線量照射であっても抑制される結果となった。陽子線照射された細胞は、亜致死線量照射された細胞は、γ線同様亢進した。 更に、がん種ごとの炭素イオン線照射における細胞浸潤能抑制線量を得た。 それらの機構として新たな分子メカニズムの解明にも端緒を開くことができた。 以上、今年度の進捗としては、一定の成果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、がん種別の放射線に対するレスポンスの違いとして、細胞コンディションの違いについて分子生物学的観点から解析する予定である。 Rac1、cdc42タンパクについて、他の細胞株も含め、更に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
試薬等の物品、および、謝金に要する試算による予算と、実支出が異なったため。
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