2020 Fiscal Year Research-status Report
助産ケアの実践知を生かす包括的な周産期遺伝看護ケアの協働モデルの構築
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18K10324
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 恵子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (30338206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 美穂 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 腫瘍診断・予防科, 研究員 (60347359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 出生前診断 / shared decision making / 助産師 / 包括的ケアモデル / 遺伝看護 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID19の感染拡大は、全国で妊娠前・周産期全般に関する医療・相談体制の変更をもたらしたことから、対面講義+演習の形式で開始していた当該教育プログラムは医療提供体制の維持を最優先とする医療機関でのパイロットスタディの実施を見合わせた。一方、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(厚生科学審議会科学技術部会,下)では、出生前検査に関する妊娠期の情報提供のあり方や相談支援体制が検討され、提供体制(施設)の変更および医療、行政、福祉の包括支援体制の中で看護職の役割も拡大することとなった。発端は、NIPT の実施件数の拡大と認可外施設のNIPTの商業的実施、対象疾患の範囲の拡大等において不十分な遺伝カウンセリング体制により複数の問題が惹起したことにある。そこで、前述の検査提供体制の変更を鑑み、NIPT実施の認可施設で妊娠初期の出生前検査の遺伝相談を担う認定遺伝カウンセラー3名より現在の支援体制に関してアンケート調査を実施し(2020.11)、必要とされるケアの方略への示唆を得た。概略は以下のとおりである。 ①県内に認可施設は3施設程度である、首都圏においても妊産婦の相談ニーズに応えられていない。検査を希望する妊婦の多くは認可施設で受検ができず、少数の認定遺伝カウンセラーが複数施設で横断的に役割をとる状況がある。 ②認可外施設で陽性の結果を提示された(郵送など)カップルがその後不十分な対応に困惑し,第三者施設に駆け込む状況がみられる(特に13・18・21番以外の常染色体トリソミーや性染色体等の検査を実施し陽性結果後の疾患の詳細な情報が得られず混乱する事例等)。 ③妊産婦が抱える不安は出生前検査以外に多岐にわたり、看護職(特に助産師は主に医療現場において)は相談に応じているが、出生前検査に関する支援体制の中で、遺伝診療部門の専門職との連携の実態は見出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID19の感染拡大により、遺伝診療部門の医療提供体制が縮小されたこと、NIPT認可施設の医療提供体制の維持が最優先事項となったことが当該研究の進捗に影響している。特に施設協力が得られにくい状況にあることは、予定されていたパイロットスタディの実施を見合わせることに繋がった。しかしながら、当該研究で取り扱う妊娠初期の出生前検査に関しては、別項で述べたとおり妊娠初期に最も実施件数の多いNIPTの認可外施設における相談事例のトラブルが多発し、結果としてその提供体制に大きな変革を伴うことが明らかになった。このことから、出生前検査の(相談)支援体制は、多職種を含めて包括的な-医療福祉を含めた一体的な支援体制の構築の中で検討することが喫緊の課題となった。看護学の基礎教育および現任教育において胎児の出生前診断および遺伝看護に関する内容が十分に含まれていないという現状もふまえ、地域・医療(診療科)の現場の看護職が当事者および当該課題に直接かかわる機会が増え、現状を“差し迫った問題”と認識せざるを得ない状況が漸増することが想定される。当該研究の課題として現場のニーズや看護支援の実態をふまえた検討事項を付加していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、妊娠初期の胎児の出生前検査の受検を考慮する女性の決定プロセスを看護職の継続ケアの質を向上させる方略を検討することである。2020年度は、周産期部門に勤務する看護職(特に妊娠中からの継続ケアを担う助産師)を対象とした教育プログラムを提供し評価することを当初計画していたが中断している。再開の方法を検討する中で、2021年度の出生前検査の提供体制(包括的支援)の大きな変更を鑑み、現状のNIPT認可施設(今後、認可施設が拡大し、NIPT認証拠点施設として連携施設をもつ)において妊娠・出産・育児期を継続的にサポートする看護職(遺伝診療部門・産科外来・NICU・産科病棟等)に対し、現状の体制と看護職の役割/課題について、実態調査を行う予定である。その後、調査対象との協働により、今後の変革を見据えた検査提供・相談体制について検討・実施予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で対象とする出生前検査はNIPTに留まらないが、NIPTに関わる課題が顕在化したことで、本邦における検査の提供及び相談支援体制が大きく変わることとなった。新型コロナウィルスの感染拡大の影響は否めないが、妊娠初期に胎児の出生前検査の受検を考慮する女性の決定プロセスを、遺伝医療専門職と診療科看護職が協働し継続的に支えるケアモデルの検討には、この変革に伴う現状をとらえ、対象および現場の看護職のニーズに合致したプログラムを考慮する必要がある。新型コロナウィルス感染予防の観点からもe-learning及びWEB上またはSNSでケア実践を支援する方法論の検討が必要となり、次年度の予算をより多く確保することが必要となった。現場のニーズ調査およびプログラムの作成のための関連職種との協働・プログラム配信/受信するためのWEB環境を整えるために予算を使用したいと考えている。
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