2018 Fiscal Year Research-status Report
機能性RNA解析に基づく頭頚部扁平上皮癌治療抵抗性獲得機序の探索
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18K09338
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌 / マイクロRNA / プロファイル / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトゲノム解析研究の成果として、ヒト細胞中には極めて多くの蛋白に翻訳されないRNA分子が転写されている事が明らかとなった。最近の研究から、これらのRNA分子は、RNA分子のままで、生体内で様々な機能を有している事が明らかになりつつある。マイクロRNAは、機能性RNA分類される19~22塩基の低分子RNAである。このRNA分子は、最終的に1本鎖のRNA分子として機能し、機能性RNA(蛋白コード・非蛋白コード遺伝子)の翻訳阻害や直接分解によりその発現制御をしている。 ポストゲノムシークエンス時代において、生物学の理解には、蛋白コード遺伝子のみならず、非蛋白コード遺伝子を加味した、機能性RNAを包括的に解析しる事が不可欠である。細胞内の複雑な機能性RNAネットワークの理解が必要である。 頭頸部扁平上皮癌の臨床において、再発症例や遠隔転移を有する症例に対する治療は困難を極める。最近の分子標的治療薬も、これら症例については、効果は限定的であり、有効な新規治療法の開発が望まれている。平成30年度は、頭頸部扁平上皮癌の臨床検体から、「治療抵抗性頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイル」をRNAシークエンスにより作成し、癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA(miR-145-5p、miR-145-3p、miR-150-5p、miR-150-3p)を見出した。マイクロRNAの機能解析から、これらマイクロRNAが癌抑制型マイクロRNAである事を証明した。更に、miR-145-3pが制御する分子経路を探索し、細胞外マトリックスを制御する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、治療抵抗性を獲得した頭頸部扁平上皮癌、臨床検体より、RNAシークエンスを行い、全ゲノムを網羅した、「治療抵抗性頭頚部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイル」を作成した。本研究は、未治療頭頸部扁平上皮癌と比較して、治療抵抗性・頭頚部扁平上皮癌において発現異常を認めるマイクロRNAに着目して、その機能解析と、それらマイクロRNAが制御する分子経路の探索を行う事が可能であった。 マイクロRNAの生合成において、pre-miRNAから2本鎖のmiRNA duplexが形成される。そして、guide strand がRISCタンパクに取り込まれ標的遺伝子の制御を行う。これに対して、反対鎖のpassenger strandは、分解され機能を有しないとされている。これに対して、平成30年度の研究から、miR-145-3pおよびmiR-150-3p(passenger strand)が癌抑制型マイクロRNAとして機能している事を証明した。頭頸部扁平上皮癌において、miR-145-3pおよびmiR-150-5pが、癌抑制型miRNAである事を初めて報告した。本研究で作成した、「治療抵抗性頭頸部扁平上皮癌・機能性RNA発現プロファイル」が、今後の解析に有効である事が判明した事は、今後の解析に向けて大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本解析の基盤となる「治療抵抗性頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイル」の中にも、これまでpassenger strandと考えられていたマイクロRNAが多数含まれており、これらマイクロRNAの解析は新規性と独自性があると考える。 「治療抵抗性頭頸部扁平上皮癌・機能性RNA発現プロファイル」を有している事は研究を進めるに際して、大きなアドバンテージである。更に、The Cancer Genome Atlas (TCGA)のデータベースを活用する事で、マイクロRNAが制御する分子経路に含まれる遺伝子について、臨床病理学的解析が可能となった。 これら優位性を活かして、治療抵抗性に関わる分子および分子経路の探索を継続する。
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Causes of Carryover |
マイクロRNAの機能解析が順調に進んだため、解析に使用する試薬や消耗品について、当初予想したより節約可能であった。平成30年度の研究で作成したマイクロRNA発現プロファイルに基づいて、癌組織で発現が変化しているマイクロRNAの機能解析を行う。研究予算は、核酸試薬や機能解析に使用する試薬、消耗品の購入に充てる。また、マイクロRNAが制御する標的分子の探索のため、網羅的遺伝子発現解析(アレイ解析)を計画している。研究予算は、この解析費用に使用する。
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Research Products
(3 results)