2020 Fiscal Year Research-status Report
ターニケット装着下下肢手術に引き続く深部静脈血栓症・肺塞栓症発症機序の解明
Project/Area Number |
18K09041
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中田 信昭 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (00207804)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 深部静脈血栓症 / 虚血‐再灌流障害 / 止血帯 / ウサギ |
Outline of Annual Research Achievements |
整形外科下腿手術において無血野確保・失血抑制の観点から止血帯装着は一般的な手技となっているが、その解除後深部静脈血栓症(DVT)に引き続く致死性肺動脈血栓(PE)発症が報告されている。止血帯装着がDVT・PEリスクを上げるかどうかについては論争が多く、またそれらの発症機序に関する実験的研究も渉猟し得ないのが現状である。本研究の目的は虚血―再灌流がDVT・PEを惹起させるメカニズムを解明することである。 [当該年度における研究成果] 家兎を用い、止血帯装着による虚血‐再灌流に引き続く静脈血栓症モデルの独自的開発を行っている。[方法] ①エスマルヒにより家兎左側後肢駆血後他のそれを大腿近位部に止血帯として用い、4h虚血-24h再灌流を行った。虚血中、止血帯より末梢での血流が遮断されていることをLaser Doppler skin blood meter (ALF21, Advance Co. Ltd.)により確認した。②心臓右心系(右心房、右心室)における静脈血栓量を測定した。③血漿アンチトロンビンおよびD-ダイマー測定を虚血中ならびに再灌流終了直前に行った。[結果]・ウサギ8羽中血栓がみられたのは4羽(50%)であった。・その4羽の血栓量は428mg-2045.3mg、平均1417.3mgであった。左心房・左心室には血栓はみられず血管内凝固は否定的と考えられた。・虚血中および再灌流終了直前の平均血漿アンチトロンビン値はそれぞれ132(125-137)%、141(133-149)%であった。・虚血中および再灌流終了直前の平均血漿D-ダイマー値はそれぞれ<0.1μg、0.25(0.16-0.38)μgであった。[考察]片側後肢虚血-再灌流に起因する右心系静脈血栓形成率が50%と低いのは駆血が不完全なためと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・sacrifice後、右心系血栓摘出までに10分以上を要すると「血管内凝固による血栓形成」が加わると考えられることが判明した。したがって「10分以内の摘出時間」と「左心房・左心室に血栓がみられない」ことを新たな条件として対照群作成をやりなおしているため。 ・片側後肢虚血-再灌流に起因する右心系静脈血栓形成率が50%と低いのは駆血が不完全なためと推察され、駆血および止血帯装着方法を改良しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
①生理的食塩水投与対照群作成:家兎片側後肢4h虚血‐24h再灌流に引き続く右心系血栓湿重量を測定する。②P-selectin阻害薬である糖鎖薬剤glycyrrhizin投与による静脈血栓抑制効果の確認ならびに血栓量と肝アンチトロンビン(AT) mRNA発現量・血漿AT値の関係を検討する。③後肢虚血‐再灌流障害の肺におよぼす影響を肺でのAT-mRNA発現量から検討する。
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Causes of Carryover |
・研究遂行に想定以上に時間を要した。・研究計画の見直しが必要となった。左後肢虚血ー再灌流に引き続く右心系(右心房・右心室)血栓が血管内凝固を含む可能性を除去したことおよび駆血不十分が原因であると推察される血栓低形成率(50%)の修正に時間を要した。実験モデルの確立、肝臓・肺および大腿静脈におけるantithrombin mRNA発現の分子生物学的検討、anti P-selectin作用を有するglycyrrhizinの抗血栓効果を検討するために使用する計画である。
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