2019 Fiscal Year Research-status Report
酸化脂質を用いた新しい根面齲蝕の予防方法の開発とフッ化物併用療法への応用
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18K09926
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 貴俊 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10313529)
下田 信治 鶴見大学, 歯学部, 教授 (30139620)
岡田 彩子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (60515584)
広田 一男 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (60563848)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 学内教授 (90350587)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化LDL / 根面う蝕 / コレステロール / HDL / LDL / 石灰化 / カルシウム / リン酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
歯の根面はエナメル質よりも臨界pHが高く、酸により容易に脱灰される。高齢者は歯周病により根面が露出している割合が高く、根面う蝕に罹患するリスクを抱えている。しかし、実際には根面う蝕の発症は限定的で、その進行も慢性的である。そのため、血漿成分である歯肉溝滲出液中に何らかの抗う蝕性物質が存在することが予想されていた。近年、その物質の候補として酸化脂質が考えられるようになった。本研究では酸化脂質として生活習慣病の発症に関連する酸化LDLに着目し、歯肉溝滲出液中の酸化LDLの再石灰化能を測定した。試験には酸化LDLのほかに対照として各種タンパク質と糖質を用いた。試験溶液にさまざまな濃度のカルシウムイオンおよびリン酸イオン溶液を滴下して波長650nmで吸光度を測定した。また、その生成物を透過型電子顕微鏡で観察した。 その結果、酸化LDLは低カルシウム濃度の溶液環境下で対照物質溶液と比較して最大で4.0倍以上の不定形石灰沈着物質を形成した。滴下するカルシウム濃度を上昇させると結晶質のリン酸カルシウムの沈殿を生じることが明らかになった。 酸化LDLの石灰化誘導能について対照物質と比較すると、最も石灰化誘導能が高い酸化LDLに次いでLDLが比較的高い石灰化誘導能を示した。HDLとアルブミンは低い石灰化誘導能を示した。LPSとポリエチレンイミンは石灰化を抑制した。酸化LDL溶液にカルシウムイオンおよびリン酸イオンが存在し、さらにフッ化物イオンが共存する場合は、より低いカルシウムイオン濃度で不定形物質から結晶質リン酸カルシウムへの転換が生じた。 酸化LDL溶液中で生成したリン酸カルシウムの吸光度は他の脂質、タンパク質、糖質中で生成したリン酸カルシウムの吸光度と比較して最も高いことから、酸化LDLが最も石灰化誘導能が高いことがわかった。フッ化物の併用が再石灰化に有効であることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、酸化LDL溶液中で生成したリン酸カルシウムの吸光度は他の脂質、タンパク質、糖質中で生成したリン酸カルシウムの吸光度と比較して最も高いことから、酸化LDLが最も石灰化誘導能が高いことがわかった。フッ化物の併用が再石灰化に有効であることも示された。透過型電子顕微鏡による観察で、滴下するカルシウム濃度を上昇させると不定形石灰沈着物が結晶質のリン酸カルシウムに転換することが明らかになった。このことから、酸化LDLとフッ化物の有効利用により、根面う蝕の進行を抑制できることが予想された。 LDLと酸化LDLは歯肉溝滲出液に含まれていることから、根面う蝕の進行抑制と同時に、歯周病の原因の一つである歯石の形成が促進される可能性も考えられる。また、LDLと酸化LDLは動脈硬化など生活習慣病の原因とされているが、本研究により動脈硬化発症のメカニズムとして酸化LDLの強い石灰化誘導能が関与していることが考えられた。 以上のように、根面う蝕だけでなく動脈硬化などの生活習慣病と歯周病(歯石)に共通する石灰化メカニズムが存在することが示されたので、今後の国民の健康づくりに役立つ情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において酸化LDLに強い石灰化誘導能があることを実証した。これまで用いられているフッ化物との併用が可能であることも示された。LDLと酸化LDLは動脈硬化の原因物質である。アテローム性動脈硬化のメカニズムはこれまで酸化LDLを貪食するマクロファージと考えられてきた。しかし、本研究によりそれだけでなく酸化LDLの強い石灰化誘導能が動脈硬化の原因である可能性を示した。どの生活習慣病と歯周病(歯石)、根面う蝕の発症の有無に共通する石灰化メカニズムが存在することが示されたので、今後の国民の健康づくりに役立つ結論を得ることができた。
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Causes of Carryover |
酸化LDL溶液中で生成したリン酸カルシウムの吸光度は他の脂質、タンパク質、糖質中で生成したリン酸カルシウムの吸光度と比較して最も高いことから、酸化LDLが最も石灰化誘導能が高いことがわかった。本来は、酸化LDLだけでなくさまざまな酸化脂質を購入して実験を行う予定だったが、そこまで実験が進行せず、次年度に持ち越しとなった。また、新型コロナウイルス感染症(Covid19)の影響で発表予定の学会も中止となり旅費等を次年度に持ち越すことになった。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Precede-Proceed model based questionnaire and saliva tests for oral health checkup in adult.2019
Author(s)
Nomura Y , Matsuyama T , Fukai K , Okada A , Ida M , Yamauchi N , Hanamura H , Yabuki Y , Watanabe K , Sugawara M , Imanishi Y , Koizumi N , Murano Y , Nishiyama A , Fukukawa Y , Otsuka R , Hanada N
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Journal Title
Journal of oral science
Volume: 61
Pages: 544-548
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Smoking and periodontal microorganisms.2019
Author(s)
Hanioka T , Morita M , Yamamoto T , Inagaki K , Wang PL , Ito H , Morozumi T , Takeshita T , Suzuki N , Shigeishi H , Sugiyama M , Ohta K , Nagao T , Hanada N , Ojima M , Ogawa H
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Journal Title
The Japanese dental science review
Volume: 55
Pages: 88-94
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Consistency of supplied food and dentition status of the elderly in residential care homes.2019
Author(s)
Nomura Y , Okada A , Kakuta E , Otsuka R , Sogabe K , Yamane K , Yamamoto T , Shigeta Y , Shigemoto S , Ogawa T , Hanada N
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Journal Title
BMC Oral Health
Volume: 19
Pages: 74
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Prevalence of Dental Caries in 5- and 6-Year-Old Myanmar Children.2019
Author(s)
Nomura Y , Maung K , Kay Khine EM , Sint KM , Lin MP , Win Myint MK , Aung T , Sogabe K , Otsuka R , Okada A , Kakuta E , Wint WY , Uraguchi M , Hasegawa R , Hanada N
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Journal Title
International journal of dentistry
Volume: 2019
Pages: 5948379
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Corrigendum to "Prevalence of Dental Caries in 5- and 6-Year-Old Myanmar Children".2019
Author(s)
Nomura Y , Maung K , Kay Khine EM , Myo Sint K , Phyo Lin M , Win Myint MK , Aung T , Sogabe K , Otsuka R , Okada A , Kakuta E , Yee Wint W , Uraguchi M , Hasegawa R , Hanada N
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Journal Title
International journal of dentistry
Volume: 2019
Pages: 6986412
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Feasibility Controlling Hemoglobin A1c by Oral Hygiene Improvement: A Pilot Study.2019
Author(s)
Okada A , Nomura Y , Miyanohara M , Uraguchi M , Tadokoro H , Nagai T , Fujii Y , Miura M , Kawachi R , Matsui T , Takayanagi K , Yamamoto M , Yamamoto T , Hanada N
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Journal Title
Online Journal of Dentistry & Oral Health (OJDOH)
Volume: April-2019
Pages: 8-15
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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