2020 Fiscal Year Research-status Report
災害医療・健康危機管理における法的および制度的枠組みに関する国際比較研究
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18K09967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨尾 淳 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10569510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 智晶 青山学院大学, 法学部, 准教授 (20554463) [Withdrawn]
佐藤 元 国立保健医療科学院, その他部局等, 部長 (70272424)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 健康危機管理 / 災害 / 法令 / 制度 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対して、わが国はじめ主要先進国では様々な対策が講じられたことから、今年度は各国の新型コロナウイルス感染症対応に関連した法令・制度を中心に情報収集を行った。 特に、米国、欧州諸国および東アジアの国・地域とわが国の健康危機への対応に関連した、組織体制、リスク評価、状況把握、検査体制の確保、医療提供体制の確保、医療資源の動員、私権制限等について、既存の法令・制度とその課題、パンデミックを受けた法令・制度の改正の状況などについて情報収集を行い継続的なフォローアップを実施している。 わが国では感染症法および新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいた対策がとられているが、医療提供体制の確保や国と地方の権限のあり方など、多くの限界が明らかになってきている。これに対して、諸外国では、感染症など個別の事象に限定しない、いわゆる「オールハザード・アプローチ」に基づいた危機管理体制がとられているケースも多いことから、諸外国の制度の有効性の評価とともに必要な法的制度的基盤のあり方について分析を計画している。 また、特に既存の医療資源を上回る傷病者が発生した場合の資源配分のあり方として、米国の一部の州や地方では、緊急時に優先すべき標準診療(Crisis Standards of Careと呼ばれる)が事前に定められており、新型コロナウイルス感染症対応でも適用された事例の報告があった。大規模災害時にも必要とされる考え方であり、倫理的な議論も含めて、わが国におけるこのような制度の適用の可能性について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、海外の情報収集が十分に実施できなかったほか、予定されていた学術会議が延期となった。 また、同流行に伴い健康危機管理にかかる制度、法令等の修正が各国で行われており、最新の正確な情報の確認およびこれまでに収集した情報の更新に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、各国の災害・健康危機管理関連法令の評価指標を確定し、政策の評価(Policy Surveillanceの実施)の実施、対策強化と国際協調に向けた法的、制度的枠組みのあり方についての提言であり、これに向けた推進方策は以下の通りである。1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を踏まえた評価指標の確定、2)評価項目をもとに、主要国の法令の評価・比較分析を行う。なお、2)については、主要国のCOVID-19対応において関係法令・制度がどのように機能し、どのような課題が明らかになったか、またどのような法制度の変化がみられたかについてケーススタディ等を実施する。 分析結果等について、日本語・英語により情報提供を行うウェブサイトを作成し、研究期間終了後も継続して知見の収集・提供が可能となる仕組みを構築する。 なお、研究結果については学術論文、学会発表等を通じて情報公開を行う予定である。 本研究は、国内外の危機管理関係者との協力関係を構築・維持しながら研究を推進することが重要であるため、オンライン会議等を開催し最新かつ正確な情報収集に努める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、海外機関の訪問および発表予定の国際学会が新型コロナウイルス感染症の影響により中止または延期となったためである。次年度は、ウェブサイトの構築、オンライン会議の開催、学術論文等の研究成果物の作成に使用する計画である。
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[Journal Article] わが国における健康危機管理の実務の現状と課題:公衆衛生モニタリング・レポート委員会活動報告2020
Author(s)
古屋好美, 中瀬克己, 武村真治, 長谷川学, 冨尾淳, 片岡克己, 佐藤修一, 永田高志, 久保達彦, 小坂健, 寺谷俊康, 和田耕治, 久保慶祐, 神原咲子
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Journal Title
日本公衆衛生雑誌
Volume: 67
Pages: 493-500
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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