2018 Fiscal Year Research-status Report
中学校における武道が日本の伝統文化の継承に果たす教育的機能
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18K10818
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
北村 尚浩 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (70274868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前阪 茂樹 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (10209364)
中村 勇 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (70315448)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 伝統 / 文化 / 学習効果 / 武道 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,全国の中学校を対象として,体育の授業における武道の実施状況と教育内容,その効果について質問紙調査により明らかにすることが目的であった.とりわけ,学習指導要領により示された指導内容をどの程度指導し,生徒たちがどの程度習得できているのか,そして,武道の授業を通して「我が国固有の伝統と文化への理解を深める」ことを留意した指導内容,その他の種目と比較して生徒への学習効果の違いを明らかにすることを試みた. そのため,全国の分校を除く公立中学校から1,002校を無作為に抽出して2018年11月から2019年2月にかけて郵送法による質問紙調査を行った.調査内容は,学校の属性,武道授業の実施状況,武道の授業内容の習得状況,回答者の属性などである.調査への協力依頼を学校長,体育主任教員に宛てて行い各中学校任意の教員1名に回答を求めたところ420名から回答が得られた. 武道の実施状況として,扱っている種目は柔道が63.0%,剣道が31.7%,その他の種目が5.2%,指導形態としては男女共習で行なっている学校が60.9%,男女別習で行なっている学校が39.1%であったが,両方の形態を取り入れている学校も見られた.指導内容では,「技の名称や行い方」「基本となる技」や「健康・安全に配慮する」「健康・安全を確保する」など,安全に十分配慮しつつ基本的な技術指導に重点が置かれている様子が窺えた.一方で習得状況では,「習得できている」との回答が半数を超えたのは「健康・安全に配慮する」「健康・安全を確保する」の2項目のみであった. そして,「我が国固有の伝統と文化への理解を深める」ことを留意した指導内容についての自由回答を分析した結果からは,伝統や文化を教員がどのように捉えているのかが浮き彫りになった.また,学習効果の他種目との比較についても伝統文化の学習や礼儀作法などの習得が多く挙げられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国の公立中学校から無作為に抽出した1,002校を対象とした郵送法での質問紙調査により,420校(41.9%)の教員から回答を得ることができた.これは,同法による調査としては高い回収率と言える.また,どのような指導がなされておりどのような学習効果が得られているのか,という視点から武道の授業を通して「我が国固有の伝統と文化への理解を深める」ことを留意した指導内容とその他の種目と比較して生徒への学習効果の違いを尋ねた自由記述回答も高い回答率であり,十分なデータを収集することができ,国内外での学会において発表の準備を進めている. さらに,次年度に予定している生徒を対象として行う質問紙調査への協力の可否についても,108校から協力への同意が得られた.調査方法の性質上,サンプルの偏りは否めないものの一定数以上の規模での調査を実施できる可能性がある. 以上の点を鑑み,「(2)おおむね順調に進展している」と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は協力の得られた公立中学校の生徒を対象とした質問紙調査を行い,武道の学習効果としての日本の伝統文化に関する学習効果を明らかにすることを目的としている.体育の授業における他の実技種目との比較を通して,特に日本の伝統や文化に関する学習効果を明らかにする.さらに,前年度の教員対象の調査との比較・検討を行うことで,両者のギャップや教育内容による生徒の学習効果を明らかにすることができる. 前年度の教員調査の結果を踏まえ,武道種目・その他の体育種目の学習効果,特に伝統武道に関する効果を中心に質問内容を構成し質問調査を行う.配布回収は各協力校に依頼する.得られたデータは数値化し学習効果を従属変数として,武道種目とその他の体育種目との比較を行う.また,教員のデータと紐付けて,学習効果の規定要因を重回帰分析によって明らかにする.さらに,テキストマイニングによって類型化された教育内容による比較を行う,
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Causes of Carryover |
予定していた分析用のソフトウェアの購入を見送ったこと,データ入力を外注せず役務費が発生しなかったことの2点が最大の要因である.また,データ入力補助の学生に対する謝金も,当初の見積もりよりも少なく賄うことができた. 次年度は調査規模が当初の想定よりもかなり大きくなる計画であり,そのため調査に関する費用ならびにデータ入力に関する費用が大きくなると予想される.また,成果の発表を積極的に進めるため,これらの経費に充当する予定である.
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Research Products
(1 results)