2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the accumulation of 90Sr emitted from Fukushima No.1 Nuclear Power Plant accident into human milk teeth
Project/Area Number |
18K09896
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
井上 一彦 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (30649570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 一郎 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 上席主任研究官 (50311395)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916) [Withdrawn]
佐藤 勉 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター, 環境感染制御研究室, 研究員(移行) (60130671)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 学内教授 (90350587) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 放射性核種 / ストロンチウム90 / 乳歯 / 被災牛 / 電子スピン共鳴法(ESR) / チェルノブイリ原発事故 / セシウム137,134 |
Outline of Annual Research Achievements |
地上核実験等や東京電力福島第一原発事故で環境に放出された放射性核種の人体への移行を調べるために,日本全国より乳歯を集め,乳歯中での放射性核種(90Sr,238Pu, 239+240Pu)の蓄積を調査している(生年1999~2011年,約2200本,2022年3月31日現在).これまでの調査では,乳歯中の238Pu,239+240Puはすべての試料において0.0004mBq/g・Ca以下の検出限界未満であったので,本研究からは90Srのみの定量とした.関東地方{(千葉,埼玉,東京,神奈川),生年;2002-2004年,113本},東北地方{(宮城,山形,秋田,福島),生年;2002-2004年,40本},大阪府(生年;2002-2004年,48本),愛知県(生年;2002 -2004年,31本),熊本県(生年;2002-2004年,83本),南九州地方{(沖縄県,鹿児島県),生年;2002-2004年,42本},東京都(生年;2002年,80本)の乳歯7試料群について,90Srの測定を実施した.その結果,関東地方群(6.9mBq/Ca,2011年3月11日時点),熊本県(5.7mBq/Ca,同),東京都(4.9mBq/Ca,同)の試料群から90Srが検出された.他の群は,いずれも検出限界以下であった.今年度は,昨年に引き続きコロナ禍の影響で,乳歯収集がさらに滞った.定量値が基準に達するように収集できなかったので,次年度に収集状況を改善し(特に被災地)今までのデータとの比較検討を実施する.前年度報告で,これらの試料群から微量のCs-137,Cs-134が蓄積していたことが示唆されているので,同時進行で被災牛の歯と骨のS-90,Cs-137,Cs-134の定量を実施している.これらは原発事故の影響が認められているので,ヒト乳歯との歯との比較を実施して事故との関連をさらに詳細に調査している.また,被災牛のESR定量を実施し歯から信号が検出されているので,事故の影響を簡便に調査できる方法についても検討を行っているので,ヒト乳歯や永久歯での被ばくの影響をESR定量で調査している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍長期化により,昨年度よりさらに研究機会が制約されたり,研究発表機会が激減している.日本全国より乳歯を集め,乳歯中での90Srの蓄積を調査しているが,乳歯収集は本年度,約100本であった(約2200本,2022年3月31日現在).震災より12年たち歯科医院からの収集が激減している.その状況下での結果を報告する.各試料群からは,2011年3月11日時点で生年;2002-2004年の関東地方群(6.9mBq/Ca),熊本県(5.7mBq/Ca),生年;2002年の東京都(4.9mBq/Ca)および生年;2004年の東京都の試料群から,7.6mBq/Caの90Srが検出されている.2019年以降,事故が起きたとき形成期であった生年が,2011年の乳歯が収集されるので,原発事故由来のSr-90の蓄積する可能性のある試料群の収集測定を実施する.また,ヒト乳歯から微量のCs-137,Cs-134が検出されたので,原発事故との関連を精査していく予定である.同時に福島第一原発事故の放出された放射性核種の動物への移行を調査するために,被災牛の放射能汚染を測定するプロジェクトが進行している.被災地域(大熊牧場と小丸牧場)で,数年間被災し死亡した牛の歯と骨を収集している.そして,事故由来の放射性核種(Sr-90,Cs-134,137,Pu-238.239+240)を測定し調査している.臼歯では小丸牧場:Cs-137:855,Cs-134;791(Bq/kg),Sr-90;1000mBq/Ca,大熊牧場;Cs-137: 60.6±1.7,Cs-134:60.7(Bq/kg),Sr-90;170mBq/Caであった.下顎骨では小丸牧場:Cs-137: 1174,Cs-134:880(Bq/kg),Sr-90;900 mBq/Ca,大熊牧場:Cs-137: 26.6,Cs-134:<58.3(Bq/kg),Sr-90;140 mBq/Caであった.プルトニウムは,どちらの牧場の牛からも臼歯,下顎骨とも検出されなかった.土壌や空間線量の高い小丸牧場の被災牛の方が歯,骨ともSr-90,Cs-137,Cs-134の蓄積量が多いことが確認されている.
