2018 Fiscal Year Research-status Report
ASIC1aのロコモティブシンドロームの治療における分子生物学的アプローチ
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18K09039
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐久間 英輔 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90295585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 孝俊 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60317328)
井上 浩一 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80345818)
和田 郁雄 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70182970)
若林 健二郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20418867)
河 命守 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50791141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロコモティブシンドローム / ミクログリア / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
酸感受性イオンチャンネル1a; Acid-sensing ion channel 1a (ASIC1a) は次世代型鎮痛剤の作用の受容体等として世界的に注目を集めている。最近、我々はASIC1aのノックアウトマウスの雌に上下肢の筋力の低下と易疲労性(サルコペニア)、脳内の側坐核(Nucleus accumbens)と海馬(hippocampus)を中心にしたミクログリアの増加(認知症)を見出した。このミクログリアの増加に注目し、マウス由来のミクログリア細胞株BV-2及びN-9を使用し、PCRやウェスタンブロッティング法などの手法を用いて解析し、また、SGK1遺伝子破壊株の作成にはCRISPR/Cas9システムを用いた。初めに二つのミクログリア細胞株におけるSGKサブタイプの発現を検討した結果、SGK1とSGK3の発現が認められた。SGK1遺伝子をCRISPR/Cas9システムを用いて破壊すると、SGK1遺伝子の破壊によるSGK3蛋白の発現変化は認められなかった。SGK1遺伝子破壊株(SGK1KO)と野生型の形態を比較したところ、活性化したミクログリアでしばしば見られるアメボイド型の細胞がSGK1KOでは野生型に比べ有意に多く観察された。また、SGK1KO細胞では細胞増殖の速度が増加した。これらのようにSGK1遺伝子の破壊により主に活性化されたミクログリアで見られる表現型が認められることから、SGK1はミクログリアの活性を抑制している可能性が示唆された。以上を、学会発表と論文作成した。(Potential implication of SGK1-dependent activity change in BV-2 microglial cells. Int J Physiol Pathophysiol Pharmacol. 2018 10(2):115-123.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中枢神経内で炎症反応を起こすミクログリアについて、培養細胞を用いて、ミクログリアの活性調節におけるSGK1を含むSerum- and Glucocorticoid-inducible Kinase 1(SGK1)のはたらきを検討してきた。SGK1は血清などにより発現誘導されるリン酸化酵素で、腎臓でのNa+再吸収の促進を含め種々の組織で多くの役割を持っていることが報告されている。さらに、近年SGKの免疫系細胞における重要性が次々に明らかになってきている。SGK1・2・3は、いずれも脳に発現することが報告されているが脳・神経における役割はいまだ不明な点が多い。近年神経変性疾患や精神神経疾患で脳内ミクログリアの活性が亢進していることが示唆されており、ミクログリア活性の制御は将来の神経疾患治療の大きな柱となりうる。これは、認知症を含む老化現象についても同様である。ミクログリアは多様な刺激に反応しサイトカインや活性酸素の放出など免疫応答を行う。今回我々は、ミクログリア細胞株BV-2及びN-9を用いて、ミクログリアの活性調節におけるSGK1を含むSGKのはたらきを検討した。そして、SGK1はミクログリアの活性を抑制している可能性を明らかにした。この事は、老化現象の悪化の抑制因子の一つを解明したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクログリアの応答はステロイドなど種々の液性因子により修飾されるが、その反応に影響を与えるシグナルのひとつにフラクタルカインシグナルがある。フラクタルカインの受容体CX3CR1はミクログリアに発現し、フラクタルカインにより免疫応答は影響を受ける。フラクタルカインを事前に投与すると、免疫応答を誘発するリポ多糖の投与による反応を抑制することが報告されており、その受容体活性化の神経損傷の治療に対する有効性が期待されている。現在、我々は、ミクログリア細胞株BV-2を用いて、免疫反応惹起後のミクログリア活性をフラクタルカインが抑える可能性を検討している。リポ多糖の投与によりBV-2は炎症性分子であるiNOS、TNF;の発現および一酸化窒素(NO)の産生、TNFの放出をおこし、リポ多糖により免疫応答を起こすことを確認した。リポ多糖投与4時間後にフラクタルカインを投与したところ、NOの産生は減少したことから、活性化後の免疫応答を抑制することが示唆された。また、CX3CR1の発現レベルを検討したところ、リポ多糖投与後その発現レベルは減少した。続いて、CX3CR1の過剰発現を行いリポ多糖を投与したところ、フラクタルカイン投与のない状態でも対照に比べリポ多糖によるNOの産生は減少した。しかし、過剰発現した細胞へのリポ多糖投与後のフラクタルカイン投与は大きなNO産生抑制効果をもたらさなかった。この件については、本来の研究内容であるASIC1aの筋力の低下に対する神経筋接合部での重要性、脳内のミクログリアの増加(認知症の指標)に対する影響を確認し、サルコペニア・認知症の対策の、分子生物学的アプローチの開発する研究の一部と考えて推進している(解剖学会総会、2019年3月解剖学会総会にて発表)。
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Causes of Carryover |
本年度は、教員研究費などの他の予算が必要額あり、科研費に使用していない分が生じた。次年度は、今回生じた次年度使用額も含めて、積極的に研究活動に使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)