2018 Fiscal Year Research-status Report
生命を脅かす疾患に直面した患者のSDMを支える多職種協働意思決定支援モデルの構築
Project/Area Number |
18K10331
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
稲垣 範子 摂南大学, 看護学部, 助教 (90782714)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | shared decision making / 看護師参画 / 重症心不全 / inter-professional work |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生命を脅かす疾患に直面した患者のShared decision making(以下、SDMとする)を支える多職種協働意思決定支援モデルを構築することである。2018年度は文献レビューを実施し、多職種連携によるSDMの研究動向と課題を明らかにし、研究計画の焦点を絞り込んだ。 まず、生命を脅かす疾患に直面し、困難な意思決定が待ち受ける患者のなかでも、選択肢が複雑で、クリティカルケアを要することも多く、患者数が増加の一途をたどる重症心不全患者のSDMに焦点を当てることとした。 従来のSDMモデルでは、患者-医師の2者関係で定義されたものが多かったが、今日の医療現場では、複数の専門職間連携協働(inter-professional work: IPW)による医療の提供が増加している状況から、カナダの研究者らにより、Inter-professional SDMモデルが開発されている。Inter-professional SDMモデルでは、様々な職種が関わるなかで、患者の価値を明確化し、価値に沿った意思決定へと導くデシジョン・コーチとしての看護師の役割が示されているが、国内のSDMに関する研究のなかで、看護師の役割が示されたものは少ない。看護師が主体的に意思決定支援に参画することは、患者・家族の価値や意向に忠実に適合する質の高い意思決定の実現につながると考えられるため、対象を看護師に絞ることとした。 これらの文献レビューをもとに、第1段階では、重症心不全患者のSDMへの看護師参画の実態について明らかにし、第2段階では、看護師参画に影響する要因間の構造を明らかにして看護師参画モデルを作成し、第3段階で、多職種参画によるモデル案を構築するという一連の計画を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、文献レビューにより多職種連携によるSDMの研究動向と課題を明らかにした。当初の計画では、第1段階(2018年度):看護師・医師を対象とした質的調査を行い、患者と医療者の共有意思決定プロセスの現状と課題について分析する、第2段階(2019年度):患者のSDMを支える多職種協働意思決定支援に必要な要因を分析するために、看護師・医師への質問紙調査を実施するとの予定であったが、文献レビュー結果から、研究計画全体を再検討し、第1段階の質的研究実施に向けて準備を進めた。 第1段階の質的研究の調査対象として、SDMを支える多職種のなかでも、看護師に焦点を当てることとした。理由として、重症心不全患者の意思決定支援のために心不全チーム等の多職種での取り組みを推進している報告は散見しているが、医師・看護師以外に関わる職種は、施設による差が大きく、医師・看護師以外の職種特有の役割を見出すには数が少ないと考えられた。また、集中治療領域での意思決定支援に、多くの看護師が主体的に参加できていない現状報告があるが、看護師が主体的に意思決定支援に参画することは、患者・家族の価値や意向に忠実に適合する質の高い意思決定の実現につながると考えられるため、対象を看護師に絞ることとした。看護師のなかでも、急性・重症患者看護専門看護師が、重症心不全患者の価値を明確化し、多職種と協働して意思決定を支援した内容が報告されていることから、急性・重症患者看護専門看護師約10名を対象とした半構成的面接調査を計画した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、第1段階の質的調査として急性・重症患者看護専門看護師約10名を対象とした半構成的面接調査により、重症心不全患者の治療選択におけるSDMへの看護師参画の実態を明らかにする。分析方法としては、断片的なデータから現象の全体像を構造化する手法である質的統合法(KJ法)を用いる予定である。第1段階の結果をもとに、第2段階では、看護師参画に影響する要因間の構造を明らかにするために量的調査を実施し、それらの結果から看護師参画モデルを作成する。この看護師参画モデルを、他の専門職のSDM参画に応用させ、第3段階の多職種連携によるSDMモデルの構築へと発展させる。
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Causes of Carryover |
当初は2018年度に医師と看護師への質的調査を計画していたが、計画変更・延期したため、未使用額が生じた。 2019年度に延期した第1段階の質的研究では、急性・重症患者看護専門看護師への半構成的面接調査を予定しており、約10名をスノーボールサンプリングで募集する。候補となる各施設から1名の対象者の選定を考えているため、10施設への往復旅費が必要であり、また、面接調査への謝金も計上している。
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