2020 Fiscal Year Research-status Report
電気生理学的手法と3次元動作分析を用いた素早い移動動作に伴う力の抜きに関する研究
Project/Area Number |
18K10968
|
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
麓 正樹 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (40339180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
碓井 外幸 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (60389822)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 力の抜き / 3次元動作解析 / 筋電図 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて新たな実験を行うことはできず、2019年度の実験において得られたデータを詳細に解析して学会大会に公表した。公表した研究内容は以下のとおりである。効率的で素早い移動動作には、力の抜き(筋活動の減少)が含まれている可能性が示唆されているが、報告は少ない。剣道や空手道では、前方への鋭い踏み込みとともに攻撃技を繰り出す踏み込み動作が移動動作として行われ、その速度や力強さは勝敗に大きく影響する。本研究では、踏み込み動作を含んだ剣道の面打ちを被験者に行わせ、大腿部の筋活動および腰部の移動に注目して、筋電図解析と光学式モーションキャプチャによる3次元動作解析を用い、力の抜きとそれに伴う動作について検討を行った。被験者として剣道競技者を対象とした。近間、中間、遠間の3つの距離を各自の判断で設定させ、面打ちを対人にて自己ペースで行わせた。筋電図は、左右の外側広筋を含めて合計6箇所に無線筋電図センサを装着して測定された。動作に関して、14箇所に反射マーカーを装着して8台の赤外線カメラによって記録し、腰部の移動に注目して3次元解析を実施した。その結果、踏み込み動作開始直前に、前脚大腿部筋電図活動の休止期が得られた。休止期の開始後に、腰部垂直方向の変位において下降が確認された。腰部は下降のピーク後にその状態をわずかに維持した後に上昇に転じ、その途中で面打ちのインパクトがあった。これらのことから、我々の先行研究から推察されていた、踏み込み動作開始前の筋電図休止期と腰部落下の関連性を裏付ける可能性のあるデータが得られた。また、踏み込み動作開始前の前脚筋電図休止期間と腰部の落下が、相手との距離によってコントロールされ、面打ちのインパクトに向けたその後の動作に利用されている可能性を示唆するという、今後の発展が期待される結果も得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて新たな実験を行うことはできず、2019年度の実験において得られたデータを詳細に解析して学会大会に公表するにとどまった。2021年度での研究遂行に向けてソフト面(コロナ禍での研究遂行に向けての様々な手続きの整備)とハード面(研究環境の整備と予備的な測定)での準備を進めた。9月より大学授業にて一部対面授業が開始されたものの、研究活動の実施には大学全体として至らなかった。その後、実験を開始させるべく、文部科学省の研究に関するガイドラインを本学用に改変し、ボトムアップ的なアプローチによって大学全体の承認が得られるように、大学の関係部署に働きかけを行った。本年度の研究によって、剣道競技者の踏み込み動作において、力の抜きに相当する前脚大腿部筋電図活動の休止期、その後腰部の落下に相当する反射マーカーの下降が確認され、筋電図活動休止期間と腰部落下の関連を示唆する重要な結果が得られた。また、踏み込みの距離によって、筋電図活動休止期間と身体の落下運動がコントロールされ、その後の動作に利用されている可能性を示唆する今後の発展が期待される結果も得られた。2020年度末時点では実験再開の見通しは立っていないが、2021年度のより早期の実験再開を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度に行うことができなかった、それまでの研究成果を論文発表できるように被験者数を増やすととともに非熟練者の測定を行って熟練者と非熟練者の比較ができるようにしたい。また、非熟練者を対象に踏み込み動作の習熟方法と関連した測定も行っていく予定である。これまでの実験から、熟練者の踏み込み動作には前脚大腿部の筋活動の減少と腰部の斜め下方向への変位が得られているので、このような動きを習得するために、下り坂の傾斜を利用することを試みる。我々の他の予備的な測定では、適度な傾斜を利用することによって、斜め下方向への腰部の落下と後脚伸展の時間的な連動性が体感しやすい結果を得ている。一定期間この方法を繰り返し、動作習熟への有効性を検討すると同時に、動作の変化に伴う筋活動の変化について言及できるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた実験がほぼ実施できなかったこと、共同研究者の支出が少なかったことなどが挙げられる。2021年度は、研究内容についての国内外での動向を調査するとともに、発表を行うための旅費使用、および測定や解析を進めるための消耗品、謝金使用を予定している。
|
Research Products
(4 results)