2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性腫瘍の家系員発症予防のための医療者間連携による効果的な家族支援に関する研究
Project/Area Number |
18K10271
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
笠城 典子 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60185741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 康江 鳥取大学, 医学部, 教授 (10346348)
難波 栄二 鳥取大学, 研究推進機構, 教授 (40237631)
岡崎 哲也 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30465299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝性腫瘍症候群 / 遺伝カウンセリング / 遺伝学的検査 / 家族への思い |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性腫瘍症候群に罹患した患者・家族は「がん」と「遺伝」の両方の精神的苦痛、身体的な負荷、経済的な問題などが生じてくる。患者・家族の考え方、価値観、家族への思いは多様で、ゲノム情報が血縁者の発症予防、早期発見・早期治療につながらない可能性があるが、遺伝専門職が少ない地域においては、遺伝子診療部門と各医療施設が連携して、長期的に患者・家族支援を行う必要がある。本研究は、山陰地域における遺伝性腫瘍に関する看護職の認識および患者・家族への対応を明らかにし、クライエントの患者や家族に対する思いを考慮した遺伝性腫瘍症候群の家系員発症予防のための医療者間連携による効果的な家族支援を明らかにすることを目的としている。 本年度はコンパニオン診断および遺伝性腫瘍症候群を含むゲノム医療・遺伝医療に関連して受診したクライエント・家族を対象に、受診までの経過、準備状況等の情報収集および遺伝カウンセリングで提供された情報の理解、家族への思い・説明、満足感等について質問紙調査を実施する。さらに遺伝学的検査を受け、診断告知された対象者に対して、検査についての思い、期待、結果についての思い、結果による治療薬選択への影響について、家族への思い等を明らかにするために質問紙調査を実施するための準備を行っている。 遺伝性腫瘍のat risk者であるクライエントの定期的なサーベイランス、遺伝カウンセリングさらに発症前診断の 自己決定支援および検査実施時期について考察し、学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
がんゲノム医療が急速に進展し、治療薬選択のためのコンパニオン診断として遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子の遺伝学的検査が保険収載された。コンパニオン診断対象悪性腫瘍が拡大している。遺伝性腫瘍症候群の関連腫瘍の家族歴がない患者もコンパニオン診断を希望し、血縁者への影響について理解、認識するクライエントもいる。また、コンパニオン診断結果が治療薬選択に関係するため、病状によって、立場によって陽性・陰性どちらの結果になってもクライエントへ心理的影響を与え、影響も異なることが考えられる。したがって、遺伝性腫瘍症候群を含むゲノム医療・遺伝医療に関して、遺伝カウンセリングを受診したクライエント・家族を対象に、受診までの経過、準備状況等の情報収集および提供された情報の理解、結果に対する期待、家族への思い・説明、満足感等についての質問紙調査内容について、さらに遺伝学的検査を実施、診断説明を受けた対象者に対して、検査についての思い、結果についての思い・期待、家族への思い等を明らかにするための質問紙調査内容に関する検討が必要となり、準備が遅れた。さらに、新型コロナウイルス感染拡大および感染予防のために通常業務の対応に時間が必要になったこと、医療施設を受診する患者は減少したこと、患者および医療スタッフが過剰な緊張、ストレスを抱えていることもあり、調査実施は難しいと判断したことも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、以下の調査および心理テストについて鳥取大学医学部倫理審査承認後、実施する。①研究協力が得られたクライエント等を対象に、遺伝カウンセリング前後でPOMS2®日本語版成人用短縮版を用いて遺伝カウンセリングによる気分・感情の変化をみる。②対象者に対して遺伝カウンセリングの認識、準備状況等について質問紙調査を行い、遺伝カウンセリングを実施する。③遺伝カウンセリングの理解、思い、満足感、家族への説明・思いなどについて質問紙調査を行う(郵送にて回収)。④遺伝学的検査実施、診断告知を受けた対象者に対し、検査についての思いおよび期待、検査を決めたときの気持ち、家族への思い、家族へ検査結果を伝えるか、治療への思い・期待、医療者への期待・要望について質問紙調査を行う。⑤対象者の気分・感情の変化および収集した情報、質問紙調査等の結果を分析する。⑥山陰地域の看護職を対象に、遺伝性腫瘍症候群に関する相談経験の有無、遺伝学的検査に関する相談の有無、遺伝性腫瘍症候群の認識、遺伝カウンセリングおよび他科への紹介経験の有無、遺伝性腫瘍症候群患者・家族への対応、遺伝性腫瘍症候群が考えられる患者・家族への対応等について質問紙調査を実施し、分析、検討する。 得られた結果をもとにクライエントの心理的影響、家族関係、家族に対する思いを考慮した医療者間連携による効果的な家族支援モデルを作成する。家族支援モデルの作成を吹く研究成果を取りまとめ、成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度は鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科で、ゲノム医療・遺伝医療に関連して受診したクライエント・家族を対象に、気分・感情の変化測定、遺伝カウンセリングに関する認識、準備状況等の質問紙調査、遺伝カウンセリング後に内容理解、満足感、家族への思い、医療者への要望等の質問紙調査を行い、遺伝学的検査を実施した対象者に対し、検査および家族への思いについて質問紙調査を行い、さらに山陰地域の看護職を対象に質問紙調査を行う予定であった。新型コロナウイルス感染拡大のため調査が実施できなかったこと、および学術集会、セミナーがWEB開催となり旅費が必要なくなったため、次年度使用額が生じた。 令和3年度は鳥取大学医学部倫理審査に申請・承認後、当病院遺伝子診療科でゲノム医療・遺伝医療に関連して受診したクライエント・家族を対象に、気分・感情の変化測定、遺伝カウンセリングに関する認識、準備等の質問紙調査、遺伝カウンセリング後に内容理解、満足感、家族への思い、医療者への要望等の質問紙調査を行う。遺伝学的検査を実施した対象者に対し、検査および家族への思いについて質問紙調査する。山陰地域の看護職を対象に、遺伝性腫瘍症候群および遺伝学的検査に関する相談経験の有無、遺伝カウンセリングを含む他科紹介経験の有無、遺伝性腫瘍症候群患者・家族等への対応についての質問紙調査を実施する。
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Research Products
(1 results)