2018 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンによる様々な神経変性疾患の早期診断法および予防・治療法の開発
Project/Area Number |
18K11009
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
末永 みどり 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (00389181)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 洋一 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (80239053) [Withdrawn]
坪井 義夫 福岡大学, 医学部, 教授 (90291822)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 神経変性疾患 / アミロイドβ / プリオンタンパク質 / αーシヌクレイン / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初平成31年度に実施を計画していた①凝集性タンパク質と結合するビタミン類の探索及び②ビタミン類による凝集性タンパク質の構造変化解析を前年度の平成30年度に行った。 ① Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)解析により、3種の凝集性タンパク質(正常プリオンタンパク質(PrPc)、α-シヌクレイン(α-syn)およびTDP-43)と9種の水溶性ビタミン、7種の脂溶性ビタミン及びβ-カロテンとの結合性を解析した。その結果、水溶性ビタミンはいずれの凝集性タンパク質とも結合性を示さなかった。しかし、脂溶性ビタミンのうち、ビタミン(V)A、VD2及びβ-カロテンはいずれの凝集性タンパク質と結合性を示し、また、VK5はPrPcおよびTDP-43と結合性を示した。これら4種のビタミンは、いずれもPrPcとの結合性が高く、次いで、TDP-43が高く、α-synに対しては弱い親和性を示した。 ② 既にアミロイドβ(Aβ)との結合性を明らかにしているVD2及びVEによるAβ40の構造変化(β-sheet形成)及び凝集への影響を、それぞれ、Thioflavin-T法及びMALDI TOF/MSを用いた質量分析により解析を行った。結果として、両ビタミンによりAβのβ-sheet形成及び凝集が抑制された。 さらに、マウス神経細胞腫細胞N2aを用い、VD2及びVEがAβによる神経細胞毒性を抑制するか検討したところ、両ビタミンによりAβの神経細胞毒性が抑制された。 以上の結果から、VD2はいずれの凝集性タンパク質との結合性を示すことが明らかになり、凝集性タンパク質の凝集を抑制する可能性が示唆された。よってVD2は脳内における凝集性タンパク質の検出のプローブのシード化合物として早期診断や予防・治療への利用が期待される。また、凝集性タンパク質との結合性を示した他の脂溶性ビタミンについても、同様である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、当該年度は、まず、血液生化学解析としてパーキンソン病(PD)患者、アルツハイマー病(AD)患者及びその前駆段階である軽度認知障害(MCI)の血中ビタミンE(VE)濃度を測定し、PD及びADの重症度と血中VE量の相関性の解析を予定していたが、現在解析途中であるため、結果を示すまでには至らなかった。また、疾患モデル細胞及び動物へのビタミンの導入を計画していたが、現在、疾患モデル細胞の作成法やその解析方法を検討している段階のため、結果を示すまでには至らなかった。 そこで、計画を変更し、当初平成31年度に実施を計画していた①凝集性タンパク質と結合するビタミン類の探索、②ビタミン類による凝集性タンパク質の構造変化解析及び③ドッキングシミュレーション解析を前年度の平成30年度に行うこととした。 上記の①及び②についてはおおむね順調に進展しているが、③については着手できていない。 以上のように、実施計画を変更したため、当初の計画よりもやや遅れているという評価を下した。
|
Strategy for Future Research Activity |
H31年度は、引き続き、表面プラズモン共鳴解析により、凝集性タンパク質との結合性を示すビタミン類の検索を進める。また、凝集性ビタミンとの結合性がみられた脂溶性ビタミンについて、これらのビタミン類の共存/非共存下で、凝集性タンパク質に加温やpH変化などの物理的刺激を与え、凝集性タンパク質の構造および凝集性の変化の解析を行う。構造変化の検出にはThioflavin-T法または円偏光二色性スペクトル法などを用い、凝集体の検出にはMALDI-TOF/MSおよびDot BlotによるProteinase K (PK)感受性試験やWestern Blotを用いる。さらに、統合計算科学システムMolecular Operating Environment (MOE)およびASEDockにより凝集性タンパク質とビタミンとのドッキングシミュレーションを行う。 また、平成30年度の実施を計画していた、パーキンソン病(PD)患者、アルツハイマー病(AD)患者および軽度認知症(MCI)の血中ビタミンE (VE)濃度を測定し、これらの疾患における血中VE濃度の相違およびこれらの疾患の重症度と血中VE濃度との相関性の解析を行う。さらに、疾患モデル細胞を作成し、ビタミンD2及びその代謝体、VEあるいは凝集性タンパク質との結合性を示した脂溶性ビタミンを添加し、細胞内における凝集体形成や細胞毒性の変化を解析する。
|
Causes of Carryover |
研究代表者は、当助成金の他に所属組織から支給された研究費を有している。また、次年度は、研究室メンバーの減数にともなう所属組織から支給される研究費の減額が予想された。そのため、物品費は主に所属組織からの研究費から支出し、研究補助員への人件費を当助成金から支出した。
|