2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌に注目した植物ポリフェノールによるイムノメタボリズム制御機構の解明
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18K11049
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / 小豆ポリフェノール / 抗生物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から引き続き、本年度は「課題1:植物PP摂取の効果への腸内細菌の関与とその機序の検討」を実施した。 抗生物質を与えて腸内細菌を減少させたマウスに、高脂肪食および小豆ポリフェノール(APP)を与え、脂質・糖代謝に及ぼす影響を検討した。すなわち、5週齢雄性ICRマウスを6群に分け、CN, CN-Pに対照(C)食と水道(N)水を、FN, FN-Pに高脂肪(F)食とN水を、FA, FA-PにF食と抗生物質含有(A)水を4週間自由摂取させた。A水は1週間前から与えた。CN-P, FN-P, FA-Pに、小豆粒から抽出・粗精製したAPP(40 mg/kgBW)を試験期間中毎日強制経口投与した。試験終了後、血液生化学検査、組織の重量測定および盲腸内容物の腸内細菌叢と短鎖脂肪酸(SCFA)解析を行った。 その結果、抗生物質を投与した2群は、盲腸肥大と内容物の液状化、腸内細菌叢の種多様性の低下およびSCFAの減少が確認された。FNは、CNと比べてFirmicutes/Bacteroides比が上昇する傾向が見られた。APP投与したCN-P, FN-Pでは、CN, FNと比べて種多様性が増加しSCFA濃度が有意に上昇した。体重および脂肪組織重量は、高脂肪食の摂取によりCNと比べてFNで有意に増加したがFN-Pで減少した一方で、FA-PはFAより高値の傾向であった。血漿中TGおよびHOMA-IRは、FNと比較してFN-Pで有意に低下したが、FAとFA-P間で有意差は無かった。以上のことから、APPには、腸内細菌叢の多様性を高め、高脂肪食摂取に起因する脂質や糖代謝の異常を軽減する作用が認められた。この作用機序として、腸管から吸収されたAPPに加えて、腸管内の未吸収APPによる腸内細菌叢の多様性の増大が関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「課題1:植物PP摂取の効果への腸内細菌の関与とその機序の検討」を実施し、APPに、腸内細菌叢の多様性を高め、高脂肪食摂取に起因する脂質や糖代謝の異常を軽減する作用を見出した。さらにこの作用機序として、腸管から吸収されたAPPに加えて、腸管内の未吸収APPによる腸内細菌叢の多様性の増大が関与する可能性を見出した。一定の研究成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、課題1で得られたサンプルの解析を継続し腸内細菌叢および短鎖脂肪酸のデータ蓄積を行う。以上の結果を取りまとめて、成果の発表を行う。 また、「課題2:乳児期における植物PP摂取の効果の検討」を実施する。乳児期のラットは、母乳および離乳間近には自身で摂取する飼料から栄養を摂取する。そこで、植物ポリフェノール含有食を授乳期の母と仔ラットに与え、①離乳時と成長後の腸内細菌叢、②成長後の慢性炎症および脂質代謝の指標を調べ、イムノメタボリズムへの影響を解析する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究課題に必要な物品はすべて購入したが、受託解析を一部次年度に回すこととしたため、その分の余りが生じた。 次年度の研究課題における物品費と合算し、受託解析費用および実験に必要な物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)