2023 Fiscal Year Research-status Report
大動脈解離における組織破壊の増幅機構を解明する:ATP分泌から見た病態解明
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18K08748
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
大野 聡子 久留米大学, 医学部, 講師 (80569418)
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Project Period (FY) |
2021-01-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大動脈解離 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈解離は突然に大動脈中膜が破断して死に至る重篤な疾患である。分子病態が解明されていないため、治療法はなく発症予測もできない。 解離の分子病態を研究する中で、解離刺激により大動脈でアディポネクチンの発現が減少することを発見した。アディポネクチンは大動脈周囲脂肪組織 (PVAT) から分泌されるアディポカインのひとつで抗炎症作用を持つ。PVATを構成する脂肪細胞はアディポカインを含む種々の生理活性物質を分泌し、同じくPVATを構成するマクロファージとともに血管機能や炎症応答を制御し、冠動脈疾患や腹部大動脈瘤などと関連するが、解離との関連は不明である。本研究では解離刺激に応答して脂肪細胞の形質が変化するのか、またその変化が大動脈組織に影響を与えるかを調べた。大動脈解離を惹起するため、野生型マウスにコラーゲン-エラスチン架橋酵素阻害薬であるBAPNとアンジオテンシンIIを投与するBAPN+AngIIモデルを使用した。 解離刺激前と刺激後3日でPVATを採取し、遺伝子発現を網羅的に調べた。解離刺激により、解離を発症する前からPVATではIL-6をはじめとするサイトカイン、炎症応答、増殖応答、細胞遊走に関連する遺伝子群が発現亢進することがわかった。一方、発現が抑制された遺伝子群には電解質や細胞の恒常性に関連する遺伝子群、神経系の発生に関連する遺伝子群があった。またBAPN+AngII刺激から早期にPVATで脂肪細胞褐色化マーカーUCP1が低下しており、解離発症前に脂肪細胞の形質変化をきたすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に解析したトランスクリプトームから新たなデータを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで脂肪細胞が分泌するアディポネクチンやアディポサイトカインが動脈硬化をはじめとした炎症を制御する可能性については議論されてきた。解離刺激によるPVATと大動脈組織の変化を調べるため、空間トランスクリプトームを予定している。
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Causes of Carryover |
理由: 感染症流行に伴う臨床業務の比重増大により研究業務が縮小されたため。 使用計画: マウスへの薬物投与実験、論文校閲などに使用する。
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