2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K11148
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
松村 羊子 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (80412154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栢野 新市 畿央大学, 健康科学部, 教授 (40412150)
伊藤 利洋 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00595712)
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 柿タンニン / 炎症性腸疾患 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
柿は古くから食用とされ、渋み成分を抽出した柿渋には防水・防虫・防腐・消臭効果などがあり、塗料や染料として長く利用されてきた。我々は、その渋み成分である柿タンニンを含有する飼料を摂取することにより抗酸化活性や抗炎症作用が増強し慢性肺感染症モデルマウスの病態を改善させることを既に見出している。 一方、潰瘍性大腸炎を代表とする炎症性腸疾患は慢性炎症性疾患であり、柿タンニンの抗炎症効果などが有効に作用する可能性が考えられた。そこでDSS誘導による炎症性腸疾患モデルマウスを用いて、松村ならびに伊藤教授、北畠講師が柿タンニン摂食による病態抑制を検討した。糞便性状・下血・体重変動を基とした疾患活動性ならびに大腸組織の病理学的所見(HE染色)を評価したところ、疾患活動性は各項目において柿タンニンの摂食により低下し、病理学的所見からは腸内の炎症の軽快化が観察された。 さらにこれらの効果には柿タンニン摂取による腸内環境の変化が関与していることが考えられる。そのひとつとして、腸内細菌叢の変化を検討するために、柿タンニンを摂取させたマウスから糞便を採取し、次世代シークエンサーにより16sリボソーム遺伝子解析を行い(外部委託)、松村ならびに伊藤教授、北畠講師が腸内細菌叢を現在解析中である。 また柿タンニンが生体に作用するためには、経口摂取後低分子化され体内に吸収されることが必要となる。しかし柿タンニンは高分子のため、そのまま消化され吸収されるとは考え難い。そこで、柿タンニンの分子構造の変化を解明するために、松村ならびに栢野教授は酸加水分解を行うことにより柿タンニンを低分子化し、HPLC等で現在精製中である。低分子タンニンを単離した後、抗酸化活性や抗炎症作用を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
柿タンニンを摂取させた炎症性腸疾患モデルマウスを用いた病態改善の検討については、疾患活動性の検討および病理学的所見において、当初期待した通り当該マウスの炎症はコントロール食を摂食したマウスよりも軽快化している結果が得られており、順調に推移している。 また、腸内環境の変化を探る目的で腸内細菌叢の比較検討を行うために各食餌群のマウスの糞便を採取し、糞便からの16sリボソーム遺伝子解析を外部委託し、その結果がすでに報告されている。現在内容を解析しているが複雑なデータのため、時間を少々有する予定である。しかし解析は順調に進んでおり、今後詳細な結果をまとめる予定である。 柿タンニンの構造変化により生じる有効成分についての検討は、まずは酸加水分解物の解析を行って、低分子化した柿タンニン分解物を精製するため、HPLCによる精製条件の検討、再現性の確認を検討中である。基本的な手法は確立しており、条件検討のために柿タンニンの大量処理を行い、サンプルを十分に確保することができれば、条件検討の繰り返しが可能となる。引き続き検討を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
柿タンニンを摂取することにより、炎症性腸疾患モデルマウスの病態が改善した結果と腸内細菌叢の関係については、16sリボソーム遺伝子解析を詳細に行うことにより明らかになると考えられるが、関与が認められなかった場合でも、炎症性サイトカイン等の発現をELISAならびに定量性PCRを用いて検討すること、およびリンパ球の解析を行うことで、免疫学的な視点から炎症改善のメカニズムの解明にアプローチすることが可能である。これは、伊藤教授らにより確立された手法を応用することにより、松村と伊藤教授、北畠講師が行う予定である。 柿タンニンの構造変化により生じる有効成分の探索は、まず酸加水分解物での検討が必要でああるが、それとともに生体内での構造変化についても同時に進めていく予定である。こちらについては、消化管内の反応を再現し実験モデルを既に確立しているため、口腔・胃・小腸・大腸の各消化の段階をin vitroで再現して柿タンニンを処理し各段階においてサンプリングする。各消化段階の反応液のORACを測定することにより抗酸化活性がいかに変化しているかをまず検討し、さらにHPLCを用いて生成している化合物の精製を行っていく。HPLCだけでなくLC-MSも活用し、分子構造の変化を見極める予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度中に必要な消耗品を購入しようとしたが、年度末で購入先の対応が間に合わず、やむを得ず購入を見送ったため。柿タンニンの試料精製に必要な消耗品を購入予定。
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