2018 Fiscal Year Research-status Report
クリニカルプロテオミクス解析による悪性胸膜中皮腫の新規分子治療法の開発基盤構築
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18K08174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳澤 聖 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (20372112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / プロテオミクス / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が見出した、悪性胸膜中皮腫細胞増殖に深く関与する2つの極めて有望な分子標的候補であるCytosKelton Associated Protein 4 (以下CKAP4)とOsteoblast Specific Factor 2 (以下OSF2)の詳細な分子機能を解明する事により、特異的分子標的治療法が全く存在しない悪性胸膜中皮腫に対する新たな分子標的治療法の開発に繋げていくことを目的とする。 これまでに、研究代表者は小胞体膜上に存在しその形態維持の役割を担うCKAP4が、ストレス応答分子eIF2のリン酸化を制御することを明らかとしていたが、本年度はその責任キナーゼとリン酸化抑制分子の同定を進めることにより、それぞれに候補分子を特定するに至った。さらなる機能解析を進めることにより、責任キナーゼ、あるいは責任リン酸化抑制分子を、CKAP4と同時に発現抑制することにより、eIF2のリン酸化が誘導されない、あるいは増強するという結果を得ている。 また、分泌因子であるOSF2が、悪性胸膜中皮腫細胞においてタンパクレベルにて高発現していることを見出すとともに、その発現抑制により悪性胸膜中皮腫細胞株の顕著な増殖抑制が認められることを確認している。本年度は、培養細胞株を用いて、OSF2発現抑制時のリン酸化タンパク群の変化を、質量分析技術を用いて検討した。30,000種類を超えるリン酸化サイトを同定するに至り、対照試料と比較して数十種類のサイトで発現変動が認められることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容の一つである悪性胸膜中皮腫におけるCKAP4の分子機能解析については、当初計画で、共作用するキナーゼとリン酸化抑制分子の同定を進める事を目標としている。本年度の成果として、CKPA4の細胞内局在とは異なるキナーゼ、さらにはリン酸化抑制分子が、CKAP4と共作用することを同定するに至っており、新規のCKAP4の分子機能を見出すとともに、将来的には悪性胸膜中皮腫治療の標的となり得る分子機構を見出すことができ、当該研究がおおむね順調に進展している状況と考える。 もう一つの研究主題である悪性胸膜中皮腫におけるOSF2の分子機能解析については、当初計画で、OSF2が担うシグナル伝達経路の下流分子の探索を進める事を目標としている。本年度は、未知のリン酸化タンパクが、OSF2が担うシグナル伝達の下流に存在することが確認されており、当該研究がおおむね順調に進展している状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性胸膜中皮腫細胞の増殖に深く関与し、リン酸化を介したシグナル伝達経路の構成分子であることが明らかとなったCKAP4は、分子標的治療開発が立ち遅れている当該疾患の標的分子候補と期待される。そこで、さらなるCKAP4機能の詳細を解明するため、当該分子の発現抑制・増強、或いは欠失変異体を導入した培養細胞株を用いて、質量分析技術とリン酸化タンパク精製技術を応用したプロテオーム解析を進め、分子ネットワークの全貌解明を目指すとともに、これまでの成果に基づいて、CKAP4が制御する細胞増殖、ストレス応答制御機構を標的とする治療薬の開発を進める計画である。 また、CKAP4と同様に、悪性胸膜中皮腫細胞の増殖に深く関与し、リン酸化を介したシグナル伝達経路の構成分子であることが明らかとなったOSF2も、分子標的治療開発が立ち遅れている当該疾患の標的分子候補と期待される。そこで、当初計画にもある悪性中皮腫細胞における当該分子の受容体同定を目指して、質量分析技術と膜タンパク精製技術を応用したプロテオーム解析を進め、候補分子群の同定を目指すとともに、これまでの成果に基づいて、OSF2が制御する細胞増殖、ストレス応答制御機構の中で治療標的に適したシグナル伝達機構の解明を進める計画である。
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Causes of Carryover |
他の研究主題の進捗が顕著であったことから、研究主題の一つであるOSF2を対象とした機能解析において、当初計画にある悪性中皮腫細胞における当該分子の受容体同定を目指した解析開始に遅延が生じたため、当該研究費は、当初予定していた質量分析、あるいは膜タンパク精製などに使用する予定である。
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