2018 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアシステム深化に向けた住民を含む関係者の連携推進要素評価の単一尺度開発
Project/Area Number |
18K10604
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西出 りつ子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (50283544)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井村 香積 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (00362343)
畑下 博世 三重大学, 医学系研究科, 教授 (50290482)
林 智子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70324514)
河田 志帆 京都学園大学, 健康医療学部, 講師 (70610666)
谷村 晋 三重大学, 医学系研究科, 教授 (60325678)
水谷 真由美 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10756729)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地域連携 / 連携推進 / 地域包括ケア / 地域住民 / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な地域連携関係者の連携推進要素を評価する単一尺度の開発と結果を視覚化するレーダーチャートの考案である。平成30年度は、「地域ケア・連携・協働」の文献から地域ケアにおける「連携推進」の構成概念抽出と、地域の多様な連携関係者への面接調査から「よい連携」の要素抽出を目標とした。 まず、地域連携の評価尺度の再確認を行った。医中誌Web「地域・連携・評価・尺度」and検索により36件を抽出、尺度の信頼性・妥当性に言及しないものを除外した文献における7つの尺度について詳細に確認した。そのうち、5尺度は測定対象が多様な保健・医療・福祉専門職であり、3件は非専門職を含んでいた。しかし、これらでは在宅療養、退院支援、緩和ケア、看取りなど中重度の集中ケアを必要とする対象への医療と介護の包括的サービス提供のための連携であり、地域の自立した人々への疾病・介護予防もしくは健康増進のための連携は想定されていないことが確認できた。次に、概念分析の対象文献を決め、地域ケアの連携推進の概念分析を進めたが、地域に特徴的な構成概念とは言い難い結果であったため、分析精度を上げるべく本研究の着想に至った前段階の研究の再分析を行った。全国から選ばれた地域活動の中から他の地域に参考になると専門家から評価された好事例を掲載する報告書の中で特に質の高い11事例の記述から連携推進に関する事象をフレーズとして取り出し、質的帰納的に分析した。その結果、地域ケアに関わる人々の連携には4つの推進要素があり、時間的差異からケアシステムの形成期または展開期における要素であるとの知見を得、論文としてまとめた。地域ケアにおける連携推進の概念分析ではケアシステムの発展過程に注目すべきであり、面接調査の対象地域選定においても形成期、発展期、いずれかに偏らないよう意識する必要がある。現在、概念分析の対象文献の再抽出段階にある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多様な地域連携関係者の連携推進要素を評価する単一尺度の開発が本研究の目的の柱であるため、我々の考える「健康増進を含む地域ケアの連携推進を評価する尺度」が現存しないこと(計画立案時以降に発表されていないこと)の再確認を最初に行った。次に、当初の研究計画どおりに概念分析を実施したが、その分析結果に疑問をもったため、地域における連携に関連する各尺度における「連携」のとらえ方と評価指標の内容の比較、さらに本研究の前段階にあたる研究の質的データの再分析を実施した。これらのプロセスは当初の計画になかったが、本研究の質を向上させるためには必要不可欠な段階であると我々は判断した。追加したこれらの検討を通して、健康増進を含む地域ケアのための連携に関わるあらゆる関係者(各種専門職、事務職、住民)を調査対象に連携の推進状況(意識、知識、行動、結果)について評価可能な単一尺度の開発の必要性を再認識した。さらに、概念分析の質向上と適切な面接調査対象地域の選定に向けた知見を得ることができた。なお、質的データの再分析結果について学会発表し、論文として公表した。これら追加したプロセスに時間を要したため本研究の進度は遅れたが、研究計画の内容を変更するものではなく、次年度以降も当初計画した内容に副って順次進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの地域社会では、病院と在宅医療の連携、医療と福祉の連携、医療と産業保健の連携など、「集中ケアや療養生活の継続」のために、複数の組織間または複数の専門職間において連携が行われてきた。しかし、日本では世界に例をみない急激な高齢化に伴って地域包括ケアの重要性が意識されるようになり、健康課題をもつ人たちの本来の生活の場における生活継続に向け、住民を含む地域資源を活用した支援活動が増えてきた。さらに、疾病や介護の予防、健康増進といった「一次予防」の視点に立つ活動展開を図ることも意識されるようになってきた。しかし、この動きについて発表された論文は少なく、それらの活動における連携推進に焦点を絞った論文はさらに少ない。この状況下において、本研究を推進する上で以下の2つの大きな課題が研究初年度に浮上した。 (1)データベース検索した論文から地域ケアにおける連携推進の構成概念を抽出できるのか:構成概念は2者間連携や専門職間連携から脱却できるのか、連携全般に通用する構成概念のみではないか、医療現場ではなく地域に特化した連携推進の内容が抽出できるのか等 (2)面接対象の多様な連携関係者が「よい連携」を語ることができるのか:「よい連携」を意識または経験しているのか、地域住民が連携の脇役になっていないのか、一次予防の活動展開が地域保健行政の力に頼りすぎていないのか等
これらは概念分析を実施したからこそ浮かんだ課題であり、報告書を分析したからこそ抱いた疑問である。対応としては、前述したように、ケアシステムの発展過程に注目しながら概念分析を進めることと、形成期と発展期、いずれかのケアシステムが現在動いている地域両方を対象地区とする、または発展期のケアシステムのある地域において調査を実施して形成期のケアシステムを覚えている者を意識的に面接対象とすることであると考えている。
|
Causes of Carryover |
本研究の質向上に向けて計画していなかった研究プロセスを入れたたため、概念分析の終了と面接調査の実施を次年度計画に変更することとなり、調査関連の費用がそのまま次年度へ持ち越しとなった。使用内容の計画に変更はない。
|
Research Products
(2 results)