2018 Fiscal Year Research-status Report
災害医療・健康危機管理における法的および制度的枠組みに関する国際比較研究
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18K09967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨尾 淳 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10569510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 智晶 青山学院大学, 法学部, 准教授 (20554463)
佐藤 元 国立保健医療科学院, その他部局等, 部長 (70272424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 健康危機管理 / 国際比較 / 法令 / 制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、先進主要国である米国、英国、フランス、ドイツの4か国について、災害対応、健康危機管理を規定する法令や指針、制度、組織等について情報収集・整理し、各国の法令・制度の歴史的経緯、各国の政治体制、医療制度等を考慮して、それぞれの共通点と相違点について分析を行った。いずれの国も比較的近年、テロや感染症パンデミック、大規模災害を契機に災害・健康危機管理に関する法制度的整備がすすめられてきているが、個別の災害(ハザード)を対象としたものではなく、あらゆる危機に対応可能な、オールハザードアプローチに基づいた制度が構築されていた。 英国は内閣府の民間緊急事態事務局(CCS)が緊急事態管理を主導するが、保健医療分野では公衆衛生庁(PHE)、国民保健サービス(NHS)がEmergency Preparedness, Resilience and Response(EPRR)プログラムを実施し、リスク評価、事業継続計画などを通じて体制整備を行う。フランスは、診療所・病院・公衆衛生の3部門による地域圏内の調整を重視したplan ORSAN(健康危機における保健システムの対応体制)のもと、緊急事態の規模・種類、地域の対応能力に応じて県-地域圏-管区-国と段階的に医療支援が行われる。 米国、ドイツは連邦制であり州等の裁量が大きいが、米国は、連邦緊急事態管理庁(FEMA)による国家事態管理システム(NIMS)の整備、および保健省事前準備・対応担当次官補局(ASPR)を中心とした様々な支援体制、ドイツは内務省連邦住民保護・防災支援庁(BBK)による関係組織の調整と計画、危機管理の教育・研究・訓練の実施など、いずれも国家としての調整・支援を拡充する傾向がみられた。また、4か国とも、広域および多機関連携による事前準備を重視した体制整備が行われていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の予定は、主要国の関連法令、制度等の収集・整理であったが、主要国(米国、英国、フランス、ドイツ)の災害医療・健康危機管理に関する法令、制度、組織に関する資料を、体系的に収集し、法令の種別、規定項目に応じて整理することができた。また、米国、英国、フランスでは政府等の危機管理担当者へのヒアリングを行い、危機管理体制の現状について意見交換を行うとともに、今後の研究協力関係を構築することができた。以上から、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)以降の本研究の主目的は、国際保健規則(IHR)、仙台防災枠組の要件等に基づいた評価指標の構築、評価指標を用いた政策の評価(Policy Surveillanceの実施)、対策強化と国際協調に向けた法的、制度的枠組みのあり方についての提言であり、これに向けた推進方策は以下の通りである。1)1年目に整理した各国の法令とIHR、仙台防災枠組などの関連資料のレビューを行い、 必要な要件を「評価指標案」として作成する、2)評価指標の策定にあたっては、電子的デルファイ法(e-Delphi法)などの手法を検討する、3)その上で、評価項目をもとに、主要国の法令の評価・比較分析を行う。また、分析結果等について、日本語・英語により情報提供を行う専用ウェブサイトの構築準備を行う。 期間中、東京オリンピック・パラリンピック等の大規模イベントが開催されるが、これに伴う健康危機管理上の新たな取り組みや見直しも予想される。各国の法制度を継続的に把握し、主要な結果を確実にフォローアップすることが重要となる。国内外の危機管理関係者との協力関係を構築・維持しながら研究を推進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、法令や指針等の翻訳等を研究者が自ら行ったため謝金が発生しなかったことによる。次年度は、資料の量も増加するため、資料収集および整理、翻訳等に対する謝金として使用するほか、学術論文等の成果物の校正費用、海外の協力機関(世界保健機関(WHO)、米国政府機関(FEMA、CDC、保健省等))の訪問旅費に使用する計画である。
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