2018 Fiscal Year Research-status Report
脳腸ペプチドによるストレス起因性顎口腔機能異常の改善に対する効果の検証
Project/Area Number |
18K09838
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
八木 孝和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (10346166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮脇 正一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (80295807)
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10452947)
齋藤 充 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (50347770)
安宅 弘司 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任講師 (30563358)
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
前田 綾 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10457666)
菅 真有 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (50779973)
小柳 宏太郎 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (20806476)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋電図 / CRF / 橋結合腕傍核 |
Outline of Annual Research Achievements |
顎口腔パラファンクション(PF),特にブラキシズムは睡眠・摂食障害の誘因となりQOLの低下を招くことが知られており,PFの発現機構の解明と抑制・予防法の開発は喫緊の課題である。PFの発生にストレスが関与していることを暗示する臨床データは散見されるが,基礎的な根拠は示されていない。そこで本研究は,ストレス物質の脳内投与により生じる顎口腔系の筋活動等の変化を解析し,PFの発現機構やストレスとの関連について解明することを目的とした。 【方法】ラットおよびモルモットに咬筋筋電図と脳波の記録用電極,及び,側脳室内へ薬液を注入するためのカニュ-レを留置した。7日の回復期間後,自由行動下でストレス因子であるCRFを脳内投与し, その影響を分析した。また,CRF投与3時間後に脳を灌流固定し凍結薄切切片を作製した。 【結果】明期にCRFを投与すると,咬筋活動は投与直後から3~6時間にわたり著しく低下し,その後は逆に異常亢進の傾向を示し,投与後24時間の総筋活動量としては増大した。また,対照(人工脳脊髄液投与)群では明瞭だった咬筋活動量の日内変動が,CRF投与群では不明瞭になった。更に,CRF投与により咬筋活動が低下している時間帯に一致して,脳波の徐波成分が増加し,通常の明期・暗期でみられる各周波数成分構成比の周期的変動が認められなくなり,正常な睡眠-覚醒リズムが乱されることが示唆された。CRF投与後に灌流固定した脳の薄切標本に抗c-Fos抗体による免疫染色を施すと,三叉神経中脳路核の近傍にある橋結合腕傍核(PN)で反応がみられた。 【考察】CRF投与によって,一時的に正常な睡眠-覚醒リズムが乱れ,咀嚼筋活動も低下するが,その後睡眠-覚醒リズムは正常に近いものへ回復していくものの,咀嚼筋活動は異常亢進する二相性の変化を示し,初期の応答の発現にはPNの関与が想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、おおむね期待しているデータが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,確立している行動観察実験システムを用いて,脳腸ペプチドの脳内投与を行ったラットに対して,咬筋筋電図・脳波・心拍数を電気生理学的手法で記録し,SBの発現と覚醒時間の延長について解析してきた。また,記録後,動物を4%パラフォルムアルデヒドで灌流固定して,脳内でのc-Fos発現程度を精査している。行動実験の結果は個体差が大きく,外部環境のわずかな変化も応答に影響を及ぼすため,今後は,上記の実験における投与のタイミングや環境周囲の防音なども検討しつつ,追加のデータ収集を行う予定である。また,自律神経活動の分析や物理的な身体拘束等による外部環境からのストレス負荷実験を試みる予定である。次に,保存した脳組織を用い,三叉神経領域や延髄弧束核領域で脳腸ペプチド投与によるc-Fosと脳腸ペプチド受容体の発現部位を探索する。この結果,c-Fosと脳腸ペプチド受容体の両方を発現しているニューロン群がストレス応答に関わっている可能性が高いと考えられる場合は,当該領域を対象により詳細に解析を進める。この段階で,脳腸ペプチド投与に対して強い反応を示す脳領域をある程度特定できれば,ストレス反応を抑制すると考えられているオキシトシン等を脳内投与し,応答に変化が出るか確認する。さらに,脳内活動電位(マルチユニットもしくはローカルフィールドポテンシャル)を記録して,各脳領域のニューロン活動の記録と解析を試みる予定である。
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