2019 Fiscal Year Research-status Report
化学的アプローチによる死後経過時間推定の新たな指標の開発応用
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18K10117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
神 繁樹 北海道大学, 医学研究院, 博士研究員 (60531845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
的場 光太郎 北海道大学, 医学研究院, 講師 (00466450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 死後変化 / チオ硫酸塩 / LC-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の当初計画では昨年度に様々な死後経過時間の死体の体液サンプル中の低分子化合物を網羅的に分析し、経過時間(腐敗度)により量的変化が見られる物質について本年度は多量の検体の分析を行うことであった。量的変化のあった酪酸については昨年度中に分析を行ったが、本年度は同様に死後変化が報告されているチオ硫酸塩についての分析を行った。チオ硫酸塩は硫化水素中毒のマーカーとして知られているが、硫化水素中毒死以外の事例において死後変化があるか確認した。チオ硫酸塩の測定は高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いたが、現在報告されているLC-MS測定法には欠点があるため、先ずはその欠点を解消すべく測定法の改良を行った。それは検体の前処理において新たな処理を加えることで達成された。 新たな分析法を用いて死因が硫化水素中毒死以外の症例から腐敗群17検体(PMI 3 day以上,最大120 day)非腐敗群16検体(PMI 2.5 day以内)の血液中のチオ硫酸塩濃度を測定した。腐敗群では非腐敗群の約160倍(平均値)の濃度のチオ硫酸塩が検出された。同様に腐敗群17検体(PMI 6 day以上,最大95 day)非腐敗群17検体(PMI 2.5 day以内)の尿中のチオ硫酸塩濃度を測定した。尿において、腐敗群は非腐敗群に対して18倍の濃度が検出された。血液に関して腐敗群の値が非腐敗群の最大値を下回る例は見られず、尿では腐敗群の値が非腐敗群の最大値を下回る例が3例あった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りの展開で研究は進んでいるものと考えている。今回の結果では症例数が少ないため、引き続き検体を収集し、死後経過状況などのプロフィールとの関連を解析する必要があると感じている。さらに腐敗群では未だ調べられていない化合物があり、今後はそれらについても検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
腐敗群で顕著に増加している他の化合物について同定を行い、定量測定法を検討する。今後はそれらを含めて多くの症例について測定を行い、死後変化に関する解析を行う。
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Causes of Carryover |
試薬類に関して、海外輸入品のものがあり期間内に納品できなかった。 次年度初めには納品される予定。
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