2020 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌に注目した植物ポリフェノールによるイムノメタボリズム制御機構の解明
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18K11049
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
向井 友花 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60331211)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリフェノール / 腸内細菌 / 高脂肪食 / 代謝調節 / 乳児期 / フルクトース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「課題1:植物PP摂取の効果への腸内細菌の関与とその機序の検討」および「課題2:乳児期における植物PP摂取の効果の検討」を実施した。 課題1については、抗生物質を与えて腸内細菌を減少させたマウスに高脂肪食および小豆ポリフェノール(APP)を与え、脂質・糖代謝に及ぼす影響を検討したところ、前年度までに、APPには、腸内細菌叢の多様性を高め、高脂肪食摂取に起因する脂質や糖代謝の異常を軽減する作用を有することを見出した。今年度は、その作用機序と腸内細菌の関与を検討するために、糖代謝に関わるインスリンシグナル因子の発現を検討した。その結果、肝臓中のmTORおよびAktは、APPを投与した群では発現量が低下する傾向が見られた。一方、抗生物質をを与えた場合、反対に増加する傾向が見られた。リン酸化FoxO1は、APPを投与した群では増加傾向が見られたが、抗生物質を与えた群間に差はなかった。以上より、APPには、mTOR、Akt、FoxO1を介してインスリン感受性を改善する作用があるが、腸内細菌叢が変化するとそれらの作用は消失または低減することが見出された。したがって、高脂肪食マウスにおけるAPPのインスリンシグナル調節機能に、少なくとも部分的には、腸内細菌が関与する可能性が示された。 課題2については、胎児期・乳児期に低たんぱく質に曝露され、かつ離乳後にフルクトースを過剰摂取したラットの成長後の糞便中短鎖脂肪酸量は、フルクトースを摂取していない群と比較して有意に増加した。一方、乳児期にクルクミンを摂取した群でも同様の変化が生じたことから、腸内環境には乳児期に母乳を介して摂取したクルクミンよりもむしろ、成長後に摂取したフルクトースの影響が強いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、上記研究実績に加え、課題1では腸管組織における慢性炎症関連因子の発現を検討し、イムノメタボリズムと腸内細菌との関わりについて検討する予定であった。また課題2では、乳児期のクルクミン摂取と成長後の糖・脂質代謝および慢性炎症に及ぼす影響について検討する予定であった。しかしながら、本年度の半分は新型コロナウイルス感染対策により研究活動の中断を余儀なくされた。よって、一定の研究成果は得られたが予定していた項目の検討には至らなかったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に検討に至らなかった、課題1:腸管組織における慢性炎症関連因子の発現、および課題2:乳児期のクルクミン摂取と成長後の糖・脂質代謝および慢性炎症に及ぼす影響について、継続して検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度の半分は新型コロナウイルス感染対策により研究活動の中断を余儀なくされたため、計画通りに使用できなかった。2021年度に行う実験に必要な物品購入に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)