2019 Fiscal Year Research-status Report
新規難聴遺伝子候補SLC12A2の細胞・動物モデルを用いた分子病態解析
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18K09336
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60415891)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 難聴 / ゲノム編集 / 動物モデル / スプライシング / アッセイ系 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性難聴は新生児約500人に1人の割合で発症する。うち半数以上は遺伝子に原因があるとされ、代表者の所属する研究室でも119難聴遺伝子を対象とした遺伝子解析を実施し、診断・治療方針の決定に役立てている。一方、原因が同定できない場合も多く、これには未同定の難聴遺伝子を原因とする場合が含まれる。代表者らは保険検査などで原因が同定できなかった難聴家系200家系以上に対し、新規難聴遺伝子の同定を目的として次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を実施し、その過程で新規の難聴原因遺伝子候補SLC12A2を3家系で同定してきた。 本研究では1)SLC12A2変異体のin vitro分子機能解析ならびに細胞内局在の検討、2)SLC12A2 exon21変異体のexon21スプライシング活性評価、3)Slc12a2変異をもつ遺伝子改変動物モデルの作成と表現型解析の各実験を計画している。二年目(2019年度)はそのうち2)と3)について実験を実施した。2)については、試行錯誤の末、スプライシングの有無により、イントロンにより2つのエクソンに分割されたレポーター遺伝子Luciferaseの活性が100倍以上変化する評価系の構築に成功した。3)についてはCRISPR/Cas9ゲノム編集法により330個のマウス受精卵に対し患者と等価の変異を導入し、これらから患者で検出されたSLC12A2変異と同等と考えられる変異を導入された2系統を選択し、現在聴力測定、行動学的解析、また内耳を中心に組織化学的・分子生物学的手法を用いた解析を開始している。また、本研究の成果はPLOS GENETICS誌に公表された。全体として研究は順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画2)においては、試行錯誤の末、LuciferaseをSLC12A2イントロン領域で分割し、患者で同定されたexon21スプライスサイト変異の有無によりレポーター遺伝子Luciferase活性が低下する系、および変異の有無により活性が上昇する系の計4種類のアッセイ用ベクターを作成し、96ウェル用マイクロプレートリーダーGloMax Explorer(Promega社)を用いた検出系を構築した。SLC12A2の組織特異的スプラシングのメカニズムの解析、および当該変異を原因とする難聴の治療薬候補のハイスループットスクリーニングするための有用なツールが開発された。 研究計画3)においては、A: 難聴患者と等価でexon 21のスキップを引き起こすと考えられる、アクセプターサイトに塩基置換変異を持つマウス、およびB: exon 21のスキップまたは遺伝子機能消失をもたらすと考えられる、アクセプターサイトからexon 21にかけて欠損(フレームシフト)変異を持つマウスの計2系統を選択し、繁殖実験に供した。A系統の変異マウスについては繁殖効率が変異ヘテロのオスメス共に低く、生殖細胞への影響が推測された。さらに、一部のマウスは一回戻し交配した時点でもゲノムモザイクであることが判明した。現在、2回戻し交配の実施に加え、他の近交系マウスとの一代雑種(hybrid)マウスを作成し、雑種強勢による繁殖効率の上昇と、hybrid同士の交配により変異ホモマウスを得るべく飼養中である。一方、B系統の変異マウスは変異ホモマウスが得られ、現在表現型解析を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の2020年度には、研究計画2)において、SLC12A2のexon21スプライシング活性評価系をより簡便に実験可能にする安定細胞株を構築すると共に、スプライスサイト変異の影響を修復すると予測されるオリゴヌクレオチドによる変化を観察する。また、培養液中に各種細胞内シグナル伝達の阻害剤、インターロイキン等のサイトカイン等を投与し、スプライシングに対する影響の検討を開始する。 また、研究計画3)において、A系統の変異マウスの交配を引き続き試みると共に、B系統の変異マウスの表現型解析および組織化学・分子生物学的手法による解析を進める。以上の結果をまとめ、発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画2)におけるアッセイ系の構築に試行錯誤を要し、時間が予想以上にかかったため、および研究計画3)における遺伝子変異導入マウスの繁殖効率が低く、各種解析に使用する試薬消耗品の購入が遅れたため。今年度は構築されたアッセイ系を用いた実験などを進めるため、試薬消耗品の購入・使用に問題は生じないと考えている。
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[Journal Article] Variants encoding a restricted carboxy-terminal domain of SLC12A2 cause hereditary hearing loss in humans2020
Author(s)
Mutai H, Wasano K, Momozawa Y, Kamatani Y, Miya F, Masuda S, Morimoto N, Nara K, Takahashi S, Tsunoda T, Homma K, Kubo M, Matsunaga T
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Journal Title
Plos Genet
Volume: 16
Pages: e108643
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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