2018 Fiscal Year Research-status Report
被災直後の混乱期対応に有効な保健師の健康危機管理支援ツールと研修プログラムの開発
Project/Area Number |
18K10591
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
若杉 早苗 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (40718748)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然災害 / 2次救急病院の受け入れ態勢の実態 / 健康危機管理能力向上研修プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
保健師の健康危機管理能力向上プログラムの開発のために、行政機関から減災を推進するための2次救急体制の実態を調査する必要があった。このため本年度は、DMAT体制のある2箇所の災害拠点病院の医療従事者に対し、被災時の救急体制の実態についての講演会の開催に合わせて、医療従事者本人の危機管理の準備状況についての実態調査及び組織における管理体制の理解度についての無記名・自記式アンケート調査を行った。 調査の結果、2施設の職員計242名の協力をえて調査を実施した。所属機関の災害体制が整備されていると回答した者は、21.1%と有意に低く、災害対策がされていないという意識を持っているものが78.9%という結果であった。被災対応の経験の有無と各災害拠点病院内の組織の体制の準備状況を分析した結果、所属機関の準備状況11項目のうち「所属機関の災害対策マニュアルの理解」「災害時の連絡・指示系統の理解」の2項目において、有意な関連を認めた。11項目のうち、最も理解度が低かった項目は「災害時の医療面での備え」「災害活動に必要とされる医療職の必要数の算出」であった。また、医療従事者個人の危機管理体制の準備状況も低く、災害時の医療従事に関わる人員の想定が不十分であるという課題が明らかになった。自由記載の内容には、毎年行う防災訓練も全職員の実施が困難なこと、実際に震災が起きた時に、医療従事者個人として、家族を置き去りにして医療提供し続けられるか等、実際に想定していなかった状況を不安視する声もきかれた。組織体制だけでなく、家庭環境を含めた医療体制整備に必要な条件を整理すると共に、意識の徹底の難しさ等の実態が確認された。以上の結果から組織的な減災対策の整備が喫緊の課題であることが確認された。 大規模災害経験者の聞き取りから「行動と判断の思考過程」を体系化する研究はコード分析からカテゴリの抽出、体系化を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画にある実際に東日本大震災等で被災対応を経験した保健師の「行動と判断の思考過程」の分析は、逐語録のコード化及びカテゴリ化から体系化を進行中である。これらの結果の妥当性を確保するために、聞き取りを行った保健師に妥当性の確認をしていく必要がある。体系化が完成していないため、研究の進捗はやや遅れていると判断した。 減災行動を迅速に判断できる支援ツールの作成においては、支援ツールの精度を高めるために、課題である2次救急との連携を実践的なものにしていくために、2次救急病院等の医療体制の実態を確認した。このため、協力自治体(袋井市、掛川市、菊川市)の原案に加筆できていない状況にある。「支援ツール」の完成は2019年度であるため、大幅な遅れではないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
支援ツールの開発に関わる災害時における「保健師の行動と判断の思考過程」の体系化については、2019年度はインタビュー調査協力をいただいた保健師に、妥当性を確認してもらい、修正をし完成させる。 減災行動を迅速に判断できる支援ツールの作成においては、協力自治体(袋井市、掛川市、菊川市)の原案に本年度行った、2次救急医療体制の調査研究結果を加えること、協力自治体の自治体災害マニュアルとの整合性を図る。また、自治体の防災訓練等で実践をおこない、支援ツールの有効性を確認していく。 保健師が自律して必要な判断をしていくための技能研修プログラムについては、「保健師の行動と判断の思考過程」によって体系化された項目を参考に、研修プログラムを開発する。研修プログラムにおいて避難所運営訓練の内容を盛り込んだ構成を目指す。
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Causes of Carryover |
東日本大震災の被災対応を経験した保健師の聞き取り内容の分析が進行中であり、妥当性の聞き取り調査にいくことができなかったため、旅費の使用が少なかった。保健師の行動と判断の思考過程の体系化の遅れに伴い、支援ツールの作成に関する専門的知識の提供をも当初予定していた回数より少なく研究費の使用に至らなかった。 2019年度は妥当性の確認のための聞き取り調査及び、支援ツールの原案に2次救急医療体制の実情を加え、ツールの完成を目指すため、専門的知識の提供による研究費の適正な使用をおこなう。
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