2020 Fiscal Year Research-status Report
臨床現場と教育機関の融合に基づく新人助産師教育プログラムの構築にむけた基礎的研究
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18K10442
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
蛎崎 奈津子 岩手医科大学, 看護学部, 教授 (80322337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋子 岩手医科大学, 看護学部, 助教 (30805411)
遊田 由希子 (藤村) 岩手医科大学, 看護学部, 准教授 (90336438)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新人助産師教育 / 助産実践能力 / 満足度 / 課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床現場と教育機関の融合による新人助産師教育プログラムの作案を見据え、2020年度は周産期医療の集約化と産科病棟の混合化が顕著であるA県に対象を絞り、新卒1~2年目の助産師からみる新人助産師教育の現状と課題を明らかにする質問紙調査を実施した。分娩取扱医療機関のうち新人助産師の入職がない診療所を除いた11施設の看護部長宛に調査協力を依頼、6施設(54.5%)から協力意思確認を得、対象者に14部配布、12名から回答を得た(回収率85.7%)。 新人助産師教育については「担当者」「複数の助産師で育てる体制」「年間計画表に基づく育成」の面で体制が整備されていた。マタニティケアに関する実践力については「各期における正常経過」の自立度は高い傾向にあるが、「リスク判断」「異常との鑑別・対応」「妊婦健診(外来)」「育児期を見据えたケア」は低い傾向がみられた。教育の満足度については「やや満足している」40%、「どちらともいえない」「あまり満足していない」が同率25%と続いた。現在の気持ちでは「求められる能力と自分の能力のギャップに悩む」「対象にじっくり関われない」「やりがいを感じる」「助産師として働き続けたい」の順で回答が多かった。課題については実習の受入れや混合化により「助産業務の経験が限られる」とともに「自身の実践能力と求められる能力の差が大きい」「モチベーションが上がらない」が同率で回答が多かった。院外での教育として「開業助産師やベテラン助産師の技を学ぶ研修会」「シミュレーションを取り入れた研修会」「他施設の新人助産師が集い交流する機会」「他施設合同の新人助産師研修会」の順で回答が多かった。 新人助産師教育の体制は整備されている一方で、「新人助産師の実践能力と求められる能力との乖離」と少子化や混合化等による「助産業務の経験が限定的になること」に関連する課題が多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に実施した北海道・東北地方における分娩取扱医療機関を対象とした新人助産師教育に関する実態調査ならびに2019年度に実施した東北地方のA県内における新人助産師教育にあたる教育担当者を対象としたフォーカス・グループ・インタビュー調査の結果をもとに、2020年度は新人助産師教育を受ける立場にある新卒1~2年目の助産師を対象とした質問紙調査を実施した。新型コロナウィルス感染症蔓延の影響により、年度後半での調査実施となったこと、これまでの調査結果の学会公表が遅れたことから、上記の区分とした。一方、多くの学会がアーカイブ配信期間を有するWeb開催となったことにより、新人助産師教育の現状や課題に関する知見や助産実践能力の向上に向けた取り組みの実践例など貴重な情報を得る機会をもつことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは2020年度の実施した調査結果の詳細分析を進めるとともに、これまでの3つの調査結果から見いだされた知見を整理する。2018年度および2019年度の調査で把握できた各医療機関で独自に工夫している新人助産師教育の実践例や知見を地域内で共有する方策の検討や2020年度の調査結果を反映した職能団体を巻き込んだ地域特性を活かす要素を組み込むなど、臨床現場と教育機関の融合による施設を越えた新人助産師教育プログラムの作案を行っていく。さらにこれまで実施した調査結果の公表も進めていく。
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Causes of Carryover |
調査分析に係る人件費が発生しなかったことと、新型コロナウィルス感染症蔓延以前の計画での諸準備の一部(打ち合わせやプログラム立案に向けた情報収集等)が制限されたこと、加えて学会参加旅費がWeb開催のため不要となったことから差額が発生した。この残額は各医療機関で独自に工夫している新人助産師教育の実践例を共有するための印刷費用や成果発表ならびに他の先進事例や知見の情報収集のための学会参加に係る費用等で支出する。
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