2018 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症性蛋白の機能に着目した子宮頸管熟化抑制機構の解明と早産予防戦略
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18K09220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永松 健 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60463858)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SLPI / プログラニュリン / 妊娠 / 頸管熟化 |
Outline of Annual Research Achievements |
progranulin(PGRN)とsecretory leukocyte protease inhibitor (SLPI)の2種類の抗炎症性蛋白の作用に着目して子宮頸管の熟化制御に関わる分子生物学的機構を解明し、早産抑止のための新規治療戦略構築の足掛かり得ることを目的として検討を進めた。妊婦の血清中のPGRN濃度は妊娠進行とともに上昇し、分娩後には低下した。そのためPGRNの中心的な産生源は胎盤を含めた妊娠子宮であることが示唆された。分娩前の頸管粘液中のPGRNの濃度をSLPIと比較して解析した結果、臨床上の頸管熟化指標であるBishopスコアとPGRNが負の相関を持つことが確認された。一方でSLPIはBishopスコアとの相関は認められなかったが、分娩日が近いほど産生が亢進していた。In-vitroでの検討では、頸管上皮細胞に対してプロゲステロン刺激を行うことでPGRNおよびSLPIの発現がいずれも誘導され、この反応がプロゲステロン受容体よりもむしろグルココルチコイド受容体を介したシグナル刺激を介していることが示唆された。以上のことから、PGRNとSLPIはプロゲステロン作用により産生誘導されて、子宮頸管の熟化制御に寄与していることが推測されたが、SLPIは組織炎症によって発現上昇を生じるというPGRNとは異なる発現制御に2面性を有していると考えられた。今後、切迫早産などの病的妊娠の症例からの臨床サンプルを用いた解析を進めることでPGRN機能の破綻と早産発症の関係性を探索を進める。また、PGRNが子宮頸管機能に寄与しているという仮説に基づいて早産マウスモデルを用いた検討を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、妊婦血清、頸管粘液の臨床検体の収集を進めて妊娠時期に応じたSLPI、PGRNの発現状況、臨床情報との関連を調べることで、それぞれの抗炎症性蛋白の生理的な機能に関する示唆を得ることができた。また、子宮、胎盤局所におけるPGRN、SLPIの発現変化を確認する実験手法の確立を進めている。PGRNについてはプロテアーゼの分解に伴い分子機能が変化するため、分解産物と区別した検出ができる方法の構築が未解決の課題である。今後早産マウスモデルにおいて組織内でのPGRNおよびSLPIの産生、機能解析を進めるにあたり、それらの技術を導入する予定である。In-vitro実験においてPGRNの発現制御にプロゲステロンが重要な因子となっている知見が得られたことは大きな収穫であった。今後、PGRNのシグナルの子宮頸管機能に対する生理的役割、病的状態における変化を調べることでPGRNと妊娠維持の関係の全体像に迫る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の臨床サンプルを用いた検討において頸管粘液中のPGRNが頸管熟化の臨床的指標であるBishopスコアと負の相関があることを確認したことは重要な知見と考えている。今後は、切迫早産妊婦における血清および頸管粘液サンプルを収集して正常例との比較を行うことで、病的子宮頸管熟化におけるPGRNの関与を追究する予定である。また、これまでの検討の結果から炎症に伴い子宮局所の発現が上昇するSLPIと頸管熟化に伴い低下するPGRNは対照的な変化を生じていることが考えられるため、その双方を測定して動態を探ることで早産予知のバイオマーカーとしての有用性を検討する。PGRNの発現制御因子としてプロゲステロンが同定されているが、その分子応答に介在する受容体及びシグナル伝達機構に着目してin-vitroでの解析を予定する。 PGRNの機能を解明するためのアプローチとして、妊娠末期のマウスの頸管局所にPGRNを投与するモデルを構築する。それを用いて、プロテアーゼなどの頸管熟化関連因子に与える影響を探りたいと考えている。また、SLPIはPGRNの分解を抑制することが報告されており、それぞれの抗炎症蛋白の相互的作用にも着目して検討を行う。
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Causes of Carryover |
PGRNおよびSLPIの分子生物学的測定系の構築に予定よりも多くの時間が必要となったため、動物実験に使用予定であった費用が次年度に持ち越しとなった。次年度は早産マウスモデルにおいてサンプル数を増やしてデータ収集を予定しており、本年度未使用の費用はそこで使用される予定である。
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Research Products
(8 results)