2019 Fiscal Year Research-status Report
機能性RNA解析に基づく頭頚部扁平上皮癌治療抵抗性獲得機序の探索
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18K09338
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 機能性RNA / 頭頸部扁平上皮癌 / miR-99a-5p / miR-99a-3p / 癌抑制型マイクロRNA / プロファイル / 癌遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルに基づき、癌部で発現抑制されているマイクロRNAに着目し、マイクロRNAの癌抑制機能と、マイクロRNAが制御する癌促進型遺伝子の探索を継続している。一般的には、マイクロRNAは、その生合成過程において2本鎖のマイクロRNA前駆体を形成する。マイクロRNA前駆体(2本鎖RNA)の中で、guide鎖のみが機能し、他方(passenger鎖)は機能しないとされていた。これまでの我々のマイクロRNA研究において、幾つかのpassenger鎖マイクロRNA(miR-150-3p、miR-145-3p、miR-199a-5p、miR-199b-5p)は、頭頸部扁平上皮癌細胞内で癌抑制機能を有する事を証明してきた。また、これらマイクロRNAが制御する標的分子(SPOCK1: OS; p = 0.0003、MYO1B: OS; p = 0.0452、ITGA3: OS; p = 0.0048)は、癌促進機能を有すると共に、その発現は頭頸部扁平上皮癌患者の予後予測マーカーである事を見出した。最近の研究から、これら標的分子の発現異常は、様々な薬剤に対する治療抵抗性獲得に関与している事が報告されている。これらの事から、passenger鎖を加味した癌抑制型マイクロRNA同定と、マイクロRNAが制御する標的分子の探索は、頭頸部扁平上皮癌の治療抵抗性の分子機序の解明に重要と考える。本年度の解析は、頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルから、癌組織で発現が抑制されている、miR-99a-5p (guide strand)およびmiR-99a-3p(passenger strand)に着目し、機能解析を施行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miR-99a-5p (guide strand)およびmiR-99a-3p (passenger strand)の発現を、頭頸部扁平上皮癌臨床検体で検証した結果、両マイクロRNAは、癌部で有意に発現抑制されている事が示された(p < 0.0001)。また、The Cancer Genome Atlas(TCGA)データベースを用いたコホート解析から、これらマイクロRNAの発現抑制は、頭頸部扁平上皮癌患者の予後に影響を与えている事が明らかになった(OS; miR-99a-5p: p = 0.0008, OS; miR-99a-3p: p = 0.0012)。次に、これらマイクロRNAを頭頸部扁平上皮癌細胞株、FaDuおよびSAS に核酸導入し、癌抑制効果を検討した。その結果、両マイクロRNAは、癌細胞の遊走能や浸潤能を顕著に抑制した。これらの事から、miR-99a-5pおよびmiR-99a-3pは、頭頸部扁平上皮癌において、癌抑制型マイクロRNAとして機能している事が明らかとなった。miR-99a-3p(passenger strand)が頭頸部扁平上皮癌の分子病理に関与している事は初めての報告である。更に、頭頸部扁平上皮癌において、miR-99a-3pが制御する癌促進型遺伝子の探索を行った。その結果、32種類の遺伝子がmiR-99a-3pの標的分子である事が明らかとなった。これら遺伝子について、TCGAデータベース解析を施行した結果、以下の10遺伝子が、頭頸部扁平上皮癌患者の予後に関与している事が明らかとなった(STAMBP, TIMP4, TMEM14C, CANX, SUV420H1, HSP90B1, PDIA3, MTHFD2, BCAT1, SLC22A15)。
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Strategy for Future Research Activity |
(癌抑制型マイクロRNAが制御する癌促進型遺伝子の機能解析) 本解析で明らかとなった、miR-99a-3pが制御する、頭頸部扁平上皮癌・癌促進型遺伝子についてより詳細な機能解析を行う。機能解析から、癌促進機能を有する遺伝子については、ゲノム編集技術を用いて、遺伝子をノックダウンした細胞を作製する。作製した細胞株を用いて、抗癌剤や分子標的薬の感受性を、in vitro において解析する。
(頭頸部扁平上皮癌・癌抑制型マイクロRNAの同定と標的分子の探索) Cetuximab/radiation 治療後に再発した患者臨床検体から、次世代シークエンサーを用いて、マイクロRNA発現プロファイルを作成した。このプロファイル中には、未治療の頭頸部扁平上皮癌組織と比較して、Cetuximab/radiation 治療後の組織で、発現変動しているマイクロRNAが存在している。この中には、これまで機能解析が成されていない、passenger strand由来のマイクロRNAが多数含まれていた。これらマイクロRNAについて、miR-99a-3p同様に解析を行い、マイクロRNAの癌抑制機能と、マイクロRNAが制御する癌促進型遺伝子の探索を行う。癌促進機能を有する遺伝子については、頭頸部扁平上皮癌患者の臨床病理学的な解析と、遺伝子を改変した癌細胞株の作製を行う。これら細胞株を用いて、抗癌剤や分子標的薬の感受性を、in vitro において解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、データベースによる解析を優先させたため、実験に使用する試薬・消耗品の使用が少なかったため。
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Research Products
(5 results)