2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のオーラルフレイル予防に資する口腔コグニサイズプログラムの開発と検証
Project/Area Number |
18K10515
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Research Institution | Ehime Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
江崎 ひろみ 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (90739400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 由紀子 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (10269847)
永井 さつき 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (30791652)
野村 美千江 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (50218369)
田中 昭子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (80274314)
長尾 奈美 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (50805918) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高齢者 / オーラルフレイル予防 / 咀嚼能力 / 最大舌圧 / コグニサイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オーラルフレイル予防と認知機能低下予防も期待できる口腔コグニサイズプログラムを開発し、口腔機能や認知機能への介入効果などプログラムの有効性を検証することである。 オーラルフレイル症状は自覚しにくいことから平成30年度はオーラルフレイル症状自覚と口腔機能の関連性を検討した。75歳以上では、最大舌圧値と自覚の程度との相関を認め、舌筋力の低い者ほどむせや飲み込みを意識し始めると推察された。そこで令和1年度では、機能低下を意識し始めた舌運動を中心に、コグニサイズの要素があり遊び感覚で行うプログラムの実践的介入を行った。 <令和1年度計画>目標1.高齢者が実施可能な口腔コグニサイズプログラムの構成要素と枠組みの妥当性を検討する。目標2.デイサービス利用者を対象に、口腔コグニサイズプログラムを実施しその効果を評価する。 <研究の成果>対象は、69~96歳の男女23名。2019年6月から6週間、週1~2回の頻度で介入した。プログラムは、左右逆の手の動き・指折り数唱とガム咀嚼・舌運動を組み合わせた。介入前後で口腔機能(水の嚥下量の変動係数、機能歯数、最大舌圧、口腔内水分量、咀嚼能力、舌・口唇の静的2点識別覚)と、手指の巧緻性、TDASによる認知機能の客観的評価と、インタビューにより継続参加した思いなど主観的評価によって、介入効果と介入方法の改善点の検討を行った。途中脱落者等を除く15名で介入前後比較の結果、舌と口唇の静的2点識別覚、口腔内水分量、最大舌圧に有意差を示し、唾液腺マッサージやガム咀嚼による唾液分泌促進、器具を用いた舌運動と舌ポンピング運動による舌筋力の向上、舌・口唇の知覚の向上が認められた。また、質的評価では、《他者の働きかけに応え行動する》方を巻き込み、コグニサイズの要素のあるプログラムにより《他者交流のなかで遊び感覚で楽しめる》ことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度6月から6週間介入後の機能評価までは進捗したが、6か月継続効果の評価は、新型コロナウイルス感染症対策のため口腔機能の測定が困難で、評価できなかった。 ①共同研究者と、超高齢者が実施可能か、コグニサイズ要素と口腔運動内容の妥当性を検討しプログラム案を作成した。スタッフには、口腔機能とプログラム内容の学習会を開催し、実施方法と期待する効果について共通理解を促した。6週間の介入は、3週間は研究者(看護師2名)、次の2週間はスタッフと研究協力者、以降はスタッフのみで行った。プログラム内容は、高齢者が実施可能なコグニサイズ(指折り数唱、左右逆の手指動作)と唾液腺マッサージ・ガム咀嚼・ペコパンダによる舌運動・舌ポンピング運動を組み合わせた。 ②参加者は23名、途中脱落(入院、退所)4名、測定拒否4名を除き15名で介入前後の機能測定を行った。介入前後で有意差を認めた口腔機能は、舌・口唇の静的2点識別覚、口腔内水分量、最大舌圧で、唾液腺マッサージやガム咀嚼による唾液分泌促進、器具を用いた舌運動と舌ポンピング運動による舌筋力の向上、舌・口唇の知覚の向上が認められた。 ③TDAS認知機能評価(正常6以下、予防域7~13、認知症疑い14以上)は、平均13.9±5.2で、介入前(予防域8名・認知症疑い6名)と介入後(正常2名・予防域7名・認知症疑い5名)に有意差は認められず、左右逆の手指動作・指折り数唱などのコグニサイズ要素の効果についてさらに検討が必要である。以上のことから、本プログラムは、認知症疑いのある高齢者が実施可能であり、口腔内乾燥予防、舌筋力低下を防ぐ介入効果が期待できると示唆された。 ④継続・断続参加別の主観的評価を質的分析した結果、《他者の働きかけに応え行動する》方を巻き込み、コグニサイズの要素のあるプログラムにより《他者交流のなかで遊び感覚で楽しめる》ことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、一施設のみの介入では一般化は難しく、より多くの被験者のデータを収集する必要がある。超高齢社会にあって、90歳以上の地域生活を送っている超高齢者の口腔機能の報告は少なく大変貴重なデータとなると考える。別途内諾を得ている高齢者福祉施設で同様の介入を行い、後期高齢者、超高齢者のデータ数を増やす計画である。また、継続効果の評価を行う計画がある。しかし、新型コロナウイルス感染予防のため、唾液や口腔内を測定する調査が困難であり高齢者施設での介入が行えない状況が続いている。令和2年度は新型コロナウイルス感染予防の現状を鑑み、令和1年度の介入結果から介入方法と介入効果について研究者間で協議を重ね、超高齢者や認知症疑いのある高齢者において実施可能なプログラムであることなど、一定の成果を得たものについて論文公表に取り組んでいく。さらに、協働した施設スタッフへのインタビューから後期高齢者、認知症疑いのある高齢者がプログラムを継続していくための課題と対応策について検討していく。
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Causes of Carryover |
被験者の脱落、機能測定拒否などがあり、当初の予定の被験者数に達していないこと、また、3月には、新型コロナウイルス感染対策から、6か月介入後の継続効果の機能測定ができていないことから、当初予定していた測定機器用のディスポ製品や咀嚼ガムといった高額な消耗品の購入を行っていない。測定には専門職として看護師の雇用も必要となるがこの費用も押さえられている。これらのことから次年度使用額が生じている。 新型コロナウイルス感染状況を鑑み、出来るだけ感染のリスクの低い測定機器を使用し、マスク、手袋、防護服等感染予防に必要な物品、消毒薬購入のための費用を次年度は追加し、継続効果判定の際に次年度使用額が必要である。
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