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Strategy for Future Research Activity |
福島第一原発事故の放射性核種の総放出量は,チェルノブイリ原発事故に比較すると1/7であるが,後者に比べ特徴的にはCs-134.137が多く,Sr-90,Pu238.239+240は少ない.土壌中や食品中の放射性核種も,事故から11年経過して減衰してきていることが示唆され,また,市場に出ている食品も基準値;100Bq/Kgをほとんど下回るか,この値を逸脱した食品が出回ることは皆無である.被災地域でも食品中から高濃度の放射性核種を,人体に取り入れる内部被ばくは少ない.しかし,特にSr-90は歯,骨に代謝されずに永久的に存在することや,原発事故時石灰化形成期であった2011年生まれ以降の人乳歯には,今回の事故由来のSr-90が蓄積される可能性はあるので,乳歯収集,定量は継続していく.また,ヒト乳歯から微量のCs-137,Cs-134が検出されたので,原発事故との関連を精査していく予定である.避難困難地域は汚染がひどく,人が住めない状態が半永久的に続く.その場所に存在する放射性核種の生物の移行を調査することは重要である.被災牛の調査プロジェクトで約160頭の被災牛の骨,歯の放射性核種の定量は不可欠である.そこで,被災牛2頭の歯と骨の放射性核種の定量を実施した.その結果,事故由来の放射性核種(Sr-90,Cs-137,134)が検出されている.今後,試料数を増やして精査する予定である.また,被ばくした歯のエナメル質のラジカルを測定する方法(電子スピン共鳴,ESR)は,簡易で新たな放射性被ばくの指標となりうるが,その定量の安定性には問題は多い.その精度を高め,化学分析値と比較することにより,実用化に向けての研究を推進していく.また,被災牛の歯,骨から事故由来のCS-137,134が検出された.Cs-137,134は筋肉等に蓄積されて代謝され蓄積しないということが定説であった.この結果は新しい知見であるので,人乳歯でもCs-134,137の定量調査を実施する.
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Causes of Carryover |
長期のコロナ禍により,研究制約ならびに研究発表機会も学会中止により激減している.本研究は,事故により放射性核種の人体への移行を調査するのが目的であるが,事故から11年以上経過し,放射性核種は減衰され,食品への蓄積も十分コントロールされているのでヒト乳歯へのストロンチウム90への移行はほとんど少なくなってきていることが示唆されている.また,時間の経過とともに乳歯収集量が少なくなり,消費の見込み違いも生じた.但し,日本における人,乳歯,永久歯の放射性核種の事故後の人体への影響を調査するための人の歯を使用した放射線核種の定量は継続していく.また,ヒト乳歯から微量のCs-137,Cs-134が検出されたので,原発事故との関連を食品や土壌等の汚染状況を鑑みながら,精査していく予定である.さらに,福島第一原発事故で放出された放射性核種の生物の移行を調査することは,被災牛の調査プロジェクトで約160頭の牛の骨,歯で十分に代用可能である(大量被ばくしているヒトは皆無である).被災牛からは事故由来の放射性核種(Sr-90,Cs-137,134)が検出され,その正確な定量に費用をかけたので,旅費や物品費との差が生じ,余剰部分が生じた.これは,次年度で消費する予定である.次年度は,コロナ禍の影響で,研究進展に関して顕著な影響がみられたので,影響が少ないとみられる被災牛のデータを収集するなりして研究を推進していく.
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[Presentation] Interlaboratory comparison of EPR tooth enamel dosimetry with investigations of the dose responses of the standard samples2022
Author(s)
Toyoda, S., Inoue, K., Yamaguchi, I., Hoshi, M., Hirota, S., Oka, T., Shimazaki, T., Mizuno, H., Tani, A., Yasuda, H., Gonzales, C., Okutsu, K., Takahashi, A., Tanaka, N., Todaka, A.
Organizer
EPRBioDose2022
Int'l Joint Research