2021 Fiscal Year Research-status Report
肝微小環境から捉えるビタミンE同族体の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)改善機構
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18K11096
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
石川 朋子 聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (70212850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 葉子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50293105)
日下部 守昭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (60153277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝疾患 / 栄養 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、NASH患者は約100万人弱で成人人口の1%に達している。NASH治療におけるビタミンE投与は一定の有用性が示されながらも、治療効果への期待と副作用への懸念のバランスから、絶対的選択肢とはなっていないのが現状である。ビタミンEのNASH改善機構が明らかとなれば、より病態に適した投与タイミングの決定や、配合治療製剤の開発が可能となる。 本研究では病態の亢進と改善が複雑に展開するNASH改善過程における肝微小環境に着目している。これまでに、創傷治癒に関わる細胞外マトリックスであるテネイシンの欠損は、肝炎初期段階における組織再生を遅らせ、代償的過形成や線維形成を亢進させることを明らかにした。一方で、ビタミンE同族体のNASH改善機構については、NASH発症初期において、トコトリエノールがタイプⅠコラーゲンおよびタイプⅣコラーゲンの遺伝子発現を顕著に低下させ、線維化抑制に寄与することを報告した。配合治療製剤の開発を目指した検討では、NASHからの回復過程における魚油とビタミンEの相乗効果について検証を行った。NASH回復過程の肝臓において、魚油の投与により脂質合成、線維化、炎症関連遺伝子発現が低下すること、魚油と同時にα-トコフェノールまたはトコトリエノール混合物を投与すると、脂質合成および線維化関連遺伝子の抑制がさらに増強されることが明らかとなった。しかしながらビタミンE同族体の違いによる増強効果の差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による活動制限が継続したこともあり、研究代表者の所属機関異動後の研究環境整備に遅れが生じた。そこでNASH発症初期におけるビタミンE同族体の効果について、論文発表を優先させた。肝炎のハイリスクモデルとしてTNCKOマウスを用いた検討では、肝炎の鎮静をより明確に検証するために、NASH誘導期間、回復食投与期間の再検討を行ったため、研究の進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビタミンE同族体のNASH改善効果を、A:肝組織の再生とB:肝炎の鎮静に分けて検証している。Aにおいて研究方策に追加した魚油とビタミンE同族体の同時投与による相乗効果について、論文にまとめて投稿する。BではNASH発症過程におけるTNC欠損の影響を詳細に検討するため、WTマウスのNASH発生過程における肝微小環境の変化について、再検証実験を実施し、最終年度中の論文投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は生化学的解析を中心に実施し、抗体等を使用した形態学的解析およびこれまでに得られた所見の再検証のための経費に残額が発生した。次年度は、生化学的解析結果からTNC欠損時の肝炎鎮静に関与が予測される間質関連分子について、形態学的解析を実施するため、抗体等の試薬購入、顕微鏡観察のための消耗品購入に使用する。さらに本研究で得られた所見と肝組織再生との関連について、WTマウスを用いた再検証実験に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)