2021 Fiscal Year Research-status Report
母乳に含まれるビタミン候補物質ピロロキノリンキノンの高感度分析法の開発とその応用
Project/Area Number |
18K11059
|
Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
熊澤 武志 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (00186470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 君枝 聖隷クリストファー大学, 助産学専攻科, 教授 (40331607)
中内 暁博 昭和大学, 医学部, 客員教授 (90245829)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ピロロキノリンキノン / 母乳 / 抽出法 / 質量分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の検討を行った。 PQQを分析試料から抽出する方法として、SPE法、液-液抽出法、簡易除タンパク・リン脂質除去による試料の前処理法を検討した。昨年度までの検討では、人工乳(市販粉ミルク、0カ月~1歳児用)を用いたPQQ添加実験での回収率は低い傾向にあり、母乳からのPQQ検出が可能な回収率が得られる抽出法の開発が課題であった。今回、人工乳を用いたPQQ添加実験において、SPE法ではC18カートリッジカラム、イオン交換樹脂カートリッジカラム、液-液抽出ではQuEChERS法、簡易除タンパク・リン脂質除去カートリッジISOLUTE PLD+カラム等を比較検討した。PQQの検出はLC-MS/MS-SRM法を用い、プリカーサイオンm/z329として、プロダクトイオンm/z241あるいはm/z311の組み合わせを実施し、PQQの分離にはL-column3等を用いた酢酸アンモニウム溶液をベースにアセトニトリルのリニアグラジエント法を設定した。C18カートリッジカラム及びイオン交換樹脂カートリッジカラムは、いずれも人工乳を酸性で除タンパク処理を施した後、カラムへのロード、洗浄、溶出を試みた。一方、QuEChERS法では、人工乳をQuEChERS tubeにて撹拌し、上清を抽出液精製用dSPEにてサンプルのクリーンアップを行った。その結果、抽出効率はC18カートリッジカラム及びイオン交換樹脂カートリッジカラムでは10~50%であった。また、同様の検討を、QuEChERS法で行ったところ、抽出効率が約1%以下であったが、ピリジンを人工乳希釈液に加えた場合の抽出効率が大幅に改善された。一方、ISOLUTE PLD+カラムによる除タンパク・リン脂質除去法では、PQQの抽出効率が非常に悪く、LC-MS/MS検出への適用には不向きであった。本検討により、母乳中PQQの分析に関して、QuEChERS法やISOLUTE PLD+は簡便であるものの、回収率が低いことが示され、SPE法とLC/MS/MS法との組み合わせが有用であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの研究において、人工乳中のPQQ抽出実験において、抽出効率の低さが課題となっていた。今回、新たに種々のSPE法や液-液抽出法を検討したところ、SPE法では母乳中PQQ検出が可能と考えられる抽出効率が得られた。しかし、QuEChERS法による新しい簡便なPQQ抽出法では、抽出効率が低いものの、ピリジン溶液による人工乳の希釈によって抽出の改善結果が得られた。なお、新型コロナウイルス感染拡大の長期的影響によって、授乳婦からの母乳の採取には母子への細心の注意が必要であり、施設や授乳婦の選定の進捗に大幅な遅れが生じていることから、データ採取が予定通りに進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、検討されたPQQ抽出法とLC-MS/MS法の組み合わせによる分析法を実際の母乳からのPQQ検出に応用し、母乳中PQQの検出・定量を目指す。本年度に実施した人工乳中PQQの抽出法の開発は、実際の母乳からのPQQ検出において有効に働くと考えられる。また、除タンパクやリン脂質除去のカートリッジであるISOLUTE PLD+を人工乳からのPQQ抽出に用いた場合、LC-MS/MSのバックグランドノイズが減少したものの、PQQの抽出効率の改善は見られず、PQQ分析の品質管理に良好な結果は得られなかった。一方、PQQ添加用に用いた人工乳は、現在、複数のメーカーから発売されているため、使用する種類を増やし、実際の母乳に対応するための分析のシミュレーションを継続する予定である。なお、新型コロナウイルス感染拡大の今後の影響によっては、授乳婦からの母乳の提供が十分得られない場合も考えられる。その際は、本研究以前に採取して冷凍保存している母乳の使用も考慮に入れてPQQの同定・定量を試み、本研究の栄養学領域での有用性等を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の継続の影響によって、当初計画である人工乳を用いたPQQ添加実験における分析方法の基礎データ収集に遅れが生じた。また、授乳婦からの母乳の採取等についても、母子への感染防止を最優先に考える必要から、大幅な遅れが生じており、研究費の次年度使用が発生した。次年度で充当する消耗品費等の主なものとしては、LC-MS/MS分析カラム(68,000円/1本)試薬類(35,000円)のほか、母乳提供者への謝金(20人分、120,000円)等が含まれる。
|