2019 Fiscal Year Research-status Report
羊水細菌叢の網羅的解析による早産予防治療戦略構築のための基礎的研究
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18K09306
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉里 俊幸 久留米大学, 医学部, 教授 (80264034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 正常妊婦 / 菌叢 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
正常単胎妊婦23例を対象として、妊娠中期(20-24週)および後期(33-37週)における46検体の腟細菌叢の解析行った。菌叢解析には次世代シークエンサーを用い、菌組成の比較解析を行った。本方法の特徴は、細菌培養で同定可能な菌種とともに難培養菌種を含めた大量の細菌叢の網羅的解析を実施できることである。妊娠中期と後期の菌叢の比較では、組成の95%以上を占める上位3位までを対象とした。 その結果、以下の点を明らかにした。(1)すべての検体でLactubacillusを検出し、頻度順にL. crispatus, L. iners, L. gasseri, L. genseniiの4種であった。(2)最上位の菌種がLactobacillusであったものは、41/46検体(89.1%)、残り5検体はいずれもGardnerella vaginalisであった。(3)G. vaginalisやAtopobium vaginae等の「悪玉」菌は、12/46検体(26.1%)で検出され、いずれもその中にL. gasseriあるいは L. inersを認めた。(4)L. crispatus, L. genseniiが検出された検体ではいずれも95%以上が単独の菌種で占められ、「悪玉菌」は認めなれなかった。(5)妊娠中期と後期との比較で、20/23例(87.0%)で最上位の菌種に変化を認めなかった。(6)菌種の変化を認めたものは、3例(13.0%)でL. gasseri→L. iners, L. genseni→L. crispatus, L. cristatus→L. genseniiであった。 以上より、1)個体が有する優勢菌種は妊娠期間を通じてほとんど変化しないこと、2)Lactobacillusには菌種により、その特性が異なり、L. crispatus, L. genseniiはL. gasseri, L. genseniiと比較し、”robustness”とも言うべき特性を有することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、主に切迫早産症例を対象として、羊水中に細菌叢解析を行った。しかしながら、菌の絶対量が少なく、安定した結果が得られなかった。このため、菌量が豊富であり、検体採取が容易な腟内分泌物をターゲットに変更して、その後の研究を推進することとした。上記の通り2019年度は、正常妊婦を対象として、腟内細菌叢の解析を行い、コントロールとしてのデータ収集を終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、正常妊婦における日本人の腟内細菌叢および妊娠中の変化の特性に焦点をあてて研究を行った。これまで、腟内細菌叢の解析を行った研究は海外では報告があるものの、その組成の妊娠中における変化について言及したものはなく、この結果を誌上発表に向けて準備を進めている。 最終年度は、切迫早産ハイリスク症例(前回妊娠中期の流早産、初回急産、頸管無力症症例)を対象として、同様の菌叢解析を行い、正常妊婦との違い、および妊娠の進行に伴う変化に注目してデータ収集、解析を行う予定である。さらに、正常妊婦における主要な善玉菌であるLactobacillusの代謝産物やその生化学的特性にも注目し、Lactobacillusの有するrobustnessの特性の原因についても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究成果が当初の計画とは異なり、2019年度はその研究計画の変更を余儀なくされたため。
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