2019 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to secondary standard materials for multi-element stable isotopes using environmental standard samples
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18K11630
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 安定同位体 / 環境標準試料 / マグネシウム / 亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、昨年度に分析方法が確立した測定法に基づいて、30種の標準試料について同位体比の精密分析を行った。また装置の不具合で昨年度できなかった低温灰化装置を用いた分解法の検討が行うことが出来た。 試料分解法(混酸を用いた分解法と低温灰装置を用いた分解法)の違いによる同位体測定値への影響は殆どないことが確認できた。試料の前処理段階で同位体比に影響を及ぼすのはカラム分離の方が大きく影響することも確認できた。 Sr及びZnの同位体比の測定は問題なく順調に進んでいて、標準試料のデータベース作成を進めているが、マグネシウムの測定では測定時期によって測定値の不安定性が確認され原因究明にとりかかっている。また、マルチコレクターICP-MSを用いたSr同位体比測定では新たなアルゴンガスの不純物(クリプトンの妨害)に関する問題が発見された。この問題はこれまで報告されていないものであり、研究者ネットワークを用いて装置の改造を含め色々検討を進めている。また、ガスを生産する会社にも報告して対策について色々話してはいるものの現在のアルゴンガスの生産過程では不純物を取り除くことができないことも明らかになった。この不純物問題については本研究の中で解決するのが難しいと判断されるため本研究での解決は取り込まない考えである。 また、カルシウム安定同位体の測定については国際同位体標準試料(primary standard)を用いてテスト測定を行うことができたが前処理と測定及びデータ解釈が複雑であるため本研究で環境試料の測定までには間に合わないと判断している。 これまでの進行状況をまとめて国際学会などでの発表を行い、一部について論文化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の測定ではSr同位体比(87Sr/86Sr)及び亜鉛の値(δ66Zn)は既存の認定値と良く一致する結果を出している。例えば亜鉛の標準試料の一つであるNIST 682は-2.4‰(±0.03)であった。また亜鉛の同位体標準物質であるAA-ETHを繰り返し測定した結果では-0.007‰(±0.02)であった。他の標準試料の測定も順調に進んで凡そ測定誤差0.05‰以下の安定した測定ができている。 またSr測定も順調に進んでいるが、MC-ICP-MSを用いた測定では装置を稼働するために用いるアルゴンガスの不純物であるクリプトン(Kr)の影響によって測定値が大きく変わる問題点が発見された。この点については報告例がなく色々可能な対応法を探しているが、まだ解決の見通しは立っていない。今後の課題として慎重に進む必要がある。 マグネシウム同位体の測定では長期の安定性が悪くなる問題点が発見された。そのため論文化作業も遅れている。特にワーキングスタンダードとして作成したRIHN-Mgの不安定性が大きいためワーキングスタンダードの再作成などを検討している。 カルシウム同位体分析に関しては、表面電離型質量分析装置(TIMS)を用いて精密Ca同位体分析法の開発に取り込んでいる。国際標準試料(NIST SRM 915bおよびOSIL sea water)に対するテスト測定ができたが繰り返し分析精度が悪くて安定的な測定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度なので論文の取りまとめを行いながら新たに出てきた問題点について解決を向けて検討を行う予定である。そのため、論文化に向けてデータ整理をサポートする支援員を短期間での雇用を検討している。
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Causes of Carryover |
最初の研究計画では予定していなかった研究補助業務に従事するパート雇用のために人件費として必要な金額を余らせ、次年度に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)