2020 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to secondary standard materials for multi-element stable isotopes using environmental standard samples
Project/Area Number |
18K11630
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 安定同位体 / ストロンチウム / 標準物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、環境標準試料に対して高精度同位体比分析を行った。またマイクロ波試料分解装置及び低温灰化装置を用いた前処理法の差異による分析結果について検討した。各前処理過程で順調に進んだときは前処理法の差異による同位体比への影響はないことが確認できた。しかし、十分な前処理が出来なかった場合には同位体比の結果が変わるので前処理過程について細心な注意が必要である。 特に低温灰化装置は設置場所が一般的な室内実験室であること、装置内部を分解して洗浄できないことによる周囲の汚染を受ける可能性が非常に高いので微量試料を扱う時には別の方法を用いる必要が明らかになった。試料量(元素含有量)が十分な試料であっても低温灰化装置を用いる際には灰化を行うチャンバー内部の洗浄を行うことで試料間のクロスコンタミネーションを防げることができた。 Mg安定同位体(δ26Mg)、Znの安定同位体(δ66Zn)、およびSr同位体比(87Sr/86Sr)の測定を行い、標準試料の安定同位体データベース作成を行った。マグネシウム同位体についてはいくつかの試料に対して測定結果が不安定な点があったのですが、その原因について元素分離の際に用いた酸の濃度に問題があったことが分かった。現在はこの問題を解決したためその後の測定は順調に行った。 鉛や鉄の安定同位体については測定に取り掛かっている。また、生物試料にはその含有量が極めて少ないネオジウム同位体を測定するため新たな測定法の検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Mg安定同位体(δ26Mg)、Znの安定同位体(δ66Zn)、およびSr同位体比(87Sr/86Sr)の測定については予定通り進行できた。また装置間の差異を確認するため表面電離型質量分析装置(TIMS)とマルチコレクターICP-MS(MC-ICP-MS)との分析を行い両装置での比較を行った。Sr同位体比を用いた標準試料の繰り返し測定では、TIMSでは測定誤差6ppmの測定ができたが、MC-ICP-MSではTIMSの3倍に該当する測定誤差20ppmの測定ができた。 Covid-19の影響による実験施設の停止や在宅勤務の推進が重なって本来の研究計画よりやや遅れが出ている。鉛と鉄の同位体比の測定は前処理までが進んでいる。 また環境試料には極めて少ないネオジウム同位体比(143Nd/144Nd)の測定については新しい測定手法を開発中である。Porous emitterを用いるこの手法は既存の手法より10倍ほど感度向上効果があるのでこの方法について検討を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に完了しなかった鉛及び鉄の安定同位体について測定を進めていく予定である。環境試料のネオジウム同位体比分析は手法開発も含め今後検討を行う。期間延長した部分で、分析・全体の取りまとめデータベースの作成及び論文発表に努めたい。
|
Causes of Carryover |
Covid-19の影響により研究がやや遅れているため次年度分を繰り越し申請を行った。 予算の使用は研究計画通り同位体分析に使う予定である。
|