2019 Fiscal Year Research-status Report
塩分応答性分子SIKを標的とした大動脈解離病態解明
Project/Area Number |
18K08747
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
西田 憲史 久留米大学, 医学部, 助教 (50624508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
田中 啓之 久留米大学, 医学部, 教授 (70197466) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大動脈解離 / 細胞外マトリックス / SIK |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究から大動脈解離病態への炎症応答や細胞外マトリックス(ECM)代謝異常の関与が明らかにされつつある。申請者は前年までの実験および過去の知見から塩分過剰がIL-17感受性を高め、TGF-β-Smad2経路を抑制すること、それによりECM代謝を抑制し大動脈解離を増悪させていること、そして血管平滑筋細胞がその中心的役割を果たしていることを明らかにした。そこで、血管平滑筋細胞におけるECM代謝制御のメカニズムと、それらの炎症応答との関連をさらに明らかにし、大動脈解離病態を解明することを目的に研究を進めた。 代表的な炎症性サイトカインであるIL-6シグナリングを血管平滑筋特異的に亢進させること(smSOCS3ノックアウト(KO))がECM代謝に及ぼす影響を検討した。smSOCS3 KOマウスでは、大動脈の線維芽細胞が増加し、大動脈外膜のコラーゲンが増加していた。また、pStat3、pJNKが有意に亢進し、持続性の炎症が存在すると考えられた。次に当研究グループで開発した血管強度測定装置を用いてマウス大動脈組織の物理的特性を解析した。結果、smSOCS3 KOマウスは野生型マウスより大動脈強度が高いことが明らかになった。さらに、smSOCS3 KOマウスで大動脈解離モデルを作成したところ、弓部大動脈解離の重症化が抑制された。 これらの実験および過去の知見からマウス大動脈においてECM代謝を制御する機構は複数存在し、血管平滑筋細胞が中心的役割を担うこと、そしてECM代謝亢進により大動脈解離が抑制できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塩分過剰が大動脈解離増悪をきたすメカニズム解明のため、Salt-Inducible kinase(SIK)に着目している。これまでの検討から、塩分過剰がIL-17経路を介してTGF-β経路を抑制することがECM合成の変調をきたすこと、ECM代謝には血管平滑筋細胞が重要な役割を果たしていること、大動脈ECM強化が大動脈解離抑制につながりうることが示された。この知見は、SIKの役割を解明するにあたりIL-17、TGFβ経路およびECM合成系に着目すべきであることを示唆する。今後、これらの分子経路に着目して大動脈解離病態におけるSIKの役割を明らかにし、塩分過剰が大動脈組織の炎症と脆弱性をきたす病態メカニズムを明確にする。
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Strategy for Future Research Activity |
塩分過剰が大動脈解離の炎症と脆弱性を来す病態メカニズムを明らかにするために、Salt inducible Kinase(SIK)に着目して解析を継続する。具体的には、マウス大動脈解離モデルを用いて、SIKの各アイソフォームの発現時期、発現細胞を定量的PCRとウェスタンブロットおよび免疫染色で明らかにし、塩分過剰状態での発現変化を検討する。
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Causes of Carryover |
大動脈解離病態における血管平滑筋細胞のECM代謝における役割を明らかにすることが、研究推進に重要であると判断し、現有する血管平滑筋特異的SOSC3ノックアウトマウスを利用した解析を優先した。血管平滑筋細胞の重要な役割を示し、SIKが関与しうる作用点を明らかにすることができた。またSIKの作用を明らかにするための高額な網羅的解析を回避した。次年度は、SIKおよびその作用点に焦点をあてた解析を進め、当該実験に必要なマウスおよび試薬類を購入する。
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