2018 Fiscal Year Research-status Report
多変量楕円母集団の下での新たな検定手法の開発とその応用
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18K11198
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岩下 登志也 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (20266919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 楕円対称性 / 一様性検定 / Stiefel多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初、楕円対称性検定問題の重要部分であるStiefel多様体上で定義される確率行列の一様性検定を、Iwashita et al.(2017)の結果を利用することを考えていたが、対立仮設の下での検出力に関して良好な結果が得られなかった。この問題は本研究を計画した時点で想定されていた問題であったため、代替案として用意していたPycke(2010)による円周上の一様性検定の手法を超球面上の一様性検定問題に拡張する方針に切り替え、Stiefel多様体上の一様性検定の有効な方法を開発した。 検定統計量の正確な分布の導出は困難であるため、小標本では大規模な数値実験により検定に必要な棄却限界点を求めることが必要となったが、本補助金により購入することができた高性能コンピュータを駆使することにより、短時間で精度の高い棄却限界点を求めることができた。Stiefel多様体上の一様性検定法で有効なものを開発することができたことにより、我々が提案する検定法の骨格が構築され、シミュレーション実験により開発した検定方法の性能を確認した。また実データに対しても提案する検定方法の有効性を確認する必要があることから、Fisher(1936)で示された有名なアヤメのデータに利用して、我々が提案する検定方法の有用性を示すことができた。 この研究成果は、科学研究費によるシンポジウム「多変量データ解析法における理論と応用」(於:広島大学理学部)においては口頭発表、国際会議 DAGStat Conference 2019(於:ルードヴィッヒ=マキシミリアン大学ミュンヘン)においてはポスター発表により報告をした。また学術論文としてまとめ、投稿するための準備をしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
投稿中論文の結果を応用して、楕円分布の母数に関する検定問題にすでに取り掛かっている。第一弾として一標本での楕円分布の位置母数(平均)に関する検定のための統計量を考案中である。検定統計量として数種類の候補となる統計量が考えられるので、どの統計量が検定唐家領として最適であるか、予備実験を行っている。我々が提案する検定統計量・検定方法が有効性であるか否かを確認するためには、既存の検定統計量・検定方法を基準として比較・検討する必要がある。そこで、母集団を楕円分布の一つである正規分布に設定し、提案する統計量と既存ものとの性能を数値実験により検証しているところであり、現時点では良好な実験結果を得ている。また、この予備実験の進行と同時に、いわゆる2標本問題―Behrens-Fisher問題を含め、2標本の位置パラメータに関する検定問題を考察するため、検定統計量の開発に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
2標本問題を次の3つの設定に分解をして考察する。1)2つの母集団の等分散性を仮定して、それぞれの標本の大きさが異なる。2)2つの母集団の等分散性の仮定をしないが、それぞれの標本の大きさは同じとする。3)等分散性、等標本の仮定を外した問題設定。 1)と2)の場合においては、Iwashita and Klar(2014)で得られている結果を応用することにより、適切な検定統計量が得られることが判明している。しかしながら、3)の場合については、単純な応用では解決できない。したがって、2019年度中の早い時期に一標本問題と上記1)と2)についての結果を得ることが重要であり、最終年度で3)の問題が解決できるような指針を示す。
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Causes of Carryover |
[理由]所属機関から受ける教員研究費と本補助金により海外出張(研究打ち合わせ)を計画していたが、先方の都合等により実施できなかったため。 [使用計画]本年度(来年3月)、国際会議(於:ドイツ)での本研究の成果報告を計画しており、その出張の際に使用する。
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