2018 Fiscal Year Research-status Report
助産ケアの実践知を生かす包括的な周産期遺伝看護ケアの協働モデルの構築
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18K10324
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 恵子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (30338206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 美穂 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 腫瘍診断・予防科, 研究員 (60347359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Shared Decision Making / 出生前診断 / 教育プログラム / 包括的ケアモデル / 遺伝看護 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国内外の文献および学会参加により、周産期遺伝看護の方法論および一般看護職(助産師)に対する遺伝看護学の教授法を探索した。 現在、NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)は胎児のトリソミー21と18、13が検査対象となっているが、偽陰性や対象以外の染色体異常や母体の悪性腫瘍罹患などの偶発的所見の発見といった問題がある。また、その他の数的異常や染色体の微細欠失といった構造異常、単一遺伝子病のスクリーニングも技術的には可能であり、検査の施行時期および施設を限定し、研究として開始される可能性も実際に出てきている。現在、無秩序に検査施設が増え、それらによる対応が迫られるなか、認定施設と対象疾患の拡大により、さらなる当事者の混乱を招く事態を念頭に置かねばならない。今後はスクリーニングではなく、より専門的な遺伝カウンセリングが求められる一方で、周産期を専門とする看護職(特に助産師)が医療チームの中で機能するために、遺伝学的知識を獲得し、意思決定支援、継続ケアの質の向上に取り組むことが喫緊に求められている。 海外においても、急速に拡大するゲノム医療へのニーズと実践に対応するためには、一部の専門家の対応では不十分であることが指摘されている。具体的には、専門看護師等のスペシャリストの教育に加えて、ジェネラルな看護職者が社会のニーズに対応できる知識・技術を獲得する必要性が認識されており、遺伝医療・遺伝看護に関する基礎教育における学習者の“誤認識”について問題視されていた。教育の方法論は、ストーリーやケーススタディを活用したインストラクションの重要性が示されている。具体的には学習者のニーズに合わせた学習を可能とする可能なWEBサイト、Facebook等のSNSを活用したリアルタイムなサポートシステムが取り入れられており、当該研究(国内の現任教育プログラム)の方向性に示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年4月現在、NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)は、日本医学会と日本産婦人科学会の指針により認定を受けて実施している施設(認定施設)および無認可施設で行われている。無認可施設は格安の検査費用で年齢制限がなく、最短で翌日採血可能、検査結果も1週間と早く、アクセスが容易なことから多くの利用が報告されている。しかし、陽性となった場合の対応は不可能なことが多く、当事者の混乱が指摘されている。現在、国内の関連学会がNIPTの提供体制を検討しており、認定施設基準の見直しおよび認定施設数が増加することが予測される。無認可施設でNIPT受検し陽性となった対象へのその後のサポートはもちろん、施設数の拡大や、検査がスクリーニングの枠組みを超えて対象疾患が拡大された際の当事者へのサポートに対し、助産師・看護職へのさらなる役割が期待され、効果的な遺伝看護教育方法の検討・開発が差し迫った課題であることが明らかとなった。今年度の情報収集から、現状に即したプログラム開発が急務であることが確認され、計画の見直しが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
周産期部門に勤務する看護職(特に妊娠中からの継続ケアを担う助産師)を対象とした教育プログラムを開発する。2019年度は、方法論の吟味とコンテンツの選定・作成を行う。また、コンテンツに必要とされる当事者の体験を集積することも検討している。
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Causes of Carryover |
本研究の目的は、出生前検査の受検を考慮する女性のための決定プロセスを、診療科看護職(助産師)とともに継続的に支えるケアモデルを構築することであるが、それは多職種連携を前提とし、現在既に潜在的に存在している助産実践の中の遺伝看護ケアを顕在化・明確化することを含んでいた。しかしながら、遺伝学的検査の精度その他の向上を前提とする今年度の周産期遺伝医療の大きな変化や動きにより、具体的なプログラム開発の方法論の検討が急がれることが国外の状況も踏まえ、明らかになった。現任教育プログラムは、対面での講義や演習を含み、シリーズ化することを考慮していたが、e-learningおよびweb上またはSNSでケア実践を支援する方法論も選択肢として検討することが重要視されたため、次年度以降の予算を多く確保することが必要となった。以上のことから、次年度使用額が生じている。
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