2019 Fiscal Year Research-status Report
糸球体足細胞最終分化維持機構の解明と糖尿病性腎症に対する新規治療応用の開発
Project/Area Number |
18K08254
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
和田 健彦 東海大学, 医学部, 准教授 (90447409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深川 雅史 東海大学, 医学部, 教授 (00211516)
豊田 雅夫 東海大学, 医学部, 准教授 (00349383)
澤田 佳一郎 東海大学, 医学部, 客員講師 (10420952)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糸球体足細胞 / 活性型ビタミンD / 細胞周期 / 糖尿病性腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代謝性ストレスを中心とした種々の足細胞障害性ストレスに対して、ビタミンDが最終分化段階を維持することを通じて保護作用を発揮するとの仮説を検証し、その機序を明らかにすることを目的としている。これまでに、in vivoでの検討においてparicalcitolが実際にストレプトゾトシン糖尿病マウスにおけるアルブミン尿を抑制することを観察していたが、さらに2019年度の検討において足細胞関連蛋白の発現低下を確認することができた。その機序を分子レベルで解明するために、分化条件下で培養した温度感受性不死化マウス足細胞を用いてin vitroでの検討を行っている。細胞障害性ストレスとしてTGF-β1やlipopolysacchalide (LPS)などを培養上清へ添加、一方でvehicleまたは活性型ビタミンD(paricalcitolまたは calcitriol)を同様に添加し、足細胞における細胞周期調節蛋白の発現や、細胞骨格の変化について検討を重ねてきた。使用している培養細胞にはビタミンD受容体が発現していることが確認されており、活性型ビタミンDの存在下で受容体の発現が誘導されることが観察された。また、2019年度の検討により、細胞骨格の変化がビタミンD共存により軽減され、足細胞のmigrationに変化が見られたが、現在は統計学的に有意であるかどうか確認実験を行っている。さらに細胞周期調節蛋白のうちp21などいくつかの分子でTGF-β1存在下で発現の変化が認められ、活性型ビタミンDはその変化を抑制する方向に作用することを見出した。最終年度においては、ビタミンD受容体シグナルとこれらの分子レベルでの変化をつなぐものが何であるかを詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにin vivoでの糖尿病性腎症モデルにおいて、活性型ビタミンDがアルブミン尿軽減効果を発揮し、この条件下において糸球体足細胞スリット膜関連分子の発現が維持されているという結果が病理組織学的検討の中で得られた。これまでの知見により、アルブミン尿抑制効果の理由の少なくとも一部はスリット膜関連分子の発現維持に起因すると考えられる。また、培養細胞を用いたin vitro実験では糖尿病性腎症での関連が確立しているTGF-β1による足細胞の細胞骨格の変化やmigrationの変化が、活性型ビタミンD製剤の共存下では抑制されることが観察され、同様の条件下ではこれらの現象は一部の細胞周期調節蛋白の発現変動と関連し、分化状態維持に関わるとする仮説を支持する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で概ね予定通り進行しており、今後はビタミンD受容体シグナルと細胞周期調節蛋白および細胞分化状態の関連について、その分子生物学的機序の詳細を検討する予定である。この検討事項としてはビタミンD受容体シグナルと足細胞の細胞周期および分化状態の関係(ビタミンD受容体シグナルのいくつかの段階で抑制実験を行い、足細胞の分化状態や細胞周期調節蛋白発現を評価)が中心となるが、ビタミンD受容体シグナルが足細胞スリット膜関連分子に及ぼす直接的影響も検討する必要がある可能性がある。また、この過程で、中間で働く分子のリン酸化等のシグナルや分子間の相互作用について、詳細な分子レベルの検討が必要となる可能性を想定している。さらに、これらの知見から再度マウスモデルでの病理組織学的検討に戻り、in vivoでの分子動態について確認することも想定している。
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Causes of Carryover |
初年度は培養細胞を用いた実験が多くを占め、当研究室既存の培養細胞および細胞培養用試薬、mRNA発現解析用の定量PCR用試薬(プライマーを含む)等を使用することができたため、想定よりも少額の支出で実験を遂行することができた。2019年度は概ね予想通りの研究消耗品および試薬の購入となったが、2020年度は追加実験などで再度動物実験に係る諸費用や抗体等比較的高額な試薬購入が必要となると考えられ、配算額がすべて必要となると見込まれる。
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