2020 Fiscal Year Research-status Report
中学校における武道が日本の伝統文化の継承に果たす教育的機能
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18K10818
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
北村 尚浩 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (70274868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前阪 茂樹 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 教授 (10209364)
中村 勇 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (70315448)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 伝統 / 文化 / 海外柔道家 / 参加動機 / 学習効果 / 武道 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,海外の武道参加者の参加動機と彼らが抱く学習効果を調査し,得られたデータを日本の武道参加者と比較することで,武道のグローバル化・スポーツ化の視点から,その効果を検証することが目的であった.しかしながら,COVID-19の世界的流行により海外での調査実施が遅れたため,計画全体に遅れが生じた. 海外の武道参加者の参加動機と武道実施による学習効果を明らかにするため,オランダ・ベルギーの柔道家を対象として2020年12月8日から2020年12月28日にかけてMicrosoft Formsを用いたインターネット調査を行った.調査内容は,個人的属性,柔道実施状況,柔道参加動機,柔道による学習効果,柔道の文化性などである.169名(オランダ130名,ベルギー39名)から回答を得た. サンプルの柔道歴は平均31.0年で,84%が有段者(黒帯)であった.柔道を週1回以上実施している者の平均実施頻度は3.2回で,出場経験のある大会は国際大会と回答した者が半数近く(47.9%)に上った.このような海外柔道家の柔道参加動機,柔道による学習効果を検討した. 結果として,柔道への参加動機としては「一つのスポーツである」「運動として」ということが多く挙げられる一方,「精神修養として」「海外の文化を理解する」という文化的側面の影響は弱いことが明らかになった.また,柔道による学習効果としても体力や運動技能の習得などが多く挙げられたのと比較して,他者への敬意や日本の伝統文化の理解などは少なかった. これらの結果は,昨年度まで明らかにしてきた中学校教員や中学生が感じる学習成果とは異なり,日本人と海外の柔道家とでは成果に対する認識が異なることを示唆するものであり,詳細な分析が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の世界的パンデミックにより,海外の武道実施者に対する調査が遅れたため研究全体の遂行が遅れることとなり,前年度までに収集した教員,中学生のデータとの比較を行うに至らなかった.しかしながら,169名の海外柔道家からデータを得ることができ,彼らの柔道参加動機や学習成果などを明らかにすることはできた. 以上のことから,「(3)やや遅れている」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
十分な考察を加えることができなかったが,前年度までの一連の調査データの分析とともに,中学校における武道教育のあり方について,具体的な検討を進める.武道の学習効果を従属変数として,それを規定する要因を重回帰分析によって明らかにする.さらに,教員,生徒のデータとの比較を通して,武道のグローバル化,スポーツ化の視点から検討を加える.
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Causes of Carryover |
COVID-19の世界的流行により,予定していた海外での学会への参加及び海外でのフィールド調査を行うことができなかったことが最大の要因である.次年度は本研究課題のまとめとして,積極的な成果発表を進めるため分析に使用するソフトウェアや発表機会の経費に充当する予定である.
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