2018 Fiscal Year Research-status Report
電気生理学的手法と3次元動作分析を用いた素早い移動動作に伴う力の抜きに関する研究
Project/Area Number |
18K10968
|
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
麓 正樹 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (40339180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
碓井 外幸 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (60389822)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 力の抜き / 3次元動作解析 / 筋電図 |
Outline of Annual Research Achievements |
効率的で素早い移動動作には、力の抜き(筋活動の減少)が含まれている可能性が示唆されているが、報告は少ない。そこで本研究ではまず、武道の踏み込み動作をモデルとして、下肢の筋活動と腰部の動きを測定した。踏み込み動作は空手道や剣道競技などにおいて、前方への鋭い踏み込みともに攻撃技を繰り出す際の足運びに含まれ、その速度や力強さは勝敗に影響する。今回は5年以上の継続年数を有する空手道競技者を対象とした。近間、中間、遠間の3つの距離を各自の判断で設定させ、踏み込み動作を伴う攻撃技(刻み突き)を、対人にて自己ペースで行わせた。筋電図の測定は、左右の大腿四頭筋(大腿直筋と外側広筋)、左右の大腿二頭筋、上腕三頭筋を対象として、表面双極法を用いて行われた。モーションキャプチャについては、6台の赤外線カメラを用いて、6箇所(左右の上前腸骨棘、左右の上後腸骨棘、仙骨、刻み突きを行う側の手甲)に装着された反射マーカーに注目し、腰部の移動についての3次元解析を実施した。その結果、踏み込み動作の開始直前に、前脚大腿部筋電図の休止期が得られた。休止期の後に、腰部の垂直方向の変位において下降が開始された。腰部運動は下降のピーク後にその状態をわずかに維持した後にゆるやかな上昇に転じ、その途中で刻み突きのインパクトがあった。以上のことからまず、動作開始前の筋電図休止期が我々の先行研究と同様に得られることが確認された。この休止期がその後の斜め下方向への身体の落下を導くと推察されていたが、腰部運動の3次元的な解析から、落下運動が実際に確認された。さらに、相手との距離が遠くなると、下降の開始から終了までの時間が短くなってスピードが上昇し、筋電図の休止期間は短くなる傾向があった。これらの結果は、相手との距離によって、踏み込み動作直前の筋電図休止期間と身体の落下運動がコントロールされる可能性があることを示唆する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、空手道競技者の踏み込み動作において、力の抜きに相当する前脚大腿部筋電図休止期が得られ、その後腰部の落下運動に相当する反射マーカーの下降が確認され、筋電図休止期間と腰部落下運動の関連を示唆する重要な結果が得られた。また、踏み込みの距離によって、筋電図休止期間と身体の落下運動がコントロールされる可能性を示唆する、今後の発展が期待される結果も得られた。これらの成果を学会発表したところ、多くの反響が得られ結果の重要性が確認された。一方で、剣道競技者についても同様の測定を行う予定であったが、モーションキャプチャと無線筋電センサの同期など、測定環境の整備に時間を要したため、これらの内容は次年度以後の研究内容に含めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度に得られた研究成果を論文発表できるように被験者数を増やすととともに非熟練者の測定を行って熟練者と非熟練者の比較ができるようにし、また、剣道競技者の踏み込み動作における力の抜きに関する研究も同様に実施する予定である。また、非熟練者を対象に踏み込み動作の習熟方法と関連した測定も行っていく予定である。これまでの実験から、熟練者の踏み込み動作には前脚大腿部の筋活動の減少と腰部の斜め下方向への変位が得られているので、このような動きを習得するために、下り坂の傾斜を利用することを試みる。我々の他の予備的な測定では、適度な傾斜を利用することによって、斜め下方向への腰部の落下と後足の伸展の時間的な連動性が体感しやすい結果を得ている。一定期間この方法を繰り返して動作への習熟方法の有効性を検討すると同時に、習熟前後の筋活動と動作の関連性の変化について言及できるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当初予定していた謝金としての支出が少なかったことなどが上げられる。2019年度は、研究内容についての国内外での動向を調査するとともに、発表を行うための旅費使用、および測定や解析を進めるための消耗品、謝金使用を予定している。
|
Research Products
(5 results)