2019 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism of hypoxia-induced modification of cytokine cascade in periodontal ligament cells
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18K09846
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 低酸素暴露 / 歯根膜細胞株 / mRNA発現 / DNAメチル化 / 脱メチル化 / HIF-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
研究方法:1) 低酸素暴露したヒト乳歯由来歯根膜細胞でのmRNA発現解析 ヒト乳歯由来歯根膜細胞株SH9を使用して、通常条件(5% CO2, 95% air, 37℃)または低酸素条件(5% O2, 5% CO2, 37℃)で24時間培養しmRNAの抽出を行った。逆転写後にcDNAを抽出し、PrimerArrayにより半網羅的にmRNA発現の解析を行った。2) ゲノムDNAの調製およびDNAメチル化解析 SH9を使用して、通常条件(5% CO2, 95% air, 37℃)または低酸素条件( 5% O2, 5% CO2, 37℃)で24時間培養したのちゲノムDNAを回収した。回収したゲノムDNAについて、イルミナ社ビーズアレイを用いてDNAメチル化解析を行った。 成果:1) 低酸素培養がmRNA発現に及ぼす影響 PrimerArrayによるmRNA発現解析で、通常培養と比較した場合に低酸素培養した細胞で10倍以上の発現促進を認めた遺伝子は10個であった。2) 低酸素培養がDNAメチル化に及ぼす影響 低酸素培養条件でmRNAの発現促進を認めた遺伝子のうちの6個を含めて、イルミナ社ビーズアレイを用いて網羅的にDNAメチル化解析を行った。その結果、6個中3個の遺伝子についてはDNAの脱メチル化傾向が認められたが,残る3個についてはDNAのメチル化に変化はみられなかった。ビーズアレイ上にメチル化部位の配列が設定されているその他の遺伝子については、現在解析を継続している。3) 5% O2で24時間の培養という比較的マイルドな低酸素培養条件でも、複数の遺伝子のmRNA発現が促進されており、それらのうち約半数でゲノムDNAの脱メチル化が生じていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞培養ならびに低酸素暴露の手技が確立しており、また基本的な分析技術も有していることからおおむね順調である。DNAメチル化への低酸素暴露の影響の網羅的解析については,ビーズアレイによる委託解析によって計画通りに実施することができた。新規の知見が得られているがデータ量が膨大なため,令和2年度も継続して解析結果を整理し,全体的なサイトカインカスケードの特徴を掴む必要があると考えている。一方、令和元年度の日本大学でのリアルタイムPCR分析について、これまで使用してきた装置の故障で分析が滞っている。令和2年度は早期の対応が必要になっており,学内で利用可能な装置があるかどうかの確認,ならびに他大学への試料送付と共同研究の申込みなどが必要と考え,現在それらの問い合わせを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト乳歯由来歯根膜細胞の低酸素暴露への応答について、刺激強度の観点からすると、令和元年度に実施した5% O2暴露と、それ以前に行った<1% O2暴露では細胞内サイトカインカスケードに違いが生じる可能性が考えられるが、その点の詳細は明らかになっていない。また、暴露時間が異なっている場合にも、サイトカインカスケードが異なった応答を示す可能性がある。これらの問いについては、令和元年度後半に実施した低酸素暴露実験で、<1% O2暴露に加えて5% O2暴露を行ったことから、まずビーズアレイの解析結果を比較することで全体像を把握できると考えている。低酸素暴露時間の短縮に対する応答についても、同様の比較を今後進めていく。令和2年度はこれらの実験で得られた知見をもとに、歯根膜細胞での遺伝子発現がどのように影響を受けているかについて、おもにリアルタイムPCR法を用いて詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
理由:物品費について、必要としていた数量よりも少ない数量で結果を出すことができた。そのため購入に必要な費用が予定より少なくて済んだ。 使用計画:次年度について、繰越金と令和2年度助成金を合わせて、おもに物品費と論文投稿費用、英文校正費用に充てることとする。おおむね予定していた成果が得られていることから、特段の計画変更は行わずに研究を実施する。
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