2019 Fiscal Year Research-status Report
歯周病の病態を反映する唾液中microRNAの探索
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18K10026
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤森 浩平 岡山大学, 大学病院, 医員 (70813624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 学 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40157904)
米田 俊樹 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60756071)
江國 大輔 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70346443)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | microRNA / バイオマーカー / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は多くの国民が罹患する歯科疾患のひとつであり、発症の予防と早期診断が重要であるとされる。近年では歯周病を反映するバイオマーカーの探索に関する研究が盛んに行われているが、歯肉などの歯周組織を用いた研究報告は多いものの、唾液を用いた報告は少ない。また、唾液の採取による生体への負担は非常に軽度であり簡便である。体液中に存在するバイオマーカーの一種としてmicroRNAは注目されており、歯周病についても、歯周組織由来のmicroRNAが関与している可能性が示唆されているが、唾液中のmicroRNAについては不明な部分が多い。唾液中において、microRNAはエキソソームのような小胞に包含されることで分解酵素によって分解されず、安定した状態で存在している。我々は歯周病を反映するバイオマーカーとして、唾液エキソソーム中のmicroRNAの発現について着目した。 当院の患者を対象として実施した2018年度の研究では、特定のmicroRNA(hsa-miR-381-3p)が歯周病群において有意に発現が上昇し、歯周ポケットの深さと正の相関関係があることを明らかにした。この研究成果の一部をまとめたものは学術誌に掲載されるに至った。invivoの実験に限定せず、培養細胞を用いて検証を行うことでmiRNAの発現や炎症の発生機序についての知見がさらに深まることが考えられる。今後はヒト歯周組織や免疫細胞を用いたinvitroでの実験を行うことを予定している。本年度では歯周病菌の一種であるP.gingivalisをヒト骨芽細胞や免疫細胞に導入し、microRNAの発現量の変化を確認した。その結果、hsa-miR-381-3pの発現量は骨芽細胞においては変化を認めなかったものの、免疫細胞(THP-1)においては発現量が上昇していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度では、歯周病を反映するバイオマーカーとしてのmicroRNAの探索を、当院の患者を対象としたinvivoの実験で行った。その結果、患者より採取した唾液サンプル中の遺伝子発現において2倍以上の増加または0.5倍以下の減少が確認できたmicroRNA4種類について2次分析を行ったところ、歯周病群で有意に増加しているmicroRNA(hsa-miR-381-3p)を特定することができた。 2019年度では各種のヒト培養細胞を用いたinvitroでの実験を開始した。生きた細胞・細菌を用いて複数の条件下で同時並行で飼育を行うという研究デザイン上、各種細胞や細菌の生育状況の調整にやや時間を要したものの、順調に実験を行うことができた。また、おおむね当初の予想通りの結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の追加実験においては、2018年度で特定できたmicroRNA(hsa-miR-381-3p)が細胞内でどのような役割を果たしているのかについて引き続き明らかにしていく。 ヒト歯周組織由来の各種培養細胞に歯周病菌の導入を行い、細胞内でのmRNAの発現や炎症性サイトカインの分泌の変化について確認を行うことを計画している。 特徴的な結果が得られた場合や時間的な余裕が生じた場合は、当初の予定に加えてさらに追加の実験も行う。具体的には、歯周病菌を各種ヒト、炎症が生じている細胞へのmiRNAの添加や、inhibitor(阻害物質)を添加した場合の炎症状態の変化を確認することを計画している。
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Causes of Carryover |
2018年度の研究経費は105767円の残金となり、すべて研究にかかる経費として適切に使用した。試薬の購入は数万円、数十万円単位と高額であることが多く、端 数で生じた残金として妥当な金額であると考える。次年度以降の研究経費は各種培養細胞や試薬の購入に使用する予定である。本実験は生きた細胞を扱う実験デ ザインのため、飼育上のトラブルに備える必要もある。2018年度の残金は次年度以降の実験と解析の費用に充てるため、繰り越して使用する予定である。
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