2020 Fiscal Year Research-status Report
母乳に含まれるビタミン候補物質ピロロキノリンキノンの高感度分析法の開発とその応用
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18K11059
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
熊澤 武志 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (00186470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 君枝 聖隷クリストファー大学, 助産学専攻科, 教授 (40331607)
李 暁鵬 (中内暁博) 昭和大学, 医学部, 准教授 (90245829)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピロロキノリンキノン / 母乳 / 抽出法 / 質量分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の検討を行った。 1) PQQを抽出する方法として、C18シリカモノリスSPEによる抽出条件を検討した。昨年度までの検討では、人工乳(粉ミルク)を用いたPQQ添加実験での回収率は約40%以下であり、より高い回収率が得られる改良が必要であった。今回、人工乳を溶解した水溶液にメルカプトエタノール水溶液を加え混和した後、塩酸水溶液を加え、遠心処理後の上清をスピンチップC18SPEにロードした後、ピリジン溶液を用いた溶出を施した。溶出液は蒸発乾固後、その残渣を移動相で溶解しHPLC分析に供した。その結果、回収率は約55%、日内変動(CV値)は10%前後であった。また、同様の検討を、シリカモノリスSPEチップ(200μl容量タイプ)で行ったところ、回収率約65%、CV値14%が得られた。一方、イオン交換樹脂を用いたSPEの抽出では、人工乳にリン酸水溶液とメルカプトエタノール水溶液を加え混和後、遠心処理を行い、その上清をSPE固相にロードした。回収率は約30~40%であり、メルカプトエタノール添加による回収率低下が認められた。本検討により、逆相型の固相を用いたPQQ抽出では、蛋白変性処理を行う前のメルカプトエタノール処理の抽出効率への有効性が明らかとなった。 2) PQQを人工乳に添加したSPE抽出物について、検量線を用いた定量性の検討を行った。SRM測定では、プリカーサイオンm/z329として、プロダクトイオンm/z 241あるいはm/z311の組み合わせを実施した。その結果、m/z329→m/z241では40~500ng/mlの範囲で相関係数0.85、m/z329→m/z311では150~500ng/mlの結果が得られた。なお、定量限界はいずれの組み合わせでもS/N比=10に設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
C18シリカモノリスSPEによる人工乳中のPQQ抽出実験において、抽出効率の低さが課題となっている。今回、除タンパク処理前の人工乳にメルカプトエタノールを加えることによって回収率の改善結果が得られた。しかし、定量性の検討では、相関係数は良好であったものの、定量限界が40~150ng/mlであり、さらなる検出感度の向上が必要であることが明らかとなった。また、新型コロナウイルス感染の影響によって、授乳婦からの母乳の採取については、施設や授乳婦の選定の進捗に大幅な遅れが生じているほか、研究代表者(静岡県)が研究分担者(東京都)の施設に出向いて、設置されている分析機器類を使用することが困難な中で、データ採取が予定通りに進んでいない状況でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、C18シリカモノリスSPEによる微量抽出法と質量分析法を組み合わせた母乳中PQQの高感度分析法を構築し、授乳婦の母乳からPQQを検出・定量することを目指す。本年度に実施したPQQ抽出の改良によって検出感度において一定の効果が見られたが、検量線作成における定量限界を考慮すると、さらなる抽出効率の向上が必要である。特に除タンパク処理はSPE法よりも液-液抽出法の方が処理効率は高く、これには最新の液-液抽出を組み合わせた分離技術QuEChERS法(クエッチャーズ法)等も採用することが必要である。抽出効率の改善によって、質量分析法における品質管理が効率よく進むと思われる。また、新型コロナウイルス感染症の影響によっては、授乳婦からの母乳の提供が十分得られない場合も考えられる。その際は、本研究以前に採取して冷凍保存している母乳の使用も考慮に入れるほか、各メーカーが発売している代替母乳について、PQQの同定・定量を試み、本研究の栄養学領域での有用性等を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響によって、当初計画である人工乳を用いたPQQ添加実験における抽出法並びに質量分析法の確立、授乳婦からの母乳の採取等に遅れが生じていることから、研究費の次年度使用が発生した。次年度で充当する消耗品費等の主なものとしては、分析用カラム(234,000円)、SPEカートリッジ(58,000円)、試薬類(85,000円)を購入するほか、母乳提供者への謝金(20人分、240,000円)等が含まれる。
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