2018 Fiscal Year Research-status Report
免疫異常と基質タンパク構造変異からみたMRONJ発症の解明と発症前診断の検討
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18K09721
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山近 英樹 岡山大学, 大学病院, 講師 (10294422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤関連顎骨壊死 / 骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)の分子病態メカニズムを「免疫機構の異常」と「骨および結合組織の基質タンパク質の構造変化」より解明することを目的として、さらにその解明からMRONJの発症前診断の可能性および新規治療法を検証しようとするものである。 本年度は、おもにビスフォスフォネート、テリパラチドおよびカテプシンKインヒビターによる「免疫機構の異常」と「骨および結合組織の基質タンパク質の構造変化」に取り組み、とりわけ、これらの薬剤により、新規形成骨中の石灰化度、結晶化度、アパタイトにおけるCO3 2-置換度、プロテオグリカン量、コラーゲンの質についてラマン分光顕微鏡を用いた解析をおこなった。具体的には、ラット下顎骨に人工的に貫通孔を形成し孔周囲から新生骨を再生させたところ、ビスフォスフォネート処理群では新生骨中の石灰化度は上昇するが、基質タンパクであるI型コラーゲンの架橋構造について言えば、劣化(老化)しているものと思われた。一方カテプシンKインヒビター処理群では、結晶化度に異常を示しアパタイトにおけるCO3 2-置換度が上昇するものと思われた。 またマウスを用いた研究によりビスフォスフォネート処理群において大腿骨骨髄でのT細胞の数が減少し、血清中のインターロイキン2,インターロイキン7,インターロイキン15に変動を認めた。一方テリパラチド処理群では、ガンマデルタT細胞が末梢血中で増加する可能性が示唆された。 これらの結果は、上記のような骨修飾薬により「骨および結合組織の基質タンパク質の構造変化」が引き起こされることを証明しており、さらに「免疫機構に変動」があることを証明していると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(A)骨修飾薬がT細胞に与える影響の解明、(B)骨修飾薬がT細胞以外の血球系細胞に与える影響の解明、(C)T細胞の活性化とそれによる骨の構造変化の解明、 (D)MRONJマウスを用いた骨壊死部の治療に関する研究 および(E)ラマン分光顕微鏡など新規手法による正常骨およびMRONJの骨質解析および発症前診断に関する研究を4年間で遂行するものである。 このうち、平成30年度は(A),(B),(E)を中心に取り組み(A),(B)については、前述のようにビスフォスフォネート処理群とテリパラチド処理群でT細胞およびその他血球系細胞へ動態が異なることを示すことができた。これらの結果を踏まえて現在は、培養血球系細胞に対するこれらに薬剤処理の影響を検証中である。 また(E)についても前述のようにラマン分光顕微鏡による骨質解析を軌道に乗せることに成功しビスフォスフォネート処理により、骨の基質タンパクであるI型コラーゲンについては、その架橋構造に劣化所見を示すことができた。今後は同ラマン分光解析による骨質解析を発展され、MRONJを「骨および結合組織の基質タンパク質の構造変化」より解明する予定である。 これらより、平成30年度は当初の予定どおり順調に研究が進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の成果を踏まえて本研究の(A)骨修飾薬がT細胞に与える影響の解明、(B)骨修飾薬がT細胞以外の血球系細胞に与える影響の解明、(C)T細胞の活性化とそれによる骨の構造変化の解明、 (D)MRONJマウスを用いた骨壊死部の治療に関する研究 および(E)ラマン分光顕微鏡など新規手法による正常骨およびMRONJの骨質解析および発症前診断に関する研究それぞれを発展させていく。 前述のように、(A) (B) および(E)に進捗を認めたことより、これらを踏まえ(C)T細胞の活性化とそれによる骨の構造変化の解明を進めていく。このため平成31年度(令和元年度)にはまずT細胞欠如マウス、T細胞およびB細胞欠如マウスに骨修飾薬の投与を行い、血球系細胞に与えるこれら骨修飾薬の影響をFACSにて解明する。方法:T細胞欠如マウスとしてはNudeマウスを、T細胞およびB細胞欠如マウスとしてはScidマウスを用いる。コントロールとしてはBALB/cマウスを用いる。それぞれの群を卵巣摘出群(OVX群)、無処置群の二分け(Nude-OVX, Nude-normal, Scid-OVX, Scid-normal, BALB/c-OVX, BALB/c-normal 計6群)、それぞれにビスフォスフォネート、テリパラチド、カテプシンKインヒビターを4週投与する。骨評価は、HE,マイクロCTに加えてラマン分光顕微鏡による骨質解析をおこなう。血球系の細胞の変動については、末梢血、脾臓、胸腺を摘出し、anti-CD4, anti-CD8, anti-CD45, anti-CD3, anti-CD19, anti-CD49抗体によるFACSをおこない解析を行う。 また次年度以降については、(D)MRONJマウスを用いた骨壊死部の治療に関する研究を、モデルマウスを作成して遂行していく予定である。
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Research Products
(7 results)