2018 Fiscal Year Research-status Report
舌下粘膜組織に存在する免疫細胞クラスターの口腔免疫応答における役割の解明
Project/Area Number |
18K09930
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
楠本 豊 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (40252689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸村 道夫 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (30314321)
片岡 宏介 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (50283792)
守屋 大樹 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (30759759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 舌下免疫 / 樹状細胞 / クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、舌下面に存在する樹状細胞(DC)のクラスターに着目して、舌下局所の免疫、さらには全身免疫系における役割について理解し、より効果的なワクチンや舌下免疫療法につなげることを目的としている。そのために免疫応答の初期誘導に重要な働きを担うDCの分布を詳細に解析することが重要であると考え、昨年度はまず、定常状態のマウス口腔内におけるDCの分布に関し、申請時に持っていた結果に加え、さらに詳細な検討を行った。その結果、口腔内にDCは一様に存在するわけではなく、分布に偏りがあることを示した。また、口腔内でも部位特異的な分布があり、上皮層の形態などでDCの分布に特徴が有ることを示した。すなわち、舌表面は上皮層が分厚く、矢状乳頭などの存在から、DCは深部に存在し、その樹状突起が著しく長いこと、頬粘膜では表皮突起が長く、この突起の基底層にDCが存在すること、また、舌下面では、本研究対象のDCのクラスターが存在することなどを、蛍光タンパク質をDCが発現するマウスを用いて示した。これは、口腔粘膜を含むII型粘膜上皮におけるDCの分布に関する新しく有用な情報を与えると考える。本内容は、第60回歯科基礎医学会総会で発表し、論文投稿予定である。 これに加え、本科研のテーマである特異抗原の舌下投与によるDCクラスターの形成について検討を行っている。既に、抗原としてDNFBならびに卵白アルブミン(OVA)を舌下領域に投与する系で、効率よくDCクラスターを形成する投与スケジュールを確立し、「現在までの進捗状況」に記載する結果を得ている。この結果の一部は、第61回歯科基礎医学会で発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の蛍光タンパク質発現マウスを用い、リンパ系細胞の分布、機能を可視化し、経時的、動的に変化を捉える独自の解析手法を用いて、舌下面に存在するDCクラスターに注目し、口腔粘膜の免疫応答を解析する。実験計画に掲げた項目に沿って、その進捗状況を記す。全ての項目で研究が進んでいる。 1.クラスターのT細胞ニッチとしての働きと、2.クラスターDCのT細胞活性化の可視化検出:抗原である卵白アルブミン(OVA)の舌下投与で、顕著にクラスターを形成する投与法を確認している。抗原投与により、定常状態に比べより多くのT細胞の集積がクラスターに観察され、T細胞ニッチとしての役割を強く示唆している。そこで、OVA特異的T細胞受容体を持つOT-IIマウスのCD4+T細胞のクラスターへの集積を現在検討している。 3.クラスターDCのサブセットの同定とT細胞との相互作用と、4.クラスターへの免疫細胞集積の分子メカニズムの検討:CD11c+細胞が、紫色の光照射で緑から赤に変色する蛍光タンパク質KikGRを発現するCD11c-KikGRマウスを用いて、クラスターDCと孤立DCを分離する方法を確立し、予備実験だが、クラスターDCのサブセットを同定した。また、分離したDCからmRNAを抽出し、T細胞との相互作用や、集積に関わる分子のmRNAレベルでの発現解析を始めている。 5.舌下免疫応答の全身免疫の波及効果:OVAを投与した舌下面から所属リンパ節へのDCの移動をKikGRマウスで検出し、その主たるサブセットの同定も行った。また、このリンパ節内でのOT-IIマウスCD4+T細胞の増殖も検出している。 6.免疫寛容時のクラスターの役割と制御性T細胞:制御性T細胞がヒトCD2を発現するマウスとCD11c-YFPマウスの掛け合わせを始めている。このマウス作成は計画書にはないが、目的の解析に有用と考えられたため開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、申請書に記載した実験計画を遂行する。ただ、申請書の記載とは手法を変えて検討していく項目もある。まず、我々は、CD11c陽性細胞が、紫色の光照射で緑から赤に変色する色変換蛍光タンパク質KikGRを発現するCD11c-KikGRマウスを用い、クラスターのみに光照射することで、クラスターDCと孤立DCをそれぞれ赤と緑の蛍光色素を発する細胞に分離することに成功している。この手法を応用することとした。すなわち、「4.クラスターへの免疫細胞集積の分子メカニズムの検討」では、当初、組織切片からマイクロダイセクターでクラスターを採取し、mRNAを抽出することを予定しているが、これに加え、CD11c-KikGRマウスを用いてクラスターDCを分離して、mRNAを回収することも試みている。この様な2つの手法により、より正確な情報を得られると考えている。また、「3.クラスターDCと孤立DCのDCサブセットの同定と、各DCサブセットのT細胞との相互作用の検出」でも、この手法を用いることによりクラスターDCと孤立DCのDCサブセットの違いを検討できる。さらに、制御性T細胞がヒトCD2を発現するマウスとCD11c-YFPマウスを掛け合わせることで得られるマウスは、舌下免疫療法による免疫寛容の解析に有用になると考えられ、申請時には記載しなかったが取り組んでいる。この様に、いくつかの新しい手法を取り入れて目的に到達したいと考えている。 本研究の課題として、申請時に記載しなかったが、舌下免疫療法による免疫寛容の解析において、一度I型アレルギー反応を起こしたマウスでの解析が必要になると考える。そこで、われわれの研究室でI型アレルギー疾患のマウスモデルを作成することを試みる。既にOVAをアレルゲンとしたI型アレルギー疾患のマウスモデルの報告が存在するので、これを参考に系の開発を行う予定である。 この様に、必要に応じてより適した実験系を用い、研究を遂行していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、透明化組織作製用試薬、細胞分離用の試薬、組織染色用試薬の購入を予定していたが、本科学研究費での購入を次年度に繰り越した試薬がある。本年度はこれらの試薬や分子生物学的な手法を用いた解析も控えており、次年度使用額も含めて消耗品購入が必要となると考えている。具体的には、クラスターDCと孤立DCの細胞分離を行い、抗体染色による細胞の同定、mRNAの発現の際の検討、さらには、OT-IIマウスより磁気細胞分離により単離したOVA特異的T細胞のマウス移入実験、透明化組織観察などを積極的に行うことで、次年度使用額を含め、本年度に有効な使用を予定している。
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Research Products
(1 results)