2023 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of a stress coping model for referees
Project/Area Number |
18K10867
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
齊藤 茂 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (10454258)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上級審判員 / メンタルモデル / 選手との関係性 / 判断基準 / 演出家 / カウンセラー / 半構造化面接 / 審判受難の時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の影響から研究期間の延長をさせていただいてきた本研究課題も最終年度となり、2023年度は面接調査によるデータ収集の再開、及び本研究課題の最終結果を出すべく、「メンタルモデル(mental model)」の視点から質的データ分析を中心に行った。「メンタルモデル」とは、人間が外界の情報を理解したり、処理したりする過程では、何らかの枠組みに準拠して判断を行う際の前提となる、経験や知識に基づき形成された心の中に持つ表象(イメージ)の心的枠組みのことである(ジョンソン,1988)。 本研究課題では、スポーツ競技の上級審判員が試合で判定を行う際に何を考えて判定をしているのか、その準拠する心的な枠組みを説明するために、この概念を導入した。そして、本研究課題の結果として、「基準をぶらさない」、「選手の力を引き出す」、「競技特性の理解」、「選手の気持ちに添う」及び「受け入れられる努力」といった要素の重要性が見出されており、最終的にはこれらが優れた上級審判員の「メンタルモデル」を構成することが明らかとなった。 これまで審判員は、「基準をぶらさない」のように、ルールの「判断基準」(一,2007)となり、試合をコントロ-ルする役割を担っていると考えられてきた。しかし、本研究課題の結果からは、「選手の力を引き出す」及び「競技特性の理解」といった試合の「演出家」としての役割(前田,1986)が期待されており、まさに「観衆が興奮させられるようなゲームにするのも、つまらないゲームにするのもレフェリーによる」という言及とも合致していた。さらには、「選手の気持ちに添う」及び「受け入れられる努力」のように、いわば「カウンセラー」に求められるような要素までもが要求されていることが明らかとなった。審判員にとっては、まさに「審判受難の時代」(一,2007)ということが言えるだろう。
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