2019 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ種目別・練習形態別の衝撃度実験によるスポーツフロアの性能劣化指標の構築
Project/Area Number |
18K10827
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野川 春夫 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 特任教授 (70208312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝田 隆 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 主任研究員 (20254807)
工藤 康宏 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (30410864)
田中 登志雄 (柳谷登志雄) 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (70329077)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スポーツフロア / 床板剥離 / 共用木製体育館 / スポーツ事故 / フロア画像診断システム / AI搭載フロアドクター / 体育館総合診断システム |
Outline of Annual Research Achievements |
上半期は、研究代表者と分担者(工藤)が中心となり、スポーツフローリングの空知単板工業、体育館用鋼製下地材の染野製作所、および体育館の衝撃度実験の第一人者の三上貴正准教授(東京工業大学)を研究協力者に迎え、床板剥離メカニズムの諸原因について、相互の情報共有と再吟味を実施した。 今回の床板剥離事故は、従来実施されている鉛直方向の衝撃度実験ではなく動体方向とするため、研究代表者と分担者(工藤・田中)がフォースプレート利用の衝撃度実験設定について複数の専門業者と研究協力者を交え妥当性と信頼性を協議・検討したが、①動体方向実験に必要なフォースプレートの数量と、②フローリングおよび下地鋼製材とフォースプレートの組合せの複雑さの両面で、本プロジェクトの予算規模ではモデルフロアを制作しての実証実験は不可能ということが判明した。また、床板剥離は、運動選手によってもたらされる衝撃よりも移動式バスケットボールゴールやバレーボール支柱、バドミントン支柱などの取り付け・取り外しの際に床面を損傷することや、雑巾やモップなどで水を使った清掃による維持管理が床板剥離の大きな原因と推測されることから、衝撃度実験を取りやめ、経年劣化の進む公共体育館のスポーツフロアの剥離兆候の特定化に方向転換した。 下半期は、床板剥離につながる瑕疵(ひび割れ、打痕等)の感知システム構築を進めた。床面の瑕疵確認を『人間の目』に依存するには限度があるため、体育館の管理に精通したセノー社、染野製作所にAIロボット工学のベンチャー企業イクシスを加えて床板剥離自動感知機の開発に着手した。具体的には、AI搭載の自動画像診断システム(仮称フロアドクター)の共同開発と製品化を目標として、多目的・共用利用の典型的な大学体育館と公共体育館において画像診断装置の予備実験を3回行い、床面の瑕疵の感知システム構築に向けて基礎データの収集を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの目的は、全国の共用体育館(約40,000)の効率的・効果的な維持管理法としてロボット掃除機仕様のAI搭載床板剥離自動感知機の開発であった。その研究開発基盤としてスポーツフロアの衝撃度実験データの収集と木製床の性能劣化および経年劣化指標を再構築する必要があると想定していた。しかし、床板剥離の原因はむしろ木製床(フローリング)の維持管理の粗悪さが床板剥離につながる瑕疵(ひび割れ、打痕)をもたらす可能性が高く、その瑕疵を『人の目』で確認するには限度があるため、床板剥離自動感知機開発が体育館の維持管理には費用対効果の妥当性が高いことを再確認した。 そこで、衝撃度実験から方向転換した下半期は、研究協力企業のセノー社と関連企業のAIロボット工学のイクシス社(IXS)が高い関心を示し、近未来に自動走行ロボットのAI画像診断システムを製品化する方向で本研究に参入することとなり、本開発計画が一気に前進することとなった。また、染野製作所もこの開発計画に積極的にかかわることとなった。具体的な流れは以下のとおりである。 ①染野製作所が蓄積する床板剥離に関連するキズ(ひび割れ、打痕)の画像データから基礎データを数百枚を抽出する。②それらの画像をイクシスが「AIフロアドクター」(仮称)に学習させるプログラムを構築する。③フロアドクターの試行を兼ねて経年劣化が顕著な築30~35年の共用体育館フロア(大学体育館と都内の公共体育館)3カ所において実験撮影を実施し、床面の瑕疵を撮影する。④染野製作所が4段階に分別した判別基準に従って収集した画像データをコンピュータの画面上にプロジェクションマッピング方式で色別に点在させる。 AIフロアドクターの感知能力はある程度到達している、床板剥離につながる瑕疵か否かについては専門家がもつ判別能力を学習させる必要があるが、本計画の目標を大幅にクリアしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトが最初に目指したスポーツ種目別・練習形態別の衝撃度実験によるスポーツフロアの性能劣化指標の構築とは異なるが、自動走行式AI搭載画像診断機(仮称:フロアドクター)の試作品開発を目指す。具体的には以下の通り。(1)実験データの更なる蓄積によるフロアドクター(仮称)の感知能力及び判別能力の向上:床板剥離につながる瑕疵(ひび割れ・打痕)の『感知能力』と『判別能力』の妥当性と信頼性を向上するために質の高い実験を繰り返すことがフロアドクターの開発に不可欠となる。イクシス社、染野製作所、セノー社に加え(公財)日本体育施設協会屋内体育施設部会の協力を得てフロアプロの判別能力をAIに学習させる。(2)データ表示法(プロジェクションマッピング方式)の改良と確立:収集した撮影データを4段階表示法で色別に区分し、マッピングの鮮明さと精度の改良と確立を進める。(3)フロアドクター(仮称)に自動走行機能を加えた試作品(製品化)の道筋を作る:効率的・効果的な床面瑕疵の感知・判別能力を高め、フロアドクター(仮称)を自動走行式に改良して試行を繰り返し、人件費を抑制した製品化の道筋を建てる。(4)学校体育館を含め剥離事故を発生させた体育館に対する実地検分の実施:共同研究者(勝田)のヒアリングから公立学校の体育館においても学校安全協会に報告されない「ササクレ」によるマイナーな事故が後を絶たないと報告されている。児童・生徒の安全性を踏まえ、公立学校の木製体育館と過去3年間に床板剥離事故が発生した効率体育館の実地検分を行い、フロアドクター(仮称)の感知能力と判別能力をより一層高める。(5)木製体育館総合診断システムの開発に着手する:イクシス社はコンクリート建築物の診断システムを構築していることから、協力してスポーツフロアだけでなく壁面や天井を含めた体育館総合診断システム開発を同時並行的に進める。
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Causes of Carryover |
衝撃度実験を取り止めAI搭載画像診断機「フロアドクター」(仮称)開発に切り替えたため、フォースプレート購入(賃貸)費をフロアドクター開発に付け替える。下半期に実施した予備実験調査は、イクシス社、染野製作所およびセノー社が研究費用を持ち出しで協力してくれている。予備実験で判明したフロアドクターの弱点を克服し、瑕疵の『感知』から『判別』への学習段階の移行を目指す。そのためスポーツフロア専門家の『目(判別能力)』に近づけるために、スポーツフロア・フローリングの専門家集団との質の高い情報交換と予備実験をさらに続けデータの蓄積が必要となるので人件費・謝金が発生する。 また、フロアドクターを自動走行のAI画像診断機に発展させるために、床板剥離につながるひび割れ・打痕の『感知能力』『判別能力』の妥当性と信頼性を高めるように実験を繰り返すことと、撮影データのプロジェクションマッピングの鮮明さ及び精度を高める必要があるため開発費の一部負担が必要。 さらに、これまでに床板剥離の事故を起こした体育館の実地検分を実施することと、共同研究者(勝田)のヒアリングから小中学校の体育館でも学校安全協会に報告されない床板剥離による事故が多々報告されているので、学校体育館を対象とした実地調査を実施する。また、イクシス社と協力してフロアだけでなく壁面や天井を含めた木製体育館総合診断システムの開発を同時並行的に進める。
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Research Products
(10 results